徒然草と兼好法師を知ったのは高校生の時だった。
あの頃の兼好法師は、毎日が退屈でうんざりしている坊さんだった。
家は夏向きに建てるべし、
とかなんとか小うるさいことをいう坊主だなぁ、ぐらいしか印象はなかった。
ところが、随筆家・酒井順子の随筆兼解説本「徒然草REMIX」によると、全然違うんですね。
兼好は、周囲の人々の言動を鋭く観察し、自分のことは棚に上げ、批判悪口雨あられ。
大変な毒舌家なのだった。
自分が属する貴族階級以外の人間はごみ同然。
何とも嫌味な坊さんだった!
ただ著者の達者な筆捌き。
隣はご免だが、何軒か先にはこういう偏屈じいさしがいるのもいいと思えてくる。
兼好法師が一目も二目も置いている清少納言を登場させ、対談をさせているのには吃驚した。
二人は直ぐ仲良しになったが、兼好法師は清少納言に押され気味。
紫式部さんが「自慢ばかりする嫌な女だ」と貴女をボロクソに書いてますね。
と清少納言を挑発する。
清少納言は受けて立ち、紫式部と兼好法師を散々に切り刻み、
書いてしまった悪口は残るからね。
あなただって本当は自慢したがりなのよ。
私みたいに素直に自慢すればいいのよっ。
あの紫式部だって、もっとオープンに自慢していればよかった。
後世の人に「性格悪~っ」って思われないですんだものを。
だんだん紫式部さんが可哀想になってきた。
なんですって?
いや、何でも........(落涙)
と、こんな調子。
また著者は徒然草をばらばらに分解して、
あらまほし・愚か・わびし・あはれ・くちおし・心にくし・はかなし・
をかし・つれづれ
など多用されている言葉から、兼好法師の本音に迫っている。同じ手法で、
女・老い・いにしえ・子供・自慢・身の程・仏教
などからも、根は女好き、子供嫌い、特権意識が強い保守主義者。
などと兼好法師を裸にする。
酒井順子の文章はイマ風で、例えば有名な冒頭の「あやしうこそものぐるはしけれ」は、
何をしてるんだかなぁ、俺。
となるんでした。
また兼好法師とブロガーとの共通点の考察も、ドキッとさせられる。
僭越ながら森生だって、兼好法師と同じ動機で「林住記」を書いているのである。
ただ「徒然草は」何百年も残り「林住記」は1日か2日しかもたないのね。
勿論、教科書なんかに載るはずがないよ。
著者によると、それは〇×をはっきりさせないのがいけないらしい。
この本を実はあまり期待していなかった。酒井順子という随筆家を知らなかったので。
ところが読み始めるとぐいぐい引き込まれ、大いに笑うことができた。
じじばばブロガーは、読んでおくべき本です。
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