民主、自民、公明の3党は17日、国家公務員の給与削減案で合意した。2011年度分の人事院勧告に基づき、昨年4月にさかのぼって平均0.23%を減額。今年4月から2年間は、毎年度の人勧分も含め全体で平均7.8%引き下げる。主要な政策課題について3党が合意したのは、今国会で初めて。関連法案は今月中に成立する見通しだ。
3党の政調会長が17日、合意文を交わした。給与削減で捻出する約5800億円は、東日本大震災の復興費の財源に充てる。
野田政権は人勧実施を見送る考えだったが、消費増税をめぐる与野党協議が進まないなかで復興財源の確保を優先し、自公両党案を丸のみした。増税法案の提出前に「身を切る」姿勢を示すねらいもある。
「主要な政策課題について3党が合意したのは、今国会で初めて」なのだそうです。民主と自民は基本的には志を同じくする政党ですし、公明だって与党に調子を合わせることに賭けては右に出るものがいないだけに、それこそ政策本位で国会運営が行われていたなら3党の合意でどんどん事態がエスカレートしていきそうに思えるのですが、しかるに各政党とも自分が主導権を握りたいとの思惑があるようで、似たような主張を掲げながらも「決めるのは俺だ」と争いあっていると言ったところでしょうか。自民党が推進してきたことを民主党が引き継ぎ、それを自民党が批判するみたいな構図には苦笑させられますけれど、まぁ変な方向に進まれるよりは停滞してくれた方がマシなのかも知れません。
何はともあれ、主要政党間で主張に隔たりのないものとしては上記引用で伝えられている公務員の給与削減が真っ先に挙げられるところです。外国あるいは外国人、脳内左翼や労働組合、(出身者)や障害者など、何かを叩くことでその対象を嫌っている人からの支持を取り付けるような手口は今に始まったことではありませんが、一方で叩く対象によっては反発を買うこともあります。外国人や組合、障害者その他諸々に偏見を持たない人もいる、差別に敏感な人もいるわけです。しかるに「満遍なく嫌われている」対象もあって、例えば「古い自民党」であったり昨今では電力会社であったり、この辺を罵っておけば左右問わず幅広い層から歓迎されやすいものもあります。そしてバッシング対象のチャンピオンと呼びうるのが公務員に官僚ですね。これを叩いておけば自民支持層からも民主支持層からも、せいぜい「手ぬるい」と注文を付けられる程度で方向性自体が批判に晒されるリスクは極小、政治家にとっては最も無難な政策と言えます。
そんなわけで公務員の給与削減に関しては民主、自民、公明の3党ならずとも地方から国政への進出を狙う各種ポピュリズム政党を含めても方針の変わらないものだったりします。各政党が感情的対立を乗り越えて政策本位に行動してしまえば、こうやって無体な給与削減が雪崩を打つように決められてしまうわけです。一方、この頃はしきりに「身を切る~」とのフレーズが使われます。今回の報道でもまた「『身を切る』姿勢を示すねらい~」と伝えられていますが、これはどうなんでしょう? 世論上は、行政(公)の側が「身を切る」のであれば、消費税増税などで民間の負担を増やすことも許すみたいなノリが見受けられますけれど、ツッコミどころは盛りだくさんです。
自分の気に入らない相手(政治家や公務員)を痛めつけることができるのあれば消費税増税のような理不尽な逆進課税をも許してしまうとは、何とも歪んだ自己犠牲の精神だなと思わないでもありません。あるいは比例区を中心とした議員削減で与党はむしろ国会運営で楽ができるんじゃないかとか、議員報酬削減でも資産家の議員は痛くも痒くもない、手弁当の議員をふるいにかけるだけじゃないかとか、まぁ今さら繰り返すこともないでしょうか。それより公務員の給与削減です。民間人が敵視する側という点では行政の側に属する人々に見えるかも知れません。とはいえ、民主党もまた公務員(官僚)への憎悪を焚きつけることで今の地位を得てきたはずです。政府民主党にとってもまた、公務員とは「向こう側」の存在なのではないでしょうか。
「首切りのうまい経営者は優れた経営者であるはずだと言ってたくさんの給料をもらっている。国は国民をリストラすることはできない。国民全体を考えたら、リストラする経営者ほど立派だという考えは大間違い」
上記は2010年6月、当時の首相であった菅直人の発言ですが、これほどまでに菅の頭の悪さを露呈した発言はないように思います。それは以前にも書いたことですけれど(参考、菅は大ばか)、国民は国の従業員ではありません。国民は国に出資する人、言うなれば株主です。そして国の指揮命令下で働く従業員とは公務員に他なりません。しかるに、菅もまた公務員削減に血道を上げていた、それを有権者に向けて大々的にアピールしてきたわけです。確かに、リストラする経営者ほど立派だという考えは大間違いでしょう。そうであるからこそ、国家の従業員たる公務員のリストラに励む政府は立派ではないと言えます。
要するに公務員の給与削減に励む政府=従業員のリストラに励む経営者であり、公務員の給与削減をしたから増税も理解してくれと主張する政府とは即ち、社員の首を切って非正規に置き換えたから配当金の削減に納得してくれと言い訳する経営者みたいなものなのです。その点では、ゴーンの方がまだしも菅よりはマシと言えるでしょう。たしかに、労働者を打倒すべき階級的とでも考えているかのごとき論者は膨大や門戸だの某プレジデントだの自称経済誌なんかをのぞき見すればいくらでも見つかるだけに、こうした言い訳が成立してしまう場面もあるのかも知れません。そして公務員であれば言わずもがなですね。憎き公務員/労働者を締め上げてくれるのであれば、国民/株主の取り分が減っても構わないと、そういうノリで世間は動いているわけです。
自民党ではなく官僚をこそ敵に見立てることで(自民党では官僚支配から脱却できないからダメなのだと野党時代の代表であった鳩山由紀夫は繰り返してきました、あくまで黒幕は官僚であり、自民党はそれを止められないだけという世界観なのです)、民主党は権力を手にしました。自衛隊を除いた公務員へ向ける敵意もまた、自民党のそれをエスカレートさせたものだったと言えます。その民主党にとって、公務員の給与削減は果たして「身を切る」改革なのでしょうか。従業員を「本当に」大切にしている経営者にとってリストラは身を切る改革かも知れませんが、従業員をコストとしか考えない経営者にとっては事情が異なります。果たして民主党にとって公務員とは?
「国家公務員の労働組合が支持しているのは大部分が共産党さんです。国家公務員の組合で民主党を支持しているところはほとんどありません」とは、これまた2010年6月、当時の幹事長であった枝野の発言です。もちろん共産党が組織ぐるみの支援は避けている、結果的に支持されることはあっても形式上は厳に慎んできた一方、民主党は自治労など連合の組織的支援を自ら要請しているわけです。しかし、アホの枝野はそれを真っ向から否定しました。枝野にとって公務員労組の支持というのは隠すべき恥部だったでしょう。そんな扱いを受けても民主党にしがみつく労組には呆れるほかありませんが(DV男から離れられない女の人みたいですね!)、民主党の公務員観が如実に表れた発言だったように思います。
民主党にとって公務員とは何なのでしょう。少なくとも自分の身内と思っていることはなさそうです。むしろ、それを叩くことで有権者の支持を取り付けてきた対象ですらあります。そして公務員(労組)からの支持を受けたことを恥として隠したがっている、そんな関係なのです。民主党が公務員の給与を削減することに「痛み」を感じているとは、とうてい考えられません。「身を切る」とは必ずしも己の身を切ることを意味しないようです。政府は痛くも痒くもない、ただ実地で働く公務員が困窮するだけなのが今回の給与削減であり、いわば民主党にとって「他人の」身を切る改革と言えます。にもかかわらず他人の「身を切る」ことで国民の理解が得られるかも知れないというのですから、何ともいい気なものです。
それどころかサービスの低下しか招かないはずなのに、前と同じでは飽きるからと言ってさらに削るみたいな事に、このままではなりかねませんね。
それとも、もはや今は禁断症状の段階なのでしょうか。
「仲間入り」の誹りを覚悟で言いますが、そちらの方面で一番の「ムダ」であるはずの政党助成金には手をつけませんね。あと、公務員の人件費削減も、「有能な者」にもっと払うために「ダメな奴」は薄給、ないし辞めてもらうということになるでしょう。
それにしても、自分に不利になることばかり受け入れたり、特定の人たちをいじめたりする人ばかりで、SM社会としかいいようがありません。
あと、枝野が最低だと思ったのは、この発言によるところ大です。「共産党じゃないから」なんてことを言っている時点で、もうこの人には議員の資格なしだと思っています。
なんだかもう、頭の中の「悪者」をやっつけることばかりで、現実の社会問題をどうにかしようとかそういうことまでは頭が回っていない感じですね。むしろこの「悪者」をやっつけさえすれば良いのだと、自身の勧善懲悪的な世界観にしがみつくばかりで現実を見ようとしないわけです。
>ルーピーさん
とにかく削減ありき、切ることありきですからね。必要かどうかよりも生け贄を差し出すことが大事なのでしょう。それは別に国民のためになることでも何でもないですが、しかるに有権者がそれで満足しがちなのですから、不毛な政治は続くばかりです。
「人勧を見送って給与を削減せよ」とは労組トップの発言とは思えません。そして連合が給与削減の交換条件にしてきた争議権確保の約束も反故にされそうです。
以前から連合のヘタレ体質は問題にされていましたが、こうまで民主党にコケにされ続けて、それでもまだ支持を続けるのでしょうかね。
連合は共産党支持が多い国家公務員を生け贄に捧げて、民主党支持の多い地方公務員を守ろうとしたようにも見えますが、岡田なんて典型的な「小さな政府」論者ですので、地方公務員の給与も下げたくてたまらないようです。
東電にしろNHKにしろ、民主党の主張は「労働者の給与を下げろ」です。そんな政党に労働組合がすり寄る、端から見ていると愚かしいとしか思えません。
労組も大きいところほど「物わかりの良さ」を売りにしているのか、政府なり経営側に対して腰の引けてるところが目立ちますよね。いったい何のための組合なのかと問いたくなります。連合にしても、いくら民主党に尽くしても報われることなんてないことを、そろそろ理解しても良さそうなものですが、なかなか理解しがたいものがあります。
やはり一度財政破綻するしかないのでしょうか。
それがお望みなら、民主なり自民なりを支持しておけば良いのではないでしょうか。いずれ社会保障もunlimited1945さんの生活もろとも破綻させてくれることでしょうから。私だったら、破綻する前に手を打つことを選びますけど。
故に増税ムードの中、国民の税金で生活している公務員が給与を減らさないなんてけしからん!!東電社員がボーナスを貰うなんてけしからんと不経済な思考に国民も陥ってしまうのかもしれません。
そういう他罰感情を生み出す下地を変革する事を政治家には期待したいところですが、あろうことか他罰感情に乗っかってしまうのですから
呆れるほかありません。
そもそも組合のある職場だって少ないですし、「物わかりの良い」組合も多いですからね。そして労働者の大半は経営側と交渉するより、経営目線で公務員なり電力会社社員なり、厚遇されているとされる人々の陰口を叩くばかり。人々の「考え方」が変わらなければいけないところなのでしょうけれど、仰るように政治家は国民の他罰感情に迎合するばかりで、それを変えようとはしないわけです……
しかし分からないのが、社会保障費を削減することが、まるで自分たちのメリットになるとでも思っている人が少なくないのはなぜなのでしょう。どうしてこういう思考になっちゃうんだろう。
選挙制度が改悪され、さらに総保守化・総右極化した世の中になっていくのでしょうか……。