給付金 制限、市町村裁量に 世帯所得、1800万円を下限(産経新聞)
政府・与党は11日、追加経済対策の目玉である生活支援定額給付金の詰めの協議を行った。この結果、焦点の所得制限の有無について(1)国ではなく、窓口となる市町村が決める(2)所得制限を設ける場合の下限について1世帯の手取りを1800万円とする(3)所得制限による余剰金は市町村が使い道を決める-ことで合意した。12日に与党が大枠を発表する。今後、総務省が11日に設置した「生活支援定額給付金実施本部」で、市町村を窓口にした詳細な支給方法を検討していく。
国は、市町村の住民基本台帳などの資料に基づき市町村に人口に応じた総額を配分する。このため、国が市町村に所得制限を含めた給付方法を「丸投げ」した形になる。しかし、「一般的に、人口の多い自治体は財政力が豊かだが、各世帯の所得を把握するのは難しい。人口の少ない自治体には逆のことが言える」(総務省関係者)ため、給付金制度が自治体の財政に貢献できるとの見方がある。
二転三転する給付金計画ですが、手取り(≠収入)1800万円の制限枠、制限枠の行使は自治体の裁量&余った予算も自治体の裁量という方向性が示されたようです。これはまた微妙ですね。
収入が1500万円以上の世帯は4%強ですから、手取りが1800万円以上の世帯は何%くらいでしょう? 3%か、あるいは2%くらいでしょうか。国が定めた下限である手取り1800万円を基準として制限を設けたとしても、それによって減少するコストは2~3%にしかならないわけで、財政上の意味がある制限とも思えません。「誰彼構わずバラマキしているわけではないのだよ」というアリバイ作りにも見えます。
一方で、各世帯の所得を把握するのは容易ではないようです。受給希望者の財産状況を調べるにはもちろん、コストがかかります。このコストはどうなのでしょうか? ことによると、制限をかけるために受給希望者の手取りを調べるために費やされるコストは、給付を阻止することで「浮いた」コストを上回るかも知れません。この辺、生活保護などと似たようなことになりそうです。
さて、自治体には「制限を設けるかどうか」決断が迫られます。事務コストを考えれば、制限を設けない方が自治体としては安上がりのような気もしますが、住民のウケはどうなのでしょう。給付金そのものの是非を問う世論調査は多々あり、まぁ否定的な見解が多数を占めるわけでもありますが、制限を設けるべきかどうかについてはどうなのでしょう? どう転んでも役所の決断であれば非難されるものかも知れませんが、制限を設けた方が非難されるのか、それとも制限を設けないことで非難されるのか、そこは興味深いところです。制限を設ければ、自治体が給付を渋っていると非難され、制限を設けなければ「高所得者にも給付している」と非難されそうなもの、どちらかといえば後者の方が強いかな?
歌手の加山雄三(71)が9日、著作権譲渡をめぐる5億円の詐欺容疑で大阪地検特捜部に逮捕された小室哲哉容疑者(49)を非難した。
(中略)
地元の神奈川県茅ケ崎市に建設したパシフィックパークホテルが70年に倒産。借金約7億円を抱え、数年かけて完済した。「僕は監査役だったけど、周りがみんな逃げた。でも誰のせいにもしないで必死に(借金を)返したよ。本当に大変でつらかった」。夫人と1個の卵を分け合ってご飯にかけて食べた時期もあったという。
自身も借金を抱えて苦しんだという加山雄三の弁ですが、なんでも「夫人と1個の卵を分け合ってご飯にかけて食べた時期もあった」そうです。う~ん、10万や20万の借金ならいざ知らず、借金が7億であれば食費の節約など意味がないと思うのですが。料亭に通ったり、毎晩バーで飲み明かしたりするならいざしらず、普通に家庭で好きなものを食べて暮らした場合と、ご飯に卵1個で暮らした場合、その差額はどんなものでしょうか? 健康で文化的とは言えない食生活で仮に年間100万円を節約できたとしても、7億円の借金の前では利息分と比較してすら誤差の範囲です。無駄ですね。人並みに満足できる食生活を送っていたとしても、借金の返済プランには何の影響もなかったはずです。それにもかかわらず貧乏話を披露しなければならない理由はどこにあるのでしょうか?
そこで自治体財政でも同じことが言えるわけですが、これ見よがしに節約ぶりをアピールする、その財政規模(借金額)からすれば意味のない端金であっても、もったいつけて出費を惜しんでみせる、こうしたパフォーマンスが世の共感を呼ぶものだとしたらどうでしょうか? 自治体も住民も、「節約ごっこ」に酔いしれているとしたら救いようがありません。さてさて給付金の扱いはどうなることでしょうか。
まあ、母校の記念イベントに呼ばれて、自慢話をしたかったというレベルのことだと思いますが…。
でもマスコミが、こんな話を「美談」としてとらえているのであれば、あまりにばかばかしいというものです。
とりあえず所得制限だけで論じれば、
「方法がない」わけでは無いと思います。
例えば、一度全世帯に配布しておき、
来年3月の確定申告で基準を超えた世帯には、
所得税を上乗せして課税し、「還付」してもらう方法もあるでしょう。
これなら自治体に判断を押し付けることも不用ですし、「自主返納」などという愚策も必要ない。
こんな簡単な方法、何故誰も唱えないのか不思議です。
加山雄三の子供は私立学校ですか。一歩間違えば、「借金を抱えている身でありながらけしからん、子供を私立にやる余裕があるなら借りた金を返せ!」と世論を敵に回しそうですが、そんな避難への対策として「ご飯に卵だけの節約生活で金を工面している」かのような貧乏話で誤魔化そうとする意図もあったのかもしれません。的外れな非難に、的外れな防衛策ではありますが。
>佐渡ヶ島さん
たぶん、目的が違うのでしょう。所得によって給付を制限することよりも、「ただのバラマキじゃない、ちゃんと線引きもしているんだぞ!」というアリバイ作りとか、非難や責任を自治体に押しつけることなど、そういった目的があるとしたら政府案もそれなりに筋が通る???
>ノエルザブレイヴさん
事務手続きに掛かる人的コストは馬鹿に出来ませんからね。それでも公務員叩きと組み合わせることで、あらぬ方向に発展してしまうのかも知れません。制限をつけずに全員に給付しようものなら、それこそ公務員の怠慢だと非難囂々かも……