逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

政治用語の基礎知識 右翼、左翼、保守の違いとは、

2016年12月11日 | 政治

『保守の正しい定義』

社会科学的に判断すれば、『保守』とは現在に依拠し、現在を守る勢力のことで、土台からの根本的な造り替えは警戒するが、漸進的な改良を最善と考えている穏健思想で、少しずつ着実に前に向かって動いて行くところに特徴がある。
基本的に『保守』とは、今までの古き良き権威や伝統を『守り』『保つ』政治姿勢であり現状に多少の不満はあっても、生活や体制に基本的に満足している。(不平不満は右翼や左翼に比べて圧倒的に小さい)
『今』にまったく不満で社会の根本的な改革を主張しているのが『右翼』や『左翼』で、現状に『満足出来ない』だけなら同じだが、両者は時間軸が違っている。
左翼はまだ見ぬ未来に自分の理想を期待し、右翼は『失われた理想の過去に立脚して現在に異議を申し立てる』思想や勢力のこと。
思考形態なら右翼は情緒的・主観的に判断し、左翼は理論的・客観的に判断しようとする。

『右翼左翼の裏定義』

政治的な戦略や主義主張ではなくて、その戦術的スタンスで右と左を分類すると、『左』とは社会を上(強者)と下(弱者)とに真っ二つに分けて、自分を下(弱者)側に味方して上(強者)に抵抗していると思い込む。
『右』の手法も矢張りまったく同じで、社会を真っ二つに分ける。
違うのはその分け方だけ。
右翼は、世の中を内と外に分け自分を『内』に分類し、それ以外の全てを『外』(内に敵対する危険な存在)と認定する。
結果的に左は『上』(権威や権力を持った強者)を攻撃するので必然的に連敗する。
右は自分が『外』だと思ったものは社会的な弱者でも見境無く攻撃するので良識ある大人に嫌われる。
典型的な弱者である落ちこぼれのニートやフリーター(ネットウョ)が、『弱者の味方』と自分で思っている『左』を攻撃するなどの不思議な現象は社会を『上下』か『内外』かの、『分け方の違い』での衝突と考えれば分かりやすい。

『左翼と右翼がメルトダウンしている日本』 『両方が融合してデブリ?状態に、』

『理論』を優先するから左翼になって『感情』を優先するから右翼になる。これでは右翼が頭が空っぽで目が節穴なのは当然であり何の不思議も無い。
ところが驚くことに日本だけは世界の例外で、左翼も右翼も内容的に違いが無い。
右翼の特徴である『世の中を内と外に分ける』手法ですが、これは『絆による日本的共同体』(ムラ社会)の典型的な特徴でもあるので、我が日本国では左翼とて例外では無い。困ったことに内外に分けるのである。(密かに右翼の悪い部分を真似る?)
超越的な価値観が存在していない日本では、左翼さえ簡単に右傾化するのですから面白い。
日本では『左右の違い』を簡単に克服して、挙国一致現象が起き易いので、右翼左翼の分類は外国ほど大事では無い。
みんなが思うほど左右の立場に、それほど大きな意味が無いというか、そもそも東のはずれの東経180度の地点とその真逆の地点である西経180度とはまったくの同一地点なのである。
(★注、180度逆の方向でも、実は『中身も結果も同じになる』との誰も言わない新しい『マゼランの法則』を、逝きし世の面影で主張している)

『左右よりも上下の違いの方が大きい』

根本的な大きな違いがあるのは、科学的な懐疑心の有る無し(信じるか。疑うか)なのである。
世の中には三種類の人間がいて、手品や詐欺のネタを一目で見破る人は極少数しかいない。
進化人類学によれば600万年間も他人の言葉を疑うことなく信じるように人類は進化してきたので、疑う人は最初から極少数なのです。
二番目は自分で見抜けなくてもヒントを与えられたら気がつく注意深い人ですが、矢張り賢い人は絶対数が少ない。
三番目がその他大勢で、悲しいかな誰かにヒントを教えられても、何故か頑強に騙され続ける方を選ぶのです。手品や詐欺など、騙しのネタはそんなに種類があるのではなくて、人々は同じネタで何べんも騙される。
世の中で子供だましな真っ赤な嘘を信じる人が大勢いるから人類社会では絶えることなくお粗末な悲劇が繰り返される。

『分けないことにはわからないが 分けてもわからない』

日本国で一番保守的な政党とは日本共産党だった?とのパラドクス。
簡単に分けられると思う生物と無生物、生と死さえ中間的な存在がある。蝶と蛾の違いですが、人が追いかけるのが蝶で、人が追いかけられたと思い込んで逃げるのが蛾らしい。
保守の定義ですが、今の日本国で最高の『古き良き権威と伝統』といえば政治なら間違いなく日本国憲法で、経済なら若者の完全雇用と職業訓練を可能にした日本独自の終身雇用制と年功序列賃金である。
危機的な有様の憲法と正規雇用に一番拘っている政党とは共産党なのですから、一番の保守政党とは、自民党ではなくて今の日本共産党で間違いないのである。

『蝶と蛾の違いと同程度だった日本国の左翼と右翼の小さすぎる違い』 

悪い過去を『自虐史観である』と否定する、今の『新しい歴史教科書をつくる会』などの日本のお粗末右翼ですが、困ったもので右翼は本来なら自分の主義主張による善悪で判断するべきである。
ところが、日本の場合は人の評価とか評判、世間体(名誉か不名誉か)を気にしているのですから、これでは右翼左翼以前のお粗末すぎる馬鹿話。右翼が今の民主主義万能のアメリカ的価値観で昔の日本を考えている。
日本の侵略を否定するのではなく、本物の右翼なら世界征服を夢見て風林火山の『はやきこと風の如く、侵略すること火の如く』を実践した強大な軍事大国『大日本帝国』を誇りにすべきなのである。
右翼が右翼らしく無いのですが、日本の場合は左翼も左翼らしくない。
左翼も善悪(主観)ではなくて、誰に対しても普遍的である科学的な客観的事実(正誤)に拘るべきだが、何故か日本の場合はえらく善悪(主観的判断)に拘るが、これでは左翼が右翼化する危険が高まるのは当然で、なんとも困った話である。

『自民党よりも共産党の方が保守思想に近い!』 むしろ共産党の政策を取り込むことによってこそ、本来の保守へと接近するという逆説

『岐路に立つ「同盟依存」 トランプ政権と日本 中島岳志』

2016年11月29日東京新聞
日本時間の九日夕方、アメリカ大統領選挙でトランプの勝利が確実になった。
この直後からさまざまな分析や見通しが語られたが、中でも興味深かったのが翌十日にBSフジ「プライムニュース」が放送した「脱“アメリカ属国”論」だった。
出演者は保守思想家の西部邁(すすむ)と日本共産党の小池晃。一見すると立場が真逆に見える二人の見解は、ほとんどの点で一致していた。
二人が声をそろえて主張したのが、対米従属からの脱却と新自由主義への批判である。
トランプは選挙中に、日本における駐留米軍の撤退をにおわせる発言を行ったが、二人はその方向性を歓迎する。もちろんTPPにも反対。アメリカのいびつな格差社会を問題視し、新自由主義やグローバリズムを批判する。
西部が顧問を務める『表現者』67号では、「日本共産党とは何ものか」という特集を組み、西部、小池、西田昌司(しょうじ)、富岡幸一郎による座談会「日本共産党に思想と政策を問う」を掲載している。
この中で西部は、日本共産党がその首尾一貫性において「断トツに優れている」と評価し、「グローバリズム反対」や「日本の中小企業や農業への保護」、「マーケットにおける利潤最大化のみを追求する資本主義」への批判などを高く評価する。

一方で、小池も「対米従属の根源にある日米安全保障体制は打破しなければならない」と述べ、これこそが真の意味での「戦後レジーム」からの脱却であると主張する。
そして、保守思想への敬意を示しつつ、「死者の叡智も含めてしっかり受け継ぐ政治でなければならないというのが、我々の基本的な考え」と述べる。
保守と共産党。防衛論における齟齬が存在するものの、自公政権が親米・新自由主義へと傾斜する中、それに抵抗する両者の立ち位置は限りなく接近している。
自民党の西田は、「共産党が言っていることは光り輝いている」とエールを送り、西部は「自共連合政権を実現させてくださいよ」と、半ば冗談交じりに迫る。
西部も西田も、現時点においては自民党よりも共産党の方が保守思想に近い政策を説いていることを認め、率直な評価を表明しているのだ。

これは、現在進行中の野党共闘に重要な示唆を与える。
民進党の中には、共産党と手を組むことによって保守層の支持が離れていくことを恐れる向きがあるが、むしろ共産党の政策を取り込むことによってこそ、本来の保守へと接近するという逆説が存在する。
トランプ政権誕生は、世界各地で思想の地殻変動を加速させるだろう。
もはや「左」と「右」という二分法はリアリティーを持たなくなっている。
日本においては、野党共闘による合意形成こそが、ネオコン・新自由主義勢力に対するオルタナティブ(代案)な選択肢となるはずだ。
『週刊東洋経済』11月12日号では、白井聡「自分の論理を構築して対米従属から脱却せよ」は、対米従属が自己目的化する日本外交を厳しく批判し、「自分の論理を構築していくこと」を要求する。
いずれにせよ、トランプ大統領の誕生を目前に、日米同盟に依存してきた戦後日本は、大きな岐路に立たされている。
11月29日東京新聞 なかじま・たけし=東京工業大教授(抜粋)


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3 コメント

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パラドックス (ましま)
2016-12-11 10:43:05
パラドックス満載の中身ですが、それが真実であり、トランプ流を仮象とするのと同様、価値判断大荒れの時代となりました。
左と右の二分法 (私は黙らない)
2016-12-14 03:31:18
最近、左翼と右翼の違いって何?と疑問を抱いていたところで、大変興味深く拝読しました。
私自身、政治的には左であると自覚していたのですが、最近、保守系といわれる評論家の著作を読んで、グローバリズム、新自由主義、格差社会への痛烈な批判にたいそう感銘を受け、我ながらいぶかしく思っていたところです。
実際、私の住むアメリカでは、奇妙な事が起こっていました。例えば、サンダース支持者が、保守系ジャーナリストが書いたクリントンキャッシュを読む、緑の党支持者がトランプに投票するといったことです。まさに左と右の二分法では説明できないことです。
私は、サンダース対トランプ、左対右の意義あるディベートを観たかった。その上で、どちらが勝つか、見極めたかった。
もう一点、疑問なのは、ヨーロッパで中道が嫌われ、極左、極右といわれる政治勢力が台頭してきていることです。中道が嫌われるのは、現状に対する強い不満であると思うが、では、左に転がるか、右に転がるか、転がる方向を決定する要因は一体何でしょうか?
何時の間にか左翼が絶滅していた日本の不幸 (宗純)
2016-12-19 15:11:26
ましまさん、私は黙らないさん、コメント有難う御座います。

今回の【政治用語の基礎知識】 右翼とか左翼とか保守とか、・・・
ですが、この分類法だと間違いなく日本には左翼は一人もいません。
最左翼の共産党が穏健保守なのですから、残りの全員が右翼なのです。
違いは右翼なのか、極右なのか、それともファシストなのかの違い程度なのですから情けない。
共産党ですが、阪神大震災当時に地元の共産党が被災民に対して炊き出しなどの救援活動をしていたが、東京の党本部は募金やらボランティアなどを呼びかける。この大馬鹿者が。善良ではあるかも知れないが、根本的な勘違いである、。
それは左翼としては丸っきりの自殺行為というか、自己否定なのですよ。政治的に見て最悪なのです。
そもそも日本の正しい労働観ではタダ働きは最も悪い行為ですよ。それをボランティアなどと言い変えて、労働者の政党が呼びかける不見識。革命を目指す左翼による慈善活動など欺瞞以外の何物でもない。それは典型的な保守の発想なのです。

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