新潮文庫「青豆とうふ」は和田誠と安西水丸の尻取り共著だから、まえがきを和田誠っさんが書けば、当然あとがきは安西水丸さんです。
今日の記事でも、じじぃはごちゃごちゃ書かず、水丸さんの真直ぐなあとがきを忠実に転記します。
二人の随筆をまさか丸写しするわけにはゆかないので、ご自分が買って、読んで下さいね。
あとがき・安西水丸
和田誠さんはぼくにとって憧れの人でした。
過去形で書いていますが、それは和田さんが照れるといけないとおもったからであって、憧れの人であることは今も変わりません。
大学生の時、和田さんの絵をはじめて目にし、日本にこんな恰好いいイラストレーションを描く人がいるのかと、むしろ落胆に似た感動を覚え
たことを思い出します。
落胆と書いたのは、こんな凄い人がいたら、もうぼくなど一生イラストレーターとして出る幕がないのではないかとおもったからです。
時々、イラストレーター志望の若者たちに、どのようなイラストレーションをいいと考えているかと質問されることがあります。
「ぼくは和田さんのイラストレーションが好きです。絵は少しも奇をてらっておらず、都会的な線と研ぎすまされた色彩は的確に目的をとらえて
おり、誰からも愛され、しかも古くならず、常に第一線で仕事をしている」
これがぼくの答です。
2001年の10月、和田さんと「NO IDEA」というテーマで二人展を行いました。
その打ち合わせの時、和田さんがこんなことを口にしたのです。
「水丸君と、もう一つやりたいことがあるんだけど.........」
つまりこれが「青豆とうふ」の口火だったのです。
第一回はぼくが文を書き、和田さんがイラストレーションを描きました。
今回は和田さん、どんなことを書かれるのか、今回はぼくの文にどんな絵を描いてくれるのか、毎月それは楽しみでした。
同時にとてもいい勉強でした。
和田さんのまえがきにもあるとおり「青豆とうふ」のタイトルは村上春樹さんが付けてくれました。
重複しますが、その時のことを書きます。
ぼくは渋谷の小料理屋で春樹さんと食事をしました。
「あのさ、和田誠さんと連載を始めるんだけど、村上さんに何かいいタイトルを」
ぼくも春樹さんもビールを飲んでいました。
「そんな、大それたことを」
春樹さんは即座に言いました。無理強いはいけない。その後、酒も進みました。
「あのさ、さっきのタイトルのことだけど........」
春樹さんは豆腐に箸を延ばしたところでした。豆腐は青豆でできていました。
「それじゃ、青豆とうふ」春樹さんは例の照れくさそうな顔をして言ったのでした。タイトルが決まったわけです。
村上さんありがとうございます。
いずれにせよ憧れの和田誠さんとの共著です。喜びは言葉になりません。
最後になりましたがこの出版にあたり・・・(以下3行割愛)・・・厚くお礼申し上げます。
今日、青山の街で初蝉の声を聞きました。夏がやってきました。
ね、和田誠さんがまえがきで書いたとおりの安西水丸さんでしょ?
絵と同様にふんわりと、あるいはじわっと、人の心に入ってくる。憧れの和田さんの絵の特徴を上手くとらえている。
で、今日の記事はこれで終わりですが、この本はこれで終わりかと言うとそうではありません。
最後に、「青豆とうふ」と名付けた村上春樹氏の「文庫版のおまけ」があります。
これがまた、ほのぼのとしたいい文章です。
明日は、おまけ、です。
一番上の挿絵は安西水丸さんによる寺山修司と、後ろ姿は少年時代の和田誠さん。
下は和田誠さんによる「理科教室の人体模型」。手前が安西水丸さんで後ろが村上春樹さん。
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