非国民通信

ノーモア・コイズミ

看板は新しいものに変わる、中身はさておき

2024-08-18 21:35:06 | 政治・国際

 先日は岸田首相が自民党総裁選の不出馬を表明しまして、これで日本のトップも変わるわけです。総理大臣は新たな自民党総裁の手に渡るのでしょうけれど、しかし日本の政治そのものは変わるのか、という点ではあまり期待の持てないところもあります。岸田が続投を断念するに至った理由としては「政治と金」で批判を浴びているところが大きい、この問題にどう対処できるかが次の首相には問われると予測されるのですが──それで国民の生活が上向くことはあるのでしょうか。

 日本の政治家にとって、最も致命的なのがまさに「政治と金」の問題です。次は女性問題(男性問題)ぐらいで、政策的な誤りに関しては基本的にノーダメージ、それで議員の地位が危うくなったりはしないのが我が国の政治の特質と言えます。もちろん政治と金の問題は好ましくない、無視も出来ない代物には違いないのかも知れません。しかし金銭スキャンダルや派閥がなければ良い政治かと考えた場合、そこは別問題ではないでしょうか。政治資金の面でクリーンであることは政策の質を担保しない、そして重要度が高いのは後者です。

 ところが日本の主要政党だけではなく大手メディアも世論の多数派も「親米・緊縮」で方向性が一致しており、政策的な論点に乏しい、結果として相手を一方的に責め立てやすい「政治と金」の問題が最大の争点になってしまうのが実情でしょうか。このため、自民党総裁が替わろうが野党が自民党に取って代わろうが、結局のところ政策面では転換がなく単純に看板を掛け替えただけに終わってしまうわけです。それでも看板が掛け替えられることで国民の期待感だけは高まる、支持率も一時的に上昇するのですから尚更のこと政策の転換など夢のまた夢なのかも知れません。

 海の向こうでは老いの顕著なバイデンから相対的に若いハリスへと民主党候補がすげ替えられたことで、支持率が飛躍的に伸びています。バイデン政権下の目立たない副大統領が急に前面に出てきたわけですが、何が有権者の期待をこれほどまでに駆り立てているのでしょうか。民主党内の予備選を争いバイデンを蹴落として出てきた候補ならいざ知らず実質的には後継としての登場であり、対立候補は批判しても自分の属している政権は当然ながら批判できていない、転換ではなく「継続」がハリスの基本方針であることは間違いないと言えます。

 バイデンとトランプの間であれば、トランプの方が優勢とみられていました。それがハリスに変わったことで形勢は逆転してしまったわけです。ではバイデンの政治方針の悪い部分をハリスが改めようとしているのかと言うと、決してそんなことはありません。ただ単に、候補が後期高齢者から少し若い女性に変わっただけです。ことによるとアメリカの有権者も政策を理由に投票先を決める人は多くない、単に高齢者を嫌っているだけ、より若い方に投票しようとしているだけの人が一定数いるのかも知れません。しかし若くても高齢でも、害悪政治家は害悪政治家です。

 日本でも総裁選の結果として、あるいは解散総選挙の結果として少しだけ政治資金面でクリーンな新政権が誕生する可能性はあります。しかし、それで日本の政治が変わる、国民の生活が上向くかどうかは保証の対象外です。政権交代が起こってすらも、解消されるのが政治と金の問題ぐらいで政策面での転換がなければ、何の意味もないのだと断言できます。しかし政策は変わらずとも総理が替わる、閣僚が替わる、政権が(別の政党に)替わる、とにかく看板さえ掛け替えられれば一時的にでも支持率は向上してしまうのが実態です。だからこそ看板は変わっても政策は変わらない、それが日本政治となっているのかも知れません。

 取り敢えず自民党総裁候補として名前の挙がっている面々であれば誰が当選しても抜本的な好転は望めない、政権交代が起こっても野党第一党、野党第二党であればやはり政策面での本当に必要な転換は望めない、というのが私の認識です。そこは現役の政治家が考えを180°改めるか、主要政党を強制的に解散させるかでもしないとダメでしょう。そうした面では選挙なんかよりも外圧の方が期待できる、トランプが大統領に再選して日本が振り回された方が転換の契機になるのでは、ぐらいに思っていました。しかしハリスが勝って現行路線が継続されてしまうとなると、ますます以て望み薄ですね。

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目次

2024-08-18 00:00:00 | 目次


なんだかもう、このカテゴリ分けが全く無意味になりつつあります……

社会       最終更新  2024/ 7/28

雇用・経済    最終更新  2024/ 6/ 9

政治・国際    最終更新  2024/ 8/18

文芸欄      最終更新  2024/ 7/27

編集雑記・小ネタ 最終更新  2024/ 8/11

 

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I remembered Pearl Harbor

2024-08-15 21:26:32 | 政治・国際

 先日はウクライナ軍がロシアのクルスク方面へ大規模な侵攻を開始したことから、一部界隈が賑わっています。これを見て思い起こすべきは日本の真珠湾攻撃でしょうか。中国方面の戦況が思わしくない事態を打開すべくアメリカへの奇襲に打って出た日本軍は作戦当初こそ華々しい戦火を収めたわけですが、その結果は言うまでもありません。ただアメリカとすれば日本がかくも無謀な攻撃に出るとは読めていなかったようで、勝った側にも怨恨を残す戦いでもありました。

 ウクライナも日米開戦当時の日本軍と同様に思わしくない戦局を打開すべく奇襲に打って出た、ロシアはアメリカと同様に劣勢にある側が新たな戦端を開くとは予想できずと、対応が後手に回ってしまったのが現状でしょうか。ただロシア側は既にクルスク方面にも軍を移動させウクライナ軍を押し戻しつつあるほか、ウクライナ東部方面では引き続きジリジリと占領地を広げる状態が続いており、長期的に見れば太平洋戦争と同じ結果に落ち着くものと予想されます。

 

Update 242 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine(IAEA)

(訳)ウクライナのザポロージェ原子力発電所(ZNPP)で、国際原子力機関(IAEA)の専門家が、夜通し複数の爆発音を聞いた後、発電所の北西エリアから濃い黒煙が出ているのを目撃した。チームは、今日、原発の冷却塔のひとつにドローンによる攻撃があったとされるとの報告を受けた。IAEAのラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、原子力安全への影響はないことを確認した。

IAEAチームは、ZNPPからドローンが同発電所の冷却塔2基のうち1基を攻撃したとされるとの報告を受けたのと同時に、本日爆発音を聞いたと報告した。

 

 そして現在、クルスクとザポロージェの原子力発電所2つがウクライナ軍による攻撃を受けています。いずれもロシア及びIAEAの伝えるところではドローンによる攻撃とされている一方、国内メディアは全く別の内容を記しているわけです。

 

ザポロジエ原発で火災 ロシア放火の情報とウクライナ(共同通信)

 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発の敷地内で、ロシア軍が火災を起こしたと通信アプリに投稿した。放射線量は正常だとしている。原発の対岸に位置するニコポリの当局者によると、冷却塔で大量のタイヤに放火したとの情報があるという。

 

 こちらはウクライナの元大統領であるゼレンスキーの妄言をそのまま掲載したもので、何ら根拠のない情報が前面に押し出されています。ウクライナの先勝報告然り、軍部の「こうあって欲しい」という妄想をそのままマスコミが広報しているわけで、典型的な「大本営発表」ですね。時に「事件記者ではなく警察記者」みたいな批判もあって、つまり事件そのものを取材するのではなく警察を取材して警察発表を紙面に載せるだけの報道機関が目立つところですが、今回のウクライナを舞台にしたロシアとNATOの戦争も同様、実態ではなく大本営の発表を伝えることに満足しているメディアが主流派を構成していると言えます。

 このザポロージェ原発に関しては「ロシアが占領している」という点では日米欧のメディアも一致しているにも関わらず、「誰が攻撃しているか不明」みたいな扱いを長らくされてきました。ロシアが確保している拠点に攻撃をかけるのはNATOの傀儡勢力以外にあり得ないのですが、西側の主立ったメディアは軒並みロシアによる自演説を何の根拠もなく主張してきたわけです。どうにもロシアを貶める内容でありさえすれば真偽や根拠は問わない、というのが報道の基本姿勢になっているようで、真実を伝えることを放棄してプロパガンダ機関に徹するメディアの姿勢には疑問を感じないでもありません。

 今以上に日本が主体的に関与する──つまりは他国に日本の軍隊を送り込むような戦争が起こったときも、メディアは同じことをするであろうと私は確信しています。大本営発表をそのままに、「敵」を貶めるべく創作ニュースが垂れ流されているのは80年前も今も全く変わっていません。日本軍もウクライナ軍も報道上では華々しい戦果を上げ続けていましたが、それは真実ではないわけです。そして過去と現在において繰り返されていることは、当然ながら未来においても繰り返されることでしょう。

 外国の政府高官も加担したクーデターで大統領が追放されたとき、西側諸国はウクライナを咎めませんでした。反体制派への武力攻撃も少数派住民への弾圧も停戦合意違反も、ウクライナに関しては問題視されてきませんでした。野党の活動が禁止されゼレンスキーに批判的な政治家が身柄を拘束されたときも、ウクライナの政治体制を批判する声は上がりませんでした。そして任期が切れた後も権力の座に居座るゼレンスキーを未だに大統領扱いしているわけです。

 たぶんウクライナ軍の攻撃で重大な原発事故が発生してもウクライナ側は許される、全てはロシア側の問題にされることでしょう。それを理解しているからことウクライナは躊躇なく原発への攻撃を繰り返していると言えます。しかし、このような状態において真に平和への脅威となっているのは実際にはどちらなのか、首を傾げずにはいられません。決して欧米諸国から咎められないことを知っているからこそイスラエルは民間人を犠牲にすることに躊躇がないように、ウクライナもまた同じことを続けるでしょう。

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何を反省するべきか

2024-08-11 21:20:56 | 政治・国際

 広島と長崎での平和祈念式典が終わりました。原爆投下が戦争終結を早めたとの主張もアメリカ側にはあるわけですが、史実はどうだったのでしょう。原爆投下後も軍部は徹底抗戦の構えであり、日本に降伏を決意させたのはソ連の参戦ではないかという気もします。このソ連の参戦だってアメリカがヤルタ会談で要請して決まったもので、揚陸作戦のための訓練や装備もアメリカが提供していたこと(プロジェクト・フラ)を鑑みれば、結局はアメリカの戦略として誇られても良さそうです。しかるに対日参戦があたかもソ連の判断であるかのように誤って伝えられてきた、その結果として原爆投下と終戦を関連付けて考える発想を許してきたところもあるかも知れません。

 広島では予定通りロシアとベラルーシを排除、イスラエルやアメリカを招いて式典が開催されました。広島市長もまたロシアとウクライナの関係については「侵攻」と決めつける一方で、イスラエルとパレスチナについては「情勢の悪化」と誤魔化すなど、これまた特定の陣営に偏った主張を繰り返すに終始し、我が国における「平和」の位置づけを窺わせるものであったと言えます。ロシアのザハロワ報道官は岸田首相の演説を評して「日本当局の公式見解によれば、これらはアメリカの原爆投下ではなく、単に空から爆弾が降ってきただけ」と語りましたが、結局のところ我が国の政治にとって基準となるのは「アメリカの敵か、味方か」であり、「同志国」であるイスラエル非難などあり得ないのでしょう。

 

主要6カ国とEU、長崎市に書簡「イスラエル除外なら高官参加困難」(朝日新聞)

 米英など主要6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使らが、9日に平和祈念式典を開く長崎市に対し、イスラエルを招待国から除外したら「我々もハイレベル(高官)の参加が難しくなる」との書簡を7月中旬に送っていたことが7日、明らかになった。同日までに長崎市からイスラエルへの招待がなかったことから、米英の駐日大使は式典への出席見合わせを決めた。

 長崎市と米英など主要国などが、式典の約20日前からイスラエルへの式典招待をめぐって意見が食い違い、政治問題化していた実態が明らかになった。

 書簡は7月19日付。主要7カ国(G7)のうち、日本を除く米、英、仏、カナダ、ドイツ、イタリアとEUの大使や代理大使が直筆のサイン付きで、長崎市の鈴木史朗市長あてに送付した。

 

政府、核軍縮への影響懸念 G7大使の長崎式典欠席―原爆忌(時事通信)

 与党幹部によると、政府は長崎市がイスラエルを式典に招待しないことを決め、各国大使らが反発していることが分かると、外交問題に発展する事態を懸念。鈴木史朗市長と関係のある現職閣僚や元参院議員を通じて水面下で翻意を促したが、市の方針は変わらなかった。

 

 一方の長崎では、イスラエルが招待されなかったことに反発したG7各国が不参加を表明、この状況に対して日本政府までもが長崎市に圧力をかけていたことも伝えられているのですが、いかがなものでしょうか。確かにイスラエルはアメリカの同志として「許される」側の国であり、アメリカに敵視された「許されない」国とは同列に語られるものではないのかも知れません。イスラエルを招待しなかった理由はあくまで式典の円滑実施のためとされており、市長演説もまたイスラエルを名指しすることを避ける日和った代物でした。それでもなお、アメリカと同じ陣営にいる国は常に歓迎されなければならない、それが「主要国」を自称する排他的仲良しグループの決まり事だったようです。

・・・・・

 先日はバングラデシュで大規模な暴動が発生、政権が転覆されるに至りました。選挙によらない政権交代は世界各国で起こっていますけれど、このバングラデシュの暴力革命はどのように評価されるのか興味深いところです。これも最終的に樹立された新政権が「アメリカ寄りか否か」で欧米からの扱いが決まってしまう、典型的なのがウクライナで、アメリカの国務次官補も加わった暴徒によるクーデター政権は何の議論もなく「国際社会」の承認を得ました。一方でアメリカの意向に従わないアフガニスタンやミャンマーの新政権は一貫してネガティブに扱われています。ただ「アメリカ陣営にとって良いか悪いか」ではなく、その国で暮らす人々にとってどうなのか、という観点で考えてみることも必要ではないでしょうかね。

 岸田文雄は、アメリカにとって理想的な政治家であると言えます。バイデンの望むままに軍事予算を増大させ、中国やロシア周辺での軍事演習にも積極的で、アメリカの尖兵として周辺国との敵対関係の構築に余念がありません。内政面でも勤労から投資への税制優遇措置で日本人による外国株購入を強く促し、アメリカの景気を下支えしてもいるわけです。しかしアメリカから見れば非の打ち所のない政治家であっても、自国民から見ればどうなのでしょう。岸田は日本人にとって良い政治家ですか?

 欧米では、アメリカ陣営の利害と自国の利害を分けて考える人々が増えており、それが中道と右派に分化している、左右の対立ではなく右と左と中道に三極化している様相が窺えます。アメリカ陣営の利益になるとしても、それが自国の負担増に繋がるのであればお断り──と、自国中心主義を唱える新しい右派が勢力を増しているわけです。残念ながら日本はアメリカの利益と日本の利益を分けて考えることが出来ず、ただただアメリカに付き従うばかりの国政運営が続いている状態と言えますが、この誤りに気づく日はいつか訪れるのでしょうか。

 原爆投下の日に続いて、今週は「終戦の日」が訪れます。しかし日本の対外戦争は複数あり、それぞれ終戦を迎えた日は異なるわけです。日清戦争にも日露戦争にも、シベリア出兵にもイラク侵略にも、それぞれ終戦を迎えた日があります。日本が出兵した戦争が終わった日が数多ある中で、どうして8月15日だけが「終戦の日」なのでしょうか。本当に戦争そのものを反省しているのであれば、他の戦争の終わった日だって顧みられてしかるべきです。「過ちは繰返しませぬから」と語られるとき、そこで想起されているのは何なのか、他の戦争を忘れて特定の戦争だけを反省しているとしたら、それは「二度とアメリカには刃向かいません」という誓いと何が違うのか、問われるべきものがあるように思います。

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ウクライナでは許されたこと

2024-08-11 10:10:32 | 編集雑記・小ネタ

(社説)タイ野党解党 司法用いた民意の抑圧(朝日新聞)

 タイに真の民主政治は根付くのか。深い疑念を抱かせる事態である。

 タイの憲法裁判所が、下院で最大勢力の革新系野党・前進党の解党を命じた。2023年の総選挙で、王室に対する不敬罪の改正を公約に掲げたことが、立憲君主制の転覆をはかる憲法違反にあたるとされた。党の幹部らは10年間、政治活動を禁止される。

 

 ウクライナでは野党の活動は禁止、野党議員の身柄拘束も相次ぎロシアとの捕虜交換の弾にされたりしているわけですが、日本の大手メディアがこれを批判的に報じた例を私は知りません。今回は似たようなことをタイが行ったようですけれど、ブルジョワ新聞曰く「真の民主政治は根付くのか。深い疑念を抱かせる事態」だそうです。「真の」民主主義とは一体何なのでしょうね。ウクライナとタイ、同じ野党の弾圧でも何が違うのか、結局はアメリカ陣営に属している国であれば全ては許されるのだ、と言うほかありません。

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日本人が関心を持たないこと

2024-08-09 23:53:51 | 編集雑記・小ネタ

ロシア、日米軍事演習に関連して日本大使館に抗議(SPUTNIK)

ロシアは、7月18日から26日にかけて北海道を含むロシア国境に近い地点で行われた日米合同軍事演習「オリエント・シールド」に関して、在ロシア日本大使館に抗議した。ロシア外務省が発表した。

ロシア外務省によれば、ロシアは日本側に、 ロシア極東国境付近での「挑発的な軍事活動」が断じて許されないことを指摘したという。ロシアはこのような活動をロシアの安全保障に対する潜在的脅威と見なしている、と強調した。

 

 隣国が軍事演習を行えば主要メディアが大きく報道するわけですが、自国の軍事演習については真逆ですね。隠蔽こそされないものの、黙殺に近い扱いをされる、それが自国(と宗主国)の軍事演習です。本当は日米両国の軍事演習に端を発した諍いでも、その後のリアクションにばかり焦点が当てられ、あたかも日本側が一方的に敵意を向けられているかのごときミスリーディングが行われる、自国による加害や挑発を「なかったこと」にする、それが完全に当たり前のことになっています。

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偏向ここに極まれり

2024-08-04 21:15:50 | 政治・国際

(百年 未来への歴史)序章・瀬戸際の時代 よみがえる「戦間期」の悪夢(朝日新聞)

 

 上記のような図が新聞の1面に掲載されていたのですが、いかがなものでしょう。第2次大戦の図は枢軸国をピックアップしたものとして間違いではないのかも知れませんけれど、後段の現代を表したとされるものは強い作為を感じさせます。特におかしいのが中東地域の図で、具体的な国名としてはイランが名指しされているのですが、しかしイランがどこかの国に派兵を行ったなどの事実はなく、名前を挙げられた4つの国に共通点を探すとすれば結局のところ「アメリカから敵視されている」ぐらいしか言いようがありません。せっかくなら南北アメリカ大陸も地図に加えてベネズエラの国旗も掲揚したら、より主張が伝わったような気がしますね。

 国のチョイスもおかしいのですが、地域ごとに付け加えられた説明もおかしい、欧州やアジアに比べて中東の説明だけが不釣り合いに長いのですが、曰く「イスラム組織ハマスの奇襲を受け~」とのこと。これではパレスチナ側が先制攻撃を仕掛けた結果としてイスラエルが正当防衛を行っているかのような誤解を読者に与えてしまいます。朝日新聞としてはそれが本望なのかも知れませんけれど、事実関係の説明としてはいかがなものでしょうか?

 確かにハマスによる反転攻勢はあった、しかしこれに先立つイスラエル建国以来の絶えざる侵略については触れられていません。何事も全てを始まりから記載するのは難しいとはいえ、これでは紛争の原因がハマスにあるかのようなミスリードと言わざるを得ないでしょう。もちろんこのミスリードも意図遭ってのことのようにも思えます。ウクライナであれば、まずクーデターがあり、その後に国内の少数派住民に対する武力攻撃があった、これが解決されずロシアによる介入が始まったわけです。中東ではハマスの反転攻勢から触れることでイスラエルを免責し、欧州ではウクライナの内戦を無視することでロシアを悪玉に仕立て上げる、まさに西側陣営のプロパガンダそのものの図と言えます。

 立ち位置で言えば、ガザ=ドンバス、イスラエル=ウクライナであり、昨今の紛争におけるロシアに相当する国は現在のところありません。確かにイスラエルに抗している勢力の後ろ盾としてイランが存在することは否定できないものの、それでもイラン本国は日和見主義的な立場を維持しており、戦局はイスラエル優位が続いています。やはりイランがロシアのように直接的な軍事介入を始めれば、ガザの窮地は救われる可能性が高い、それは上策ではなくとも大義のあることなのですが──「国際社会」を自称する欧米諸国からの非難に晒されるのは、イランであることがあらかじめ決められているのでしょう。

・・・・・

 今週は広島の平和記念式典が行われるわけですが、前年と同様にロシアは排除、アメリカやイスラエルは招待を継続、パレスチナ代表も当然ながら招待せずと、広島市の立場は鮮明です。日本にとっての核廃絶とはアメリカ陣営による核の独占であり、平和とはアメリカによる天下統一である、アメリカの覇権を脅かす存在こそが平和にとっての脅威であると、そう解釈すれば日本国内で平和を唱える人々の行動にも一貫性がないわけではないことが分かります。シオニストが平和を訴えるとき、それはパレスチナ人の絶滅政策を意味しているように、平和の基準が正しいのかどうかは常に顧みられてしかるべきでしょう。

 

PAC3、米に売却契約 ライセンス完成品で初―防衛省(時事通信)

 防衛省は28日、航空自衛隊が保有する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を米軍に約30億円で売却する契約を締結したと発表した。弾数や引き渡し時期は非公表。昨年12月に防衛装備移転三原則の運用指針を緩和した後、国内製造する外国ライセンスの防衛装備完成品の移転は初めて。

 

 先月には日本国内製造の兵器をアメリカ軍に売却すると発表されました。「日本製」の兵器はアメリカ軍が使用するとの触れ込みですが、この分で余剰が出来るであろうアメリカ製の兵器はイスラエルやウクライナに送られるわけです。どう小細工を弄したところで、結局はパレスチナ人の虐殺へ日本も間接的に加担することになったと言えます。日本が「平和」を口にするとき、その意味するところはアメリカが世界を牛耳っていることです。「アメリカの敵」がどのような攻撃に晒されていようと、それは平和のためと言うことになるのでしょう。

・・・・・

 先に行われたベネズエラの大統領選挙では、西側メディア発表の世論調査結果を覆してマドゥロ大統領の再選が発表されました。4年前にトランプが選挙結果に異議を唱えたように、その公正性について疑問を投げかける権利はヨソの国にもあるのかも知れません。しかし西側メディアによる世論調査結果を根拠に、対立候補が本当の勝者であると認定し始める国もあるわけです。国外メディアによる世論調査結果で一方の候補が当選者として認定されるとしたら、それこそ民主主義とは何だろうと考えさせられるところもあります。そしてウクライナでは大統領の任期の切れたゼレンスキーが今なお権力の座に居座り、西側諸国から国家元首扱いされている有様で、どうにも選挙すら実は正統性の根拠にならない、要はアメリカの敵か味方かに収束してしまうのだと言わざるを得ません。

 このウクライナのクーデター政権がドンバス地域の少数派住民への武力攻撃を開始してから、ロシアが直接介入に踏み切るまでは8年の歳月を要しました。それを思えば、イランがガザのために決起するにはまだまだ時間を要するのかも知れません。ロシアがそうであったように外交的努力を積み重ねた結果、どれだけの年月をかけても解決の見込みはない、かくなる上は軍事力による対抗しかないとイランが判断する時期が訪れたとしても、決して驚くことではないでしょう。そうなったときに日本ではイランへの非難が吹き荒れるであろうことは想像に難くありません。しかし本質的な悪はイスラエルの増長を助けてきた欧米にあってイランは大義のある行動をしているのだ、と私はあらかじめ態度を表明しておきます。

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公衆衛生の破綻

2024-07-28 21:03:44 | 社会

 新型コロナウィルスの感染は11週連続で拡大が続いているそうです。医療機関からは逼迫も伝えられる一方で世間の感染症対策は緩んだまま、感染症の蔓延によって学級閉鎖やイベントの中止、営業活動の縮小などのケースも少なからず発生しているようですが、それでも感染予防には乗り出さず個人の判断に任せる、というのが我々の社会における主流派を構成しています。上述の通り感染者の増加のために通常の営業活動が困難になる事業者も出ているわけで、この状況を「経済優先」と見なすことは不可能です。優先されているのは経済ではなく、感染症対策に「公」が介在しない自己責任社会の深化の方ではないでしょうかね。

 増えているのは新型コロナだけではなく、人食いバクテリアこと劇症型溶血性連鎖球菌感染症や手足口病も同様です。溶連菌や手足口病は従来は子供達の間での流行に止まることが多かったのですが、昨今は大人にも広まっている、過去最悪のペースであるとも伝えられています。感染力の高い「新型」コロナウィルスだけではなく従来の昔からある感染症もハイペースで拡大していることが意味するのは即ち、我々の社会における公衆衛生の水準が低下している、と言うことです。コロナ禍の非常事態を経て、我々の社会は以前よりも不衛生になってしまったのかも知れません。

 この辺は市井の声に過ぎませんが、コロナ前はマスクを着用していた飲食店でも「マスク着用は任意」という感覚が広まった結果としてマスクを外すようになった、「任意なのに何故マスクを付けるのか?」とマスクを外すように指示する事業者もいる、感染症の症状が出ているにも拘わらず「任意だから」とマスクを付けずに人混みに飛び込む輩を目にすることも多い等々、過去よりも現在の方が飛沫の飛び交う機会は増えた、感染症の広まりやすい環境が作られたところもありそうです。インフルエンザの感染者が皆無に近いところまで抑え込まれていた清浄な日々は、まさに非常事態の産物でしかなかったのでしょう。

 病気をうつすのは、最も合法的な加害手段であるということができます。他人を殴れば犯罪ですが、病原菌をまき散らすのは罪に問われません。電車の中でサリンを散布すればテロですけれど、ノーマスクの感染症患者を満員電車に押し込んで派手に咳き込ませても、それで捕まることはありません。それはしばしば直接的な暴行よりも重大な健康被害を周囲にもたらすものでありながら感染症のスプレッダーは犯罪者として収監されることはなく、野放しにされたままです。いわば野犬を放置しているのと同じようなものですね。

 我々の社会は言論の自由の名のものとにヘイトスピーチを野放しにしてきましたが、感染症とスプレッダーに関しても同様の原則が適用されているのかも知れません。ヘイトスピーチの放置は結果として他人の権利を侵害する、社会全体で見た場合の自由を損ねるものですが、それでもヘイトスピーチに枷を課すことを避けてきたのが我が国です。同様に感染症のスプレッダーを放置することは結果として他人の健康を奪うことになる、世の中全体の自由を妨げるものですが、それでも感染症の保菌者の行動を制限しようとしない、これが我が国における「自由」という概念の扱いなのかも知れません。

 

“日本人は特にいじわる”とデータが証明?行動経済学が明かす「スパイト行動」(データのじかん)

──相手に出し抜かれるくらいなら、自分が損してでもダメージを与えたい。
あなたはこのような気持ちを抱いたことはありますか?

”日本人は上記のような意地悪な行動を選びやすい”と示すデータが、1990年代、日米の経済学研究者によって行われた実験で取得されました。このような行動は英語で悪意、いじわるなどを意味する単語、spite(スパイト)を用いて「スパイト(いじわる)行動」と名づけられています。

 

 日本人のマスク嫌いは、上記の「スパイト行動」によって説明が付くように思います。つまり全員でマスクを着用することが感染症の抑え込みにつながり社会全体の利益は最大化されるわけですが、マスクなし(加害者)とマスクあり(被害者)の間では加害者サイドが相対的な優位を得ます。相手から一方的に病気をうつされるぐらいならば、むしろマスクを外して感染症を広める側に回ろうとする、こうしたスパイト行動への志向が日本人には顕著で、それがマスク嫌いに繋がっているのではないでしょうか。

 言うまでもなく、マスクの最大の効果は着用者の飛沫拡散防止であり、他人の飛沫からの防護は二次的なものです。保菌者がマスクを着用して飛沫を放たないよう努めることは効果的であるものの、スプレッダーが派手に咳き込む中で自分だけマスクを付けたところで、その防護効果は十分ではありません。マスクは何よりもまず「他人にうつさないため」に着用するものであり、スプレッダーに包囲される中で自分だけがマスクを着用しても、助かるかどうかは運次第です。

 だからマスクは本来「嫌がる人にこそ」着用させるべきであって、個人の自由とするのは公衆衛生の面では誤りと言えます。隣人に感染症を広めようとするスプレッダーをどうにかしないことには、コロナも溶連菌もインフルエンザも、どれも防ぐことは出来ません。ノーマスクでは自身も感染のリスクを負いますが、同時に周囲へとダメージを与える機会が増える、逆にマスクを着用していれば他人に感染させる確率を大きく低下させられるものの、スプレッダーからの防御は十分でない──こうした中で「相手に出し抜かれるくらいなら、自分が損してでもダメージを与えたい」という無自覚の欲望に突き動かされたノーマスクも多いと考えられます。こうした人々への対処法は個人の判断に任せず「公」による強制しかないのですが、我が国の政府は甘っちょろいですよね。

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2024-07-27 21:19:41 | 文芸欄

 そのウィルスは当初、呼吸器に作用すると考えられていたが実は呼吸器の症状が消えた後も脳にウィルスが残り続け、罹患者は感染の影響を過小評価し再感染のリスクが高い行動を好むようになる。また脳をウィルスに冒されると、人混みの中ノーマスクで激しく咳き込むなど周囲に感染を広めるような行動を取るようになる……という設定を思いつきました。作品に仕上げる予定はないので誰でも好きに使ってください。

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似たような制度でも、陣営が違えば扱いも違う

2024-07-21 21:20:04 | 政治・国際

西側がそれでグルジアを批判した「外国の代理人」法案をカナダが可決(スプートニク)

カナダは、米国の外国代理人登録法(FARA)よりも厳格な法案をわずか1か月半で可決した。これにロシア外務省のザハロワ報道官が注目し、トルドー政権の指示で急いで提出された文書に一部の議員が目を通していなかったのを認めたことに言及した。ザハロワ氏は、これほど重要な法制度の改正としては前例のない速さだと指摘した。

法案には以下の提案が含まれている:
・外国代理人登録リストの作成
・大使館職員の制限
・外国の影響を管理する機構の設置

 

 この法案については当然のことながら公にされているのですが(参考)、日本語で読めるメディアで報じているのはロシアのスプートニクと、法輪功の大紀元ぐらいしか見つけられませんでした(参考)。まぁ大紀元は中国におけるウイグル弾圧の情報源として西側諸国では大いに信頼されている、ということは伝えておくべきでしょうか。

 本年の5月には州じゃない方のジョージアにて、同様の外国代理人登録に関する法律が可決されました。これは日本国内の大手メディアでも頻繁に報道され「ロシアの法律」「民主主義の後退」などとレッテルを貼られてきたわけです。事実関係としてはザハロワ報道官も正しく指摘するとおり、アメリカには先駆者として既に同様の法律があります(参考)。アメリカの州にあやかって国名を改称するような国がアメリカの法律を模倣しただけなのに、西側諸国のメディアは挙って事実をねじ曲げて報道してきた、この偏向ぶりは強く意識されるべきでしょう

 

政府が「メタ情報」を平時監視へ 能動的サイバー防御巡り検討(共同通信)

 政府はサイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を巡り、インターネットの住所に当たるIPアドレスや通信量の変化などの付随的な「メタ情報」について、政府機関による監視を平時から可能とする方向で検討に入った。プライバシーに配慮し、メールの件名や本文のようなデータ本体は原則、収集の対象外とする。複数の政府関係者が14日明らかにした。

 

 この辺も一応は報道されているわけですが、あまり話題にはなっていないように思われます。曰く国内のデータ通信を政府機関によって監視する、データ本体は「原則」収集の対象外とするとのこと、「原則」とは具体的に何を例外とするのでしょうかね? よく西側諸国が中国やロシアの企業との取引を抑制する口実として、データが相手国の政府に渡される云々と吹聴されていますけれど、では日本やアメリカ、イスラエルなどの同志国であれば違うのか、という疑問は尽きません。少なくとも上記の検討事項が通れば、日本政府によって通信の秘密が侵されることになる、日本国内でのビジネスは中国やロシアにおけるものと同様にリスクがあると言えます。

 結局のところ、どこの国も根本的な制度は似たようなものです。アメリカにもロシアにも、州じゃない方のジョージアにもカナダにも外国の代理人を監視する制度はありますし、中国にも日本にも民間の活動情報を政府が監視・収集する取り組みはある、制度面ではどこの国も大差ないと言うことができます。違うのは制度ではなく「陣営」に過ぎない、アメリカの傘下にある国を信頼できると見なし、アメリカの意向に従わない国を危険と見なしている、ただそれだけのことです。

 

・・・・・

 

 先般はトランプ大統領候補が演説中に銃撃される事件が起きました。そしてお決まりの「テロは許されない」「民主主義への脅威」等といった非難が国内報道にも並んだわけです。しかし2014年に武装勢力が議会を包囲して大統領を追放したウクライナを巡っての言説はどうだったでしょうか? 結果として親米政権が樹立された場合、その暴力革命は「マイダン革命」や「アラブの春」などと呼ばれ西側諸国から賞賛されてきました。一方でアメリカの意向に沿わない政権が樹立された場合はクーデターとして非難される等々、結局は武力による現状変更もまた「陣営」次第で賛否が分かれると言えます。

 暴力革命と聞くと一概に否定する人が圧倒的多数を占めているはずですが、しかし現実にウクライナで暴力革命が発生した際にこれを非難した人は極めて稀でした。結局のところ、制度や行為そのものは問題ではない、単純にアメリカ側に属しているかどうかで評価している、そんな人々が西側諸国で主流派を構成しています。日本は専ら差別する側に立っているからこそ、この歪さには全く気づかないのが現状かも知れません。しかし差別される側、不公正に取り扱われてきた側にとって驕れるアメリカとその衛星国の言動は白々しいものにしか映っていないことでしょう。

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