いま利上げしたらローン等の金利が急上昇してリセッション入りのリスク発生、かといって利上げを見送りつづけたら資産バブルは危険なまでに膨れ上がる一方・・・さあどうしよう・・・。日銀、ではなく米FRBはいよいよ厳しい判断を迫られる局面に立たされた感じです。
昨年10月に綴ったこちらの記事で、インフレ率等を考慮に入れた同9月中旬時点のアメリカの株価がいかに割高か、ということを示唆するデータをご紹介しました。そのときの株価ですが、ダウ工業株30種平均17031ドル、S&P500種株価指数1984ポイント(9月15日)でした。そしていまは・・・ダウ平均18232ドル、S&P2126ポイント(5月22日時点)と、両者ともこの8か月でさらに7%あまり上がって現在、史上最高値付近にあります。
で、上記の米株価上昇の最大のエンジンになったのは、いうまでもなくこの間の金融緩和的な市場環境。今度はこちらの記事に書いたとおり、(日本も、だけど)いまのアメリカでは金融政策こそが最大の株価決定要因―――つまりこれが緩和的なら株価は上昇、引き締め的なら下落という動きを示しています。ということは・・・株価が7%超も上がったということは、投資家がこの期間「FRBの利上げはない」と読み、少しでも利ザヤを稼ごうとキャリートレードで調達した超低利マネーを株につぎ込んだのでしょう。実際、FRBは(量的緩和策こそ昨年10月で止めたものの、)これまでゼロ金利を継続し、そんなバクチみたいな取引が行えるマーケットの地合いを維持したわけで・・・。
当然、この間の株価はアメリカのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を適切に反映しているとはいえません。4月に発表された第一四半期のGDP成長率は急ピッチの株価並み・・・からはほど遠く、前期比年率0.2%増とやっとプラスになる程度。前期の2.2%増から大きく減速しています。で、本来ならこうした弱々しい経済情勢は株価にネガティブなはずですが、上述したように、これが利上げ時期の後ずれ期待を株式市場に喚起し、株価が押し上げられた、といったところ。まさに実体経済そっちのけ、「金融緩和相場」全開の様相です。
そんなこんなでこの8か月で7%にまで達した米株価の値上がり幅はそのまま「バブル」の膨張分であるといって間違いないでしょう。すでに十分にバブルといえる水準にあった昨年9月からさらにバブルが上乗せされているわけですからね。つまりFRBとしては、それだけ株バブルの軟着陸を図るためのガス抜き、つまり利上げが難しくなったということになります。