《創られた賢治から愛される賢治に》
太田俊穂のある著書の中に、昭和3年の「陸軍特別大演習」に関する記述があったので補足しておきたい。 「岩手県政記者クラブ」
岩手県政記者クラブの出来たのは昭和三年秋、陸軍特別大演習の直前である。それまでは足だまりとしての記者室はあったが、規約も統制もない極めてじゆうなものであった。大演習が近づくにつれて県としても組織だった対象がないと、事務的な連絡や、記者発表の上からもはなはだ不便だというので、主だった記者連へと相談すると、誰もがそれを感じていた時なので一人の反対もなく、スラスラまとまった。
このクラブは県庁へ取材する新聞記者は全部入会していた、会費は一ヵ月一円、クラブの名誉を傷け(ママ)、統制を者は除名することになっていたが、その様な事件は余り起こらず、一廻り庁内を廻って来てはお茶をのみ原稿を書くという至極和やかなものであった。
<『四季の夕映え』(太田俊穂著、岩手日報社)228pより>岩手県政記者クラブの出来たのは昭和三年秋、陸軍特別大演習の直前である。それまでは足だまりとしての記者室はあったが、規約も統制もない極めてじゆうなものであった。大演習が近づくにつれて県としても組織だった対象がないと、事務的な連絡や、記者発表の上からもはなはだ不便だというので、主だった記者連へと相談すると、誰もがそれを感じていた時なので一人の反対もなく、スラスラまとまった。
このクラブは県庁へ取材する新聞記者は全部入会していた、会費は一ヵ月一円、クラブの名誉を傷け(ママ)、統制を者は除名することになっていたが、その様な事件は余り起こらず、一廻り庁内を廻って来てはお茶をのみ原稿を書くという至極和やかなものであった。
そうか、「岩手県政記者クラブ」が組織された切っ掛けは昭和3年の「陸軍特別大演習」だったのだ。
ついでに、同書には「物語岩手社会運動史」を『岩手日報』に連載した鈴木彦次郎に関しても次のようなことが述べてあったので投稿しておく。
鈴木さんの作品は、大別して「両国梶之助」によって代表される「相撲物」と「常磐津林中」に代表される、いわゆる「芸道物」そして自由民権運動をテーマとした「自由の征矢」―その集大成として、絶筆となった「巷説城下町」がある。
ところがもう一つのジャンルのあったことが意外と知られていない。それは昭和初期、日本の若い文学者たちの頭上を吹きまくったプロレタリア文学とのつながりである。
小田切進氏の「昭和文学の成立」の中の年表を見ると「昭和三年一月、片岡鉄平(転換)を発表、このころ、今東光、鈴木彦次郎らも左傾」とある。
この三人は新感覚派文学の旗手たちである。この人たちが、続々と左傾化、つまり、当時、けんらんたる開花をみせはじめたプロレタリア文学へ傾斜していったことを、この年表が物語っている。
<『四季の夕映え』(太田俊穂著、岩手日報社)81pより>ところがもう一つのジャンルのあったことが意外と知られていない。それは昭和初期、日本の若い文学者たちの頭上を吹きまくったプロレタリア文学とのつながりである。
小田切進氏の「昭和文学の成立」の中の年表を見ると「昭和三年一月、片岡鉄平(転換)を発表、このころ、今東光、鈴木彦次郎らも左傾」とある。
この三人は新感覚派文学の旗手たちである。この人たちが、続々と左傾化、つまり、当時、けんらんたる開花をみせはじめたプロレタリア文学へ傾斜していったことを、この年表が物語っている。
つい最近までの私は、鈴木彦次郎は「相撲物」の作家だとばかり思っていたので、彦次郎が「物語岩手社会運動史」を書いていたことを知って意外だったのだが、この指摘を知ってなおさら得心もした。かつての私ならば彦次郎が〝プロレタリア文学へ傾斜していった〟と知ったならば多分かなり驚いたと思うが、いまでは、当時はそういう時代だったということでちょっとばかり理解できるようになった…かな。
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なお、その一部につきましてはそれぞれ以下のとおりです。
「目次」
「第一章 改竄された『宮澤賢治物語』(6p~11p)」
「おわり」
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