魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

五穀豊穣

2023年07月12日 | 日記・エッセイ・コラム

NHKの「プロフェッショナル」。あまり観たことはないが、たまたま、始まった養蜂家の話を観た。祖父が若い頃、大正時代だと思うが、養蜂も試みて庭に巣箱を並べていたと聞いたこともあって、養蜂の話と聞くと思わず観てしまう。
近頃は大都市の屋上でも植樹と合わせて養蜂が奨励されているが、生業としての養蜂は全く趣が異なる。
プロの養蜂家は花から花へ、全国を旅しながら営む仕事で、ロマン溢れる話に聞こえるが、相当、過酷な仕事だ。

養蜂家の家に生まれ、養蜂家人生を送ったその人の話は、時代に翻弄された物語だった。昔から養蜂家は毎年、農業によって広がる花畑から蜜を集め季節と共に次の花畑に移動する。
ところが、肥料にするためのレンゲは化学肥料に替わり蒔かれなくなり、海外の安い輸入油に押され、菜の花畑も消えていった。一方で、農薬による全国的な昆虫減少でリンゴの受粉ができなくなり、青森のリンゴ農家に蜜蜂が歓迎されるようになった。
戦後の日本列島の変貌に加え、今では温暖化の影響で開花の時期が読めなくなり、計画通りに移動できなくなりつつあるそうだ。

♪菜の花畑に入り日薄れ・・・「朧月夜」大正3年
そう言えば、いつの間にか見られなくなったレンゲ畑や菜の花畑だが、その花畑と共に生きてきた人の目を通してみると、戦後の日本列島の荒廃が、ただの郷愁や嘆きを超えて、ゆゆしき事態を突きつけてくる。

温暖化による環境変化によって、サンマもイカも獲れなくなり、毛ガニの北海道でズワイガニが大漁だ。美味い米は東北から今や北海道に移り、フランスのワイナリーが気候変動でブドウ栽培地を求めて北海道にやって来た。(曲がり角20200901
政策無き農業は、いかにして自給率を高めるかより、一つ覚えの輸出に走る。農業振興を刺激する側面は理解できるが、食料戦争になった時、リンゴやイチゴで命を繋げるだろうか。工業生産で犠牲にしてきた農業を見直し、畜産用飼料としてでも、主食の五穀を国内で充たせる農業政策を考えるべきだ。

気候変動は今後も進む。日本が亜熱帯化する中で、五穀も変わってくるかも知れない。バナナや芋の栽培、米の二毛作、コーヒーやチョコレートの国産化など、田園の風景さえ変えることをいとわず、新環境に挑戦しなければならなくなっている。嘆くより可能性が広がったと考えるべきだろう。
何が何でも、全ては食糧自給からだ。


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