非国民通信

ノーモア・コイズミ

派遣会社もリストラかな?

2009-02-02 22:56:24 | ニュース

派遣解雇の27歳男性、電車に飛び込み死亡 埼玉(朝日新聞)

 埼玉県蓮田市のJR蓮田駅で29日午前9時25分すぎ、昨年12月20日に栃木県小山市の人材派遣会社を解雇された住居不定の無職男性(27)が宇都宮線の特急列車にはねられ、死亡した。岩槻署によると、男性は死亡する前に親族に「これまでありがとう」と死をほのめかすような電子メールを送っており、飛び込み自殺だったとみている。

 同署の発表によると、ホームには男性のバッグ1個が置かれていた。昨年末に解雇された後、職はなく、住居も定まっていなかったらしい。亡くなったときの所持金は2200円だったという。

 久々にブログ検索してみたら、このニュースを「派遣切り」の一つと勘違いした挙句に自己責任論を持ち出しては「世の中の厳しさに耐え抜いている俺」に酔いしれている感じの人が結構いました。やれやれですね。単に自己責任論で失業者を叩きたいだけの人が、記事の見出しを見ただけで飛びついちゃったんでしょう。

 本文を読めばすぐにわかることですが、派遣契約を打ち切られた元派遣社員の話ではなく、派遣会社に勤務していた元派遣会社社員の話です。派遣切りが横行する中で、解雇された派遣会社の社員が自殺したそうです(そもそも派遣社員に「解雇」はありません、ただ「雇い止め」があるだけです。ゆえに、失業保険の受給が実質的に不可能だったりします、はてブで堂々と嘘を吐いている人もいますが……)。雇い止め、中には契約期間中の違法な雇い止めが横行している昨今ですが、大変なのは派遣社員だけではないのですね。派遣会社で働いている社員もまた、クビが危ういようです。

 海外で車が売れなくなったら自動車メーカーが自社の社員(派遣社員、正社員含め)のクビを切るように、派遣会社だってクビを切ります。言うまでもなく派遣会社の商品は自社が派遣する派遣スタッフですから、これを「雇い止め」という形で返品されようものなら、派遣会社は商売あがったりです。これだけ派遣切りが横行しているなら、突然の契約解除で収入源を失い、経営破綻したり大規模なリストラに走る派遣会社が出ないとおかしいわけです。

 ここで自殺した元社員が勤務していた派遣会社はどうだったのでしょうか? 某自動車メーカーに派遣スタッフを送り込んでいたものの、一方的な契約打ち切りで会社の業績も悪化、担当営業は当然ノルマ未達で新規顧客も獲得できず(派遣会社が新規顧客を獲得できていたなら、派遣切りされた人々には速やかに別の職場が紹介されていたでしょう)、追い詰められた挙句に解雇。そして今に至る、そんな筋書きが見えないこともありません。あくまで憶測ですが、しかしこういうケースは結構あるのではないでしょうか。

 主として日雇い系や製造業では悪質な派遣会社も多く、単に責任回避のために作っただけのグループ内の専ら派遣会社もあります。それだけに派遣会社が悪玉に見える、実際にそうした役割を果たしているケースも多いのですが、その一方で派遣会社と派遣社員は利害をともにする運命共同体でもあります。派遣社員が雇い止めに遭えば派遣会社は売上が落ちる、派遣社員の給与が増えれば派遣会社の売上も増える、そういう仕組みですから。

 勤務時間の算出単位を見直すよう、派遣会社が派遣先企業と交渉してくれたケースがあります。15分単位で計算され、15分未満の残業時間は切り捨てられる契約になっていたものを、5分単位で計算するようにと交渉してくれました。今までは10分間だけ残業しても手当は付かなかったのですが、5分単位の計算ならきっちり残業代が付くようになるわけです。派遣社員からすれば、小さくともありがたい話ですね。もっとも、派遣会社だって遵法意識から動いたわけでもなければ、慈善事業でこうした交渉に当たってくれたわけではありません。5分単位で計算してもらった方が、派遣会社の取り分も増えるからです。欲得ずくの判断です。でも、それでいいのです。派遣会社が会社の利益のために交渉し、それで派遣社員の取り分も増えるなら、ビジネスとしては満足できる関係なのです。ちなみに、交渉の途中で担当営業が「自主的に」退職してしまったので計算単位の見直しの話は立ち消えになっちゃったんですが……

 派遣会社が自社の売上を伸ばすために派遣社員の値段を吊り上げる、派遣会社が自社の利益を確保するため、派遣社員の契約を打ち切らせないよう働きかける、そういう関係を強化していくのも、過渡的な解決手段としては考えられると思います。言うまでもなく個人より会社の方が強いですから、派遣社員が派遣先企業と交渉するより、派遣会社に派遣先企業と交渉させる、こうした方法が活用できるようになるべきですね。派遣社員と派遣会社の利害関係は、本来なら共通するもののはずですから。そうした面では、派遣先企業と派遣会社が利益をともにするグループ会社内の人材派遣、通称「専ら派遣」への規制がもうちょっと論議されてもよさそうなものです。派遣先企業と派遣元企業が結託しないよう、規制していく必要があります。

 

 ←応援よろしくお願いします


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 責任転嫁 | トップ | 会社の扱い方 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も間違って引用してました(滝汗) (ふみたけ)
2009-02-03 00:03:46
>派遣契約を打ち切られた元派遣社員の話ではなく、派遣会社に勤務していた元派遣会社社員の話です。

私もやらかしました。今トラックパッドした内容でお詫び文書いたところです。
ホント、ご時世がご時世だけに問題提起する側も冷静にならないと駄目ですね。
記事の内容とは脱線しますが、本当に助かりました。(陳謝)

派遣会社の話ですが、最近見た派遣会社のコーディネーターと思われる方のブログ見ると、かなり派遣先企業が無理難題吹っかけてる状況があるようですね。
その方曰く「経験者希望というが、それならまず貴方達で育てろ」と憤慨されてましたが、ホントそうなんですよね。
企業側もコスト削減があるんでしょうが、あまりにセコい発想が過ぎたあまり大問題になったのが「派遣切り」だった訳で、つくづくモラルが無いなと呆れるしかないです。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-02-03 23:10:22
>ふみたけさん

 ふみたけさんの記事は全く念頭になかったもので、お詫びまでされてしまうと恐縮です。それはさておき、派遣先企業と派遣会社の担当営業ですと派遣会社側が弱くて派遣席企業の言うがまま、というケースも多いみたいですね。派遣会社が代理人の役目を果たせればいいのですが、実際は強い方に靡く、派遣会社が派遣先企業と結託しがちで、そうなると派遣社員に希望はない……
返信する
企業間の契約ということでは (おおいけ)
2009-02-03 23:15:49
大企業と下請けの中小企業の関係にも似てきますね。
景気が悪くなると、単価の切り下げをかけてくる。
法的には対等の企業でも、力関係があるから、実際は対等ではない。会社存続のためには
受け入れざるを得ない、しわ寄せは社員に・・・
そしてかなわず倒産したら、ネットでは「企業努力が足りない」「そんな契約受け入れなければ良い」
「大企業に甘えるな」とか叩かれるのでしょうけどね。
もちろん、下請けが100%の子会社だとかならば論外ですけど。これだともっぱら派遣と同じ構造になりますね。
しわ寄せはストレートに労働者に。

余談ながら、この手の記事でよく自己責任論を持ち出す「苦労自慢」な人は詐欺のカモの一種だそうです。
苦労や努力の自慢をして他人を見下す人は、内心は自分のそれが十分に報われていないことの不満の表れ、
そこをつつき、苦労が報われるような未来をちょっと体験させて(カネや女)やれば落ちるのだとか。
ご注意を、と言ってやりたいです。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-02-04 22:39:28
>おおいけさん

 下請けが在庫を持つことでトヨタが在庫を抱えずに済むシステムが賛美されているわけですが、派遣会社が人材を抱えることで、派遣先企業は必要なときに必要なだけ人を使える、そういう仕組みですから下請けと大企業の関係に似ていますね。もっとも、在庫の管理にはコストが投じられている一方で人間の場合は……
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ニュース」カテゴリの最新記事