非国民通信

ノーモア・コイズミ

ノンワーキングリッチと呼ばれることのない人々

2010-06-03 22:57:12 | 編集雑記・小ネタ

 先日応募した会社なのですが、役員が一人を除いて全員、社長と同じ名字でした。まぁ中小企業にはよくあることですよね。面接の最後にはお決まりの「何かご質問はありますか?」があるわけで、その際にこの辺を突っ込んでみようかと思ったものです。「御社の役員は全て同姓のようですが、社長様のご家族でしょうか?」とか。

 結局、書類選考だけで刎ねられたので質問する以前の問題でしたが、おそらく役員は社長の親族で占められているのでしょう。別に珍しいことではありません。社長の身内が、しばしば名目だけの役員として名を連ねている、それで給与を貰っているなんてのはよくあることです。決してノンワーキングリッチと呼ばれることのない、それでいて働かない富裕層と言ったところですね。

 あるいは「社長」はどうでしょうか。零細企業ともなると社長がプレイングマネージャーで一番多忙だったり、そうでなくとも社長が管理部門を担っていて「社長兼総務部長兼経理部長兼人事部長」みたいなポジションでやはり多忙なケースもありそうです。逆に大企業の雇われ社長となると、なんだかんだで雇われる立場ですから「上」からの監視に晒されているところはあるかも知れません。ところが中途半端な規模の会社となると、社長が現場に立つ必要もなければ管理部門にもそれぞれ専門家がいる、決裁権限も各部門長に委譲していて、「社長の仕事」が宙ぶらりんになっている場合もあるはずです。

 昔いた会社の社長は、しょっちゅう倉庫で出荷作業を手伝っていました。単に社長が顔を出したくてやっているだけのことで、出荷作業が忙しいと訴えれば応援に来てくれるとかではなく、あくまで社長の暇つぶしです。出荷作業が暇なときでも、社長が暇ならふらりと倉庫に訪れ、「サボってるんじゃないよ!」と言い出すのが常だとか。そして社長の気が向けば、各部門を散歩して回るわけです。当時私が在籍していた営業部にも前触れなしに訪れては、仕事のやり方についてあれこれ難癖付けていくのが日常でした。社長が帰った後では、社長子飼いの営業部長が「おまえのせいで怒られたじゃねぇか! どうしてくれるんだこのバカヤロウ!」と激高するのもお決まりのパターンでしたが、ともあれ社長は暇だったわけです(私の退職後、社長を退いて「会長」になったみたいです)。

 ところが、社長よりもずっと暇であろう人もいたのです。立場上は「監査役」とのポジションで、やっていることはと言えば社長と同じ、各部門を散歩して、仕事のやり方に難癖を付けていくだけです。まぁ現場からは見えないところで書類に目を通したりしていたかも知れませんが、だからといって人並みに働いていたというわけではありません。何しろ社長と違って「監査役」は月に4~5回程度しか出社しませんし、出社するのも昼過ぎからでしたから。何とも羨ましいご身分ですね。こういう立場の人も決してノンワーキングリッチとは呼ばれませんが、紛れもなく「働いていない富裕層」と言えます。

 この「監査役」の人、聞くところによると元大手メーカーで結構な地位にあった人なのだそうです。そのメーカーの製品は私が在籍していた会社の主力商品の一つでしたし、メーカー系列の販売会社は主要仕入れ先の一つでした。ロクに働きもしない(というより仕事の邪魔しかしない)人を「監査役」として厚遇するのは、有名メーカーの元幹部を役員に据えることで会社の「格」を上げたいとか、取引量の多いメーカーとの関係を良好なものにしたいとか、そういう理由があってのことなのでしょう。まぁ会社で仕事をしなくとも、在籍しているだけで会社に貢献している部分もあったのかも知れません。

 しかし、そういう貢献の仕方を認めるのなら、つまりネームバリューのある企業の退職者を厚遇で迎えることによって組織の格を上げる、人脈を広げると言ったことが「民間では当たり前」のこととして許容されるのなら、中央官庁の人間を厚遇で迎え入れるのもまた同様に「民間では当たり前」の発想として許容されてもおかしくはないですよね? しかるに、民間企業における「本当に」働いていない富裕層には決して非難の声を向けない人ほど、天下りには否定的だったりするものです。ダブスタなんか気にするような人たちではないのでしょうけれど……

 

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7 コメント

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むしろ理想的な生き方ですよね。 (アダモ)
2010-06-04 11:01:42
 拝啓、非国民様。働かない富裕層=ノンワーキングリッチですか。万人の理想ですよね。働かなくても食べていけるのですから。むしろ、ノンワーキングリッチになりやすい社会になって欲しいものです。少なくとも、ワーキングプアが大量に生まれたり、下手をすればノンワーキングプア(http://bogusne.ws/article/75929754.html)にすぐさま転落してしまう社会は真っ平。
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同族・家族経営 (ショウ)
2010-06-04 20:32:40
こんにちは。
ノンワーキングリッチ、多いですよね。

私のバイト先のスーパーも家族経営です。「会長」や「専務」や何やらの肩書きで単純な仕事をしてますが、これでいくらもらってるんだろうといつも思います。同じように働いているパートと同じでは絶対ないでしょう。
しかも、「会長」は気に入った従業員にしか挨拶の返事をしません。なので、私も挨拶しないですw。

最近競合店ができて、「このままじゃ給料が支払えない。。。」と社長が言ったらしく、それを聞いて危機感を覚えたパートのおばちゃんたちが、自主的に彼女らの時間外労働に残業代がつかないように調整をしています。しかし先日、社長が新しい車で出勤していたそうです。。。
人を馬鹿にしていますね。

私は年齢が違うからか、そういう話は一切回ってきてないのでまだましですが、おばちゃんたちにしてみれば、一度そう言ったからには撤回しにくいでしょう。旦那さんの仕事がない人もいるのに。。。


最後になりましたが、非国民様のお仕事探し、うまくいくといいですね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-06-04 23:45:03
>アダモさん

 ところが、しばしばノンワーキングリッチと呼ばれるのは、働いていないわけでもなければ、それほど裕福でもない人たちだったりするのです。「本当に」働いていないにもかかわらず高給の人を守るために、中間層をノンワーキングリッチと呼んで非難する手合いがいるものでして。

>ショウさん

 応援ありがとうございます。もう失業保険が切れてしまうだけに、また派遣の仕事を探すしかないかという状況ではありますが……

 それはさておき、給食費とか健康保険料の未納者には「高級車に乗っている人も~」みたいな非難の仕方が定番化していますけれど、本当に問題があるのは、従業員に払うべき賃金や収めるべき社会保険料を出し渋っている雇用主なんですよね。不況を「追い風」にして人件費を抑え込む一方で、雇う側は安全なところに立っているケースも多いのでしょう。
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Unknown (HANAKO)
2010-06-04 23:54:40
あるあるw私の実体験ですが、中小企業というのは、倒産時従業員は、はした金で追っ払っても、自分たちの取り分は確保してしっかりノンワーキングリッチの座は確保している物です。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-06-05 16:01:05
>HANAKOさん

 従業員もろとも自爆する雇用主もいる一方で、自分だけは逃げおおせる人もいますよね。しかるに、ノンワーキングリッチと呼ばれて非難されるべき人ほど、社会的な批判からは免れているような気がしてならないのが何とも……
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2010-06-19 08:34:02
講談社から出るらしい「フリーライダー」という本でも「ただのり社員」がやり玉に上げられていたわけですが、「社員」なんですよね。自分以外の働く人は貰い過ぎと思う傾向がある一方で…立場の近い人により嫉妬しやすいのでしょうか。
自分が他人の給料を無駄だと思う時、他人もまた自分の給料を無駄だと思うのだということを知るべきでしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-06-19 11:03:23
>ノエルザブレイヴさん

 「雇用主以外の誰か」を責めるとなると、手近な人が対象になりやすいところもあるのでしょうかね。仰るように周りも同じことを考えている、自分が他人の給料をムダと思うのと同じように他人も考えている、そういう連鎖が延々と続いているようです。
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