みちのくの山野草

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菊池信一の日記は今どこに

2015-07-30 08:00:00 | 昭和3年の賢治
《創られた賢治から愛すべき真実の賢治に》
菊池信一の日記
 それにしても、あの聡明な菊池信一がなぜ回想記「石鳥谷肥料相談所の思い出」の中で
    羅須地人協会の生まれた翌年の昭和三年三月十五日。
と矛盾見え見えの記述をしたのだろうか。私には不思議でならない。
 そんな折、菊地信一は日記を付けていたということを知った。というのは、板垣寛著『賢治先生と石鳥谷の人々』の中に、寛氏の父板垣亮一の追想が載っていて、
 過日、ふとしてことで息子(寛)の購読している「地上」をめくって見たら、「農業の実践者宮澤賢治」と題する伊藤信吉氏の論文が載っていた。
 伊藤氏はそのなかで、宮澤賢治が昭和三年三月十五日から一週間にわたって石鳥谷肥料相談所を開設した当時の情景を、その相談所の助手として仕事を手伝った菊池信一君の日記を頼りに述べてあった。
              <『賢治先生と石鳥谷の人々』(板垣寛著)64pより>
ということが記されていたからである。
 そこで私は、その菊池信一の日記を見ればこの「矛盾」解消のヒントがあるのではなかろうかと思った。早速私は石鳥谷の好地に住んでいる、それも姓が菊池である友人に『信一の生家を知ってませんか』と訊ねたところ、『わからないが調べてみるから』ということで期待して待っていた。すると程なく、『実は信一は私の遠い親戚であったし、生家の「東田屋」はもうないが、信一のご子孫である女性が石鳥谷に住んでいるから会わせてやりましょう』という返事を貰ったので、その友人と一緒にその女性宅を訪問した。
 そしていろいろお話をお聞きした後に、『信一さんの日記はございませんでしょうか』とその女性に訊ねたならば、『日記等はSさんが持って行かれたということです』という返事であった。私はがっかりするとともに、やはりここでもまたそうなんだと憤りと苛立ちを感じた。もちろん、この「Sさんが持って行かれたという菊池信一の日記」は公はされていない。菊池信一の日記は今どこにあるのだろうか。
 したがって、3月15日から開設されたという「塚の根資料相談所」が開かれた年は通説どおり昭和3年なのか、はたまた伊藤光弥氏の主張するように昭和2年であったのかはこの女性宅訪問によっては残念ながら検証できなかった。

他の手立て
 となれば、他の手立てはなかろうかと思いめぐらしてみた結果、その他に私がこのことに関して試みることが出来たこと等は以下のとおりである。
(1) 柳原一郎の生家を訪ねてみればわかるのではなかろうかと思って、探してみたこと。なぜならば、先の菊地信一の回想記の中に
    柳原町長の盡力でポスターは貼られ
とあったからである。この柳原という人は当時石鳥谷の好地村の村長(町長ではなく)をしていた柳原一郎という方だということを知ったので、そういう立場の人であれば当時日記等を付けていたのではなかろうかと思ったからである。
 そこで、石鳥谷図書館とか同民俗資料館をお訪ねして柳原一郎のことを訊いてみたのだが、そもそもそのご子孫はいまは地元にはおらず、離散してしまって詳報は掴んでいないということであった。したがって、柳原一郎の日記を見るどころか生家を訪ねることも現時点では出来ない、ということのようである。
(2) 板垣亮一(信一の友人で、「塚の根肥料相談所」が開設された際に3日間通ったという人物でもある)の生家を訪ねてみればわかるのではなかろうか、と思って生家を訪ねてみた。その亮一のご子息が、前掲の『宮澤賢治と石鳥谷の人々』の著者板垣寛氏である。寛氏からいろいろお話を伺っていると、「父はとても几帳面で、事細かく記録しておく人だった」ということなども教えてもらったので、私は期待しながら「お父さんの亮一さんは日記を書いておりませんでしたか」と訊ねたところ、日記はないという。
(3) 地元在住の宮澤賢治研究家のC氏にこの件に関して電話でお訊ねしてみた。すると、「私も気になってそのことを調べてみたことがあるが、それはやはり昭和3年のことです」と断言しておられた。ただし、C氏からはその根拠は聞き出せなかった。

 結局現時点では、伊藤光弥氏の疑問を解決できる証言や資料を私は見つけ出せないでいる。

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