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北海油田の恩恵を生かせなかったイギリスの教訓⑥(シェール革命その2)

2013-04-03 00:01:02 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 先日、アップル社が1371億ドル(約12.9兆円!)もの巨額の手元資金を抱えていることが話題となりました。多くの株主からは「株主へ還元せよ!」といった要求が出されています。これに対してアップルの経営陣は現時点ではその使い道を「協議中」として明確にしていませんが、あらたなM&Aに活用するのではないかとの憶測が流れているようです。

 このあたり、もしアップルが日本企業ならば、この潤沢な資金の多くを次世代スマホや基幹部品(液晶パネル、半導体、バッテリー、コンデンサなど)の研究開発投資に振り向けると思います。しかしアップルはメーカーとしてはある意味で当たり前のそんな投資には後ろ向きといった感じ。やはり上述したように、手間ひまのかかる自前の技術開発や設備投資よりも、手っ取り早くM&Aで他企業(の技術や生産プロセスなど)を買ったほうが楽だ、という判断をしているのではないでしょうか(はたしてアップルは、自社による技術開発をおろそかにしてM&Aだけでライバルがひしめく世界スマホ市場を今後も勝ち抜いていけるのか、微妙な気がしますが・・・)。

 そんなアップルに代表されるように、アメリカの製造業大手は、設備投資と技術革新を繰り返しながら発展するという従来の形態から、株主利益至上主義のもとで、株主から見た企業価値の極大化(高配当や自社株買いなど)やM&Aによって規模の拡大を図るという、まるでヘッジファンドのような、ある種の金融業に変貌したといえるのかもしれません。

 そのように考えてみると、今後、シェール革命」が進んで豊富かつ安価なエネルギー資源がいくらもたらされても、アメリカではもはや日本やドイツ、中韓両国でみられるような本来の意味での製造業が再生する可能性は決して高くはないだろうと思っています。

 むしろ一部の大メーカーがさらに金融機関的な色彩を強め、M&Aの繰り返しによって市場の寡占化を図ることで、これらの企業および株主が巨額の利益を享受する一方、多数の一般消費者はその弊害を被り、少ない選択肢のなかで、高くて低品質の商品やサービスしか得られなくなる・・・。「シェール革命」の恩恵があっても、政策的なフォローがなければ、アメリカはますます市民が暮らしづらい社会になってしまうおそれすらあるように感じるのですが、いかがでしょうか。

 本稿前段でご紹介したイギリスの北海油田とは異なり、アメリカのシェール革命がもたらすエネルギー量ははるかに大きいうえ、資源枯渇の心配は当面はしなくてよさそうです。しかしだからといって、社会の金融化が進むなか、アメリカの「モノ作り」がシェール革命で復活するとは限らない・・・アメリカと同じ金融主導型経済を築き、自国産エネルギーを製造業再興に生かせなかったイギリスの現在の苦境を見ると、アメリカのシェール革命の成り行きを予想する視点にも冷静さが求められそうだと思っています。

(「北海油田の恩恵を生かせなかったイギリスの教訓」おわり)


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