国境を越えた巨額賠償、金融業界のモラル、そして紛争地域とマネーとの関わり、などなど・・・本ブログで最近綴ってきたことが集約されたようなケースだな、と思っています。
アメリカの司法省は、フランス最大の銀行BNPパリバが、アメリカの経済制裁対象国であるスーダンやイランなどと不正な金融取引をしていた、として、同行に罰金の支払いを求めています。その金額は最終的に100億ドル(約1兆200億円)あまりに達する可能性があるとのこと。
さまざまな意味でこの司法判断は注目を集めそうですが、まずはその罰金額の大きさにビックリです。100億ドル超!―――まあ本当にこんな額となるのかどうか現時点では分かりませんが、少なく見積もっても数十億ドル以上になることは間違いないでしょう。日本円で数千億円~1兆円を超える額です。同行は本ケースに備えて2013年11-12月期に11億ドルの引当金を積んでいますが、これだけではとても足りない感じです。
で、同行の拠点国・フランスでは「アメリカのこの措置は理不尽だ!」といった声が高まっているようです。オランド大統領は「厳しすぎる額だ」と不満を表明しているほか、同国のメディアも「『金融危機の原因を作ったアメリカの銀行に手ぬるい』との批判を米当局がかわそうとしてBNPパリバを見せしめにしている(ル・モンド紙)」などと、アメリカに対して批判的な反応を示しています。
たしかに同行の金融取引をアメリカが問題視し、それ相応の制裁金を同行に科そうというのは個人的にはもっともなことだと思います。これがアメリカのルールに違反しているばかりではなく、マネーロンダリング(資金洗浄)などに関連のあるダーティーな側面を含んでいる可能性があるからです。
いっぽうでフランスの見方―――米当局は自国の企業に甘く他国の企業に厳しいのではないか―――については、わたしたち日本人にとっても微妙に感じられるところです。こちらの記事に書いたように、日本の企業もまたアメリカの訴訟沙汰に巻き込まれて多額の賠償等を請求されるケースが増える気配があるからです。
本件に関連付けて今後、わが国が注視すべき事例は、ゼネラルモーターズ(GM:自動車メーカー)の欠陥放置問題でしょう。報道によれば、GMは自車に欠陥があるのを知りながら10年あまりにわたって放置し、その間、それが原因とみられる事故で少なくとも13人が死亡した、とのこと。これはトヨタ自動車のケース(フロアマットに不具合があるとされて2010年前後に大規模なリコールを実施:同社が12億ドルもの制裁金を米司法省に支払うことで合意)よりも米市民の被害規模がずっと大きく、かつ悪質とみられることから、米司法省は当然、GMに対し、トヨタを(はるかに!?)上回る制裁金を科すだろう、と予想されるわけですが・・・。
まあこのGMの欠陥隠し問題の今後はともかく、近いうちに決定される予定の上記PNBパリバに対する処分に関しては、アメリカが法律や国際ルールに公平な国であることを国内外に示す意味でも、米当局には同行が犯した不正の詳細とか罰金額が100億ドル(?)になる根拠などをしっかり示してもらいたいと思っています。
(続く)
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