Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

ブカレスト・オデオン座は天井が開く

2015-06-13 | Weblog
ブカレストに移動。
オデオン座公演。
なにしろ小さなかわいらしい白い劇場である。
内側はプチ馬蹄形の三層。
宿舎が隣なので部屋の窓から「Theatre Odeon」の電飾看板が見える。
六年前のブカレスト公演の時に制作の古元くんとここでパフォーマンスを観て、いつかここで公演したいと言っていた夢が叶ったわけだ。

仕込み時に驚いたのが、天井の薄かまぼこ形のドーム屋根が電動で移動することだ。スライドして、外光を取り入れることができる(写真 撮影=Teodora Mihai)。ある意味省エネで、オープン時は開放的でいいのだが、用途は限られるだろう。
そういえば世田谷パブリックシアターの天井の円形ドームには、青空と白い雲の絵が描かれているが、それがもともとはドームが開閉して空が見えるようにするというイメージがあったからだと聞いたことがあるが、本当かどうかは知らない。
感心してばかりもいられず、この電動ドーム天井、厳密に完全には閉まりきらないことがわかり、暗転がとれないのは困るので試行錯誤して、うっすら外交の光の筋が浮かび上がるレベルにまでは閉じてもらった。いやはや。

いろいろな出来事があるが、あっという間に時間が過ぎる。場当たり開始時刻を早めておいてよかった。
それぞれの国、都市、劇場で流儀も違う。劇場で働く人たちには共通点もあるし、違いもある。違う部分の多くは「管轄」ゆえの問題であったりする。いろいろな「整理」の仕方があるのだろう。何を自由と感じるかも含めての彼我の違い。日本の方がいいとも言えないし、私(たち)は日本を代表しているわけでもない。何ごとも勉強になると考えるだけだ。

少しは街を歩いてみたいが、今はまだ机に向かっている。私たちの事情ではないがシビウの準備も終わらず、片付けるべき書類もあるし、帰国後は新作を控えているのだ。この時期に私がぼーっとしてるように見えたら、それは新作のことを考えているのである。
新作のこと以外も、渡欧以前からも後にも、日本での今後の仕事のことや伝達・情報がいろいろと入ってくる。全てに即対応していけるわけでもない。仕方がない。

オデオン座公演は、見切れ席や字幕に遠すぎるとしてペンディングした部分にまで一部お客が入って、盛況。熱心に観ていただけた。
海外公演では、日本での公演よりも妙なクスクス笑いが多いなと感じるときがある。これは字幕がダイレクトに意味を伝えてくれるので、目の前のアクティングとの対比で、かえって戯曲じたいの求めている反応だと感じられるときがある。言語とは不思議なものだ。
観てくださった方々と話すが、かなり細かいところまで観ていただけていることがわかる。
どの地でもそうだが、『屋根裏』は「演劇らしい演劇」であるにも関わらず、「新しい演劇」「「演劇」を越えた世界観の提示」としても確実に受け入れられていることがわかる。日本社会について知ることもできるが、現代人の「生」について確実に共感を呼んでいる。と、いうことだ。さまざまな枠組みを超えて興味を持っていただけることは、ありがたい。こうして、海外で上演するに値するものをやっているという自負を持つことができるのは、幸いなことだし、海外であるとか国内とかを意識している場合でない時代になってきているのかもしれない。
今回もパレスチナについて言及する部分で観客から意見が来る。
「ひきこもり」は日本特有なのかという質問があったりすることは希で、どの国でも、じつは自分の子どもや孫が「ひきこもり」なのだと言われたりもする。そういうものだ。

明朝はシビウに移動するが、すでに松本市民芸術館『スカパン』組はシビウに入っているようだ。昨日ミュンヘン空港のトランジット中の音響の市来邦比古さんからフェイスブックの〈メッセンジャー〉で連絡が入った。〈メッセンジャー〉で通話した。フェイスブック機能で国際電話したわけで、なんとも不思議だ。
私はSIMカード無しのiPhone所持者である。2年半前に新型機に乗り換えた某スタッフ氏から頂いたのだ。とにかくSIMカードを入れずに使用している、つまり無料使用である。このSIMカード無しiPhoneは海外では活躍するが(Wi-Fi環境の乏しい地域では無駄だが)、日本国内では使っていない。私は日本国内では今やガラパゴス以前の「PHS」所持者なのである。時に「ピッチだ」と言って「まだピッチってあるの?」と言われたりする。十年前既に若者たちの会話で私が「PHS」所持者と知らずに「今時ピッチの人っているわけないじゃない」というのをよく聞いたものだが、時にティーンエイジャーはその存在すら知らぬ者がいるはずだ。

シビウ国際演劇祭へは日本からも多くの人が行くようだ。そういえば成田でも批評家のKさんに会った。ずいぶん早く行くのだなあと思った。

ブカレストは劇場だらけだ。ブルガリアもルーマニアも演劇が盛んというより、街じたいが演劇を大事にしている。羨ましい限りだ。
夜は五つくらいの劇場を擁するらしいルーマニア国立劇場を覗いてみることにしたいが、どれを観たらいいのか、まるでわからない。
コメント
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