(前回からの続き)
日本に話を戻します。
これまで書いてきたように、わが国の株高を演出しているのは日米中銀の金融緩和策、そして「アベノミクス」が景気を良くしてくれるのではないかという漠然とした期待感。
しかし、本稿前段で指摘したとおり、実体経済に目を転ずると、わが国には依然として大きな需給ギャップ(需要不足≒デフレ圧力)が存在していることに気がつきます。そして頼みの外需ですが、輸出企業の業績改善を伝えるニュースは多少は聞かれるものの、こちらの記事に書いたように、昨年終盤からこれまで20%ほどもドル高円安になっているので、30%程度増収増益になっていなければ、1ドル80円の頃の収益・利益レベルに達しないことになります。これは相当に高いハードルです・・・。
といった具合で、アメリカと同様、現在の日本の株価も、足元の不透明な経済情勢からは相当に上離れしたレベルにあるため、ほんの少しでも良くない知らせが届くと大きく乱高下するという不安定な状態にあるといえそうです。このあたり、「金融緩和相場」の脆弱性がモロに出ている感じがします。
真に力強く息の長い株価の上昇を望むのならば、やはりそれに見合う本格的な景気回復が第一に必要となると考えています。そのためには何よりも日本のGDPの6割を占める「個人消費」の活性化が求められるところ(ハッキリいえば実質的な「賃金の上昇」が不可欠となるわけですが・・・)。
ところが「アベノミクス」は、こともあろうに景気浮揚の鍵を握る個人消費を抑制する現象を続々に発生させています。円安誘導による「輸入インフレ」、実体経済が弱いなかでの「金利上昇」、そしてこれらがもたらす勤労者の「可処分所得の減少」という「3本の矢」で、市民の消費生活は打撃を被る一方です。株高の「資産効果」にともなう高額品などの消費増も、実体経済の裏打ちがない金融緩和相場のなかで、この先どこまで期待できるものか、何とも心もとない感じです。
そしてまもなくやってくる「消費増税の崖」・・・。この秋にも予想される消費税率アップの決定により、個人消費はいっそう冷え込み、企業の設備投資意欲も減退し、日本経済はさらなるデフレに沈む・・・。それとともに「アベノミクス」唯一のプラス効果であった株バブルの資産効果が急速に衰える・・・。
・・・などと、ネガティブな連想ばかりで申し訳ないのですが、現実の経済面、とりわけ個人消費の刺激策を持たない(むしろ抑圧策ばかりを展開中の[?])「アベノミクス」は、上記の金融緩和相場の演出しか取り柄のない「カブノミクス=株のみクス」とでも言い換えられそう。そしてこの(力強い実体経済という)翼のない「株のみクス」は、迫りくる「消費増税の崖」を飛び越えられないのではないでしょうか。
それでも安倍政権や日銀幹部は「株のみクス」推進、つまり株高の演出をし続けようとするでしょう。他に景気浮揚の手が乏しいからです。おそらく、近々「異次元緩和」のさらなる強化に踏み出すのではないでしょうか。そうやって株式市場を刺激しなければ消費税率アップの強烈なマイナスインパクトに株価は耐え切れないでしょうから・・・。
というわけで、日米両国は、それぞれの思惑に多少の違いはあっても、資産バブルで景気を盛り立てるため、引き続き中銀による金融緩和策の推進と株式市場の「金融緩和相場」の維持に努めることでしょう。しかしその代償としてのリスク発生(金利急騰やインフレなど)のおそれはますます高まっている・・・そんな気がしてなりません。
(「日米株高『金融緩和相場』の危うさ」おわり)
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