読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「罪の声」

2017年08月16日 | 日記
塩田武士(講談)

 あのころ自分はどうだったのか。大阪の事件という印象で、切実さは感じなかったけれど、一種の愉快犯のように思ったが、二重の意図を持った犯人たちだったのだろうか。
それにしても、この時期、日航機の墜落事故があり世の中の注目がそちらに移ったり、グリコ事件はうやむやのうちに時効になったのだろう。
 本書はくまでもフィクションだが、事実を踏まえて、創造力で書き上げたのはすごい。

内容紹介は
『「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門第1位!
第7回山田風太郎賞受賞作。
朝日新聞「天声人語」など各種メディアで紹介。

逃げ続けることが、人生だった。
家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。
「これは、自分の声だ」
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。
未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する。
圧倒的な取材と着想で描かれた全世代必読!
本年度最高の長編小説。
昭和最大の未解決事件―「ギンガ萬堂事件」の真相を追う新聞記者と「男」がたどり着いた果てとは――。 気鋭作家が挑んだ渾身の長編小説  』

作者のインタビューがあったので引用します。
『僕は大学に入学した頃から作家になりたいと思っていたんですが、たまたま手にとった「グリ森」関連の本を読んでいたところ、犯行に子どもの声が使われていたと知って衝撃を受けたんです(注:グリ森事件の犯行グループは、捜査陣をかく乱させるために、子どもに「犯行声明文」を読み上げさせ、それをテープに録音していた)。
使われた子どもは3人いて、そのうち一番下は僕とほぼ同い年だった。じゃあ、その子は今、どんな人生を送っているんだろうと考えるうち、「関西に住んでいるのなら、もしかすると自分とすれ違ったことがあるかもしれない」と思い至りました。その瞬間、「これは小説のネタに使える」と気づいて鳥肌が立ったのです。
だが、物語を着想した当時はまだ大学生。昭和の未解決事件を描き切るだけの力量は今の自分にないと考えた塩田氏は、いったん新聞記者の道に進んだ。
グリ森に限らず、当時の僕は小説というものがまったく書けなかったんです。なぜ書けないかといえば、十分な社会経験を積んでいなかったから。そこでまず、多くの人に会って、様々な体験ができる新聞記者になったんです。
「これ書くために小説家になったと言っても過言ではない」という塩田氏(撮影/嶋田礼奈・講談社写真部)
記者時代も、こっそり「グリ森」関連の資料を読んだり、捜査関係者に話を聞いたりはしていました。でも、内心ではいつもビクビクしていたんです。「誰かがこのアイデアに気づいて、先に書いてしまうんじゃないか」って。もし先にやられたら、新聞記者の用語でいうところの〝特オチ〟ですからね(笑)。
仕事の傍ら小説の投稿を続け、デビューできたのは2010年でした。僕はその時点ですぐに本作を書きたいと思い、デビュー作の担当編集者に相談したんですが、「今のあなたの筆力では、この物語は書けない」と、あっさり却下されました。
じゃあ、もう少し待ってからにしようと、別の作品をいくつか書き、ようやく取り掛かったのは昨年の1月でした。21歳のときに思いついて、書き始めたのが36歳ですから、構想15年ということになりますね。・・・・
(中略)
「グリ森」が発生した当時を知る〝大人の読者〟に納得してもらうためには、現場から脅迫状の文言に至るまで、忠実に再現しなければならないと思ったんです。
最初に取り組んだのは、1984年から1985年までの新聞記事すべてに目を通すことでした。事件のみならず、時代背景を立体的に描きたかったからですが、読んでみると当時はサラ金関連の記事が非常に多くて、「世の中カネや」という風潮だったことがよくわかりました。
また、犯人の動線を辿るため、現存する事件現場にも足を運びました。特に印象に残っているのは大阪の摂津市にある水防倉庫です。ここは「グリ森」で江崎勝久社長が実際に監禁された場所ですが、行ってみると、倉庫だけがぽつんと立ち、周辺には何もない。「犯人に土地鑑がなければ、絶対にここには連れてこないだろう」と改めて思いましたね。
もうひとつ、名神高速道路の大津サービスエリアでも感慨を覚えました。ここは〝キツネ目の男〟が目撃され、本作においても重要な場所ですが、周囲を歩き回っているうちに「ああ、ここに犯人がおったんや」との実感が湧いてきて、思わず震えてしまった。小説を書いてきて、こんな感覚に陥ったのは初めてでした。
80年代半ばの日本社会を忠実に再現した物語だけに、読み進むうち、いつしか現実と虚構が溶け合うような感覚に陥ってしまう。最終的に阿久津は「真犯人」に辿り着くのだが、その会話と描写は、とてもフィクションとは思えないほど生々しい。
作品を読んでもらった当時の担当記者から「ホンマにこんな犯人おったの?」と聞かれたときは嬉しかったですが、もちろんフィクションですよ。
ただ、本作で描いた犯行グループ各人の役回りについては、それほど外してはいないだろうと思っています。  』

・・・読んでみたくなるインタビューです。
・・・本当に過激派の一部や半島人が関与していたのだろうか。真相が知りたくなる。
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