都は10日、職員16万5293人(警視庁、東京消防庁、都教育委員会、公営企業職員を含む)に冬のボーナスを支給した。
1人当たりの平均支給額は92万4971円(平均43・0歳、2・15カ月分)で昨年に比べ1・1%減少。
特別職の支給額は、石原慎太郎都知事が372万574円と10%の減額、都議が248万1022円。支給総額は1465億円だった。
支給月数では、昨年度の4・5カ月から今年度は4・15カ月と平成15年度以来6年ぶりに減少したが、民間シンクタンクの予想による民間企業の今冬のボーナスは平均36万6千(前年同期比13・8%減)~39万2923円(同7・4%減)で、ボーナスの官民格差を鮮明に示す結果となった。
さて、産経新聞ではこのように報じられているわけですが、こうしたノリは別に産経新聞に特有のものではないでしょう。どこの報道機関でも、だいたい似たようなことを垂れ流していますから。敢えて産経新聞を引用したのは、日頃からネタを提供してもらっている感謝の気持ちを込めただけのことです。別に産経新聞の今冬ボーナス平均額が30万円台に落ち込むとの噂を聞いて同情しているわけではありません。私なんかボーナスどころの話じゃありませんし。
公務員に冬のボーナス 国、6.6%減の平均64万7200円(日経新聞)
全国のほとんどの公務員に冬のボーナス(期末・勤勉手当)が10日、支給された。総務省によると、管理職を除く一般行政職の平均支給額は、国家公務員(平均年齢35.5歳)が約64万7200円で、前年同期に比べ6.6%の減額。地方公務員(同36.6歳)は約60万7000円で、7.3%減った。減額は民間調査を基にした人事院勧告などを受けた措置。
ボーナス、20年前の水準に 今冬平均70万円、日経最終集計(日経新聞)
日本経済新聞社が10日まとめた2009年冬のボーナス最終集計(1日現在)によると、1人当たりの税込み支給額(加重平均)は70万1571円と前年比14.81%減り、20年前の水準まで落ち込んだ。過去最大の減少率となり、平均支給額は12万円減った計算。自動車や電機など基幹製造業が軒並み2割前後のマイナスとなり、消費は一段と厳しさを増しそうだ。
……で、こちらは日経新聞の報道です。日経新聞だって官民の給与や賞与を並べて論じる際は、公務員の給与の方が高くなるように条件を変えて来るのが普通だと思いますが、バラバラに公表する時はこんなものです。国家公務員の平均が64万で、地方公務員が60万、そして民間企業(公務員も含む?)の平均が70万円です。中立的な立場で算術平均を出した場合は、こういう結果にしかなりません。
仕事を探したことがある人なら当然わかることだと思いますが、給与の地域格差は結構なものがあるわけです。日本中どこでも一緒に見えるマクドナルドでも、都心と田舎ではバイトの時給にも雲泥の差があります。都道府県別の一人辺り平均所得を見ても日本全国では300万円程度が平均なのに、東京は平均450万、沖縄は200万程度です。東京で働いている人の給与が高いのはそれこそ「民間では当たり前」の話で、都の職員の賞与が平均より高いのも民間企業準拠で賞与水準を決めているなら至って自然な話です。それなのに「官」の給与水準の目安として都職員の算術平均値を持ち出すのは、何か意図するところがあってのものと判断されるべきでしょう。
一方で民間企業の平均額は、産経新聞の報道によると36~39万円だそうです。日経新聞報道の半額程度ですね。官民の格差(公務員の方が給与が低く抑えられている!)を論じる前に、産経新聞が出した数値と日経新聞の数値の格差を考えた方が良いと思います。産経新聞は「民間シンクタンクの予想」を元に平均額を報道しているようですが、まさか産経新聞社のボーナス支給額を基準にして民間企業の平均を「予想」した結果ではないでしょうね?
財界との繋がりの深さからすれば相応の情報源を持っているであろう日経新聞の「集計」と違って産経報道は「予想」と明言されています。だから単なる妄想に過ぎない、「公務員はもらいすぎだ」と煽るためだけのでっち上げである可能性も否定はできません。ただ、ある程度のデータに基づく予想であったとしても、例えば正社員だけではなくパートや派遣社員、個人請負まで分母に含めて「平均」を算出したものではないかと推測されます。それはそれで必要性のあるデータですが、それをやるなら同様に「官」の領域でも非正規職員を統計に含めないといけませんよね。正規職員だけを統計の対象にして非正規職員の存在を無視して平均を出したがるのは、ある種の差別的取り扱いですらありますし。
それだけに一緒くたに「公務員は貰いすぎ」という報道にはドン引き状態でいます。
また、管理人様が指摘されたように、非正規職員の存在を無視してはいけないです。同じ仕事をしていても給与が違うわけですから。
地域でもバラツキがでることは十分あり得ますので。
それでも、よく言わない人はいるでしょうけど。
今でこそ公務員給与は民間企業よりも「少し低い」程度ですが、私が小学生の頃でしたら、両者の給与には歴然とした差がありました。公務員は給料が少なくて可哀想、と言われていた時代のことです。その後、民間企業の給与水準が下がり続けて今に至るわけですが、まぁ現状も歴史も知らないで公務員叩きに明け暮れる人は多いですよね。
http://kkmmg.at.webry.info/200911/article_6.html
2 地方公務員のボーナス平均というとき、普通管理職も含むものになっている
http://kkmmg.at.webry.info/200912/article_11.html
3 東京都職員(のほとんど)は地域手当により、基本給に17パーセント上乗せされたものを基礎にボーナスを計算する
という三重のミスリードが、「3倍」という意味のない数字を生み出したものと思われます。
さて、ふと民間の賞与平均って、「出る企業」の平均なのかな?ということが頭をかすめたんですが。
てことは企業間の格差はなおさら酷いことになってるのでは。つまりこの景気下にあって「勝ち組企業」の賞与なんてものは、公務員のそれとは比べ物にならないとか・・・そんな危惧を持ちました。
やっぱりそうでしたか。官民の給与比較でも、「公務員は正規職員のみ」「民間企業はパートなど含む」形で平均値が並べられますので、今回もたぶん同じ手だろうなと思ったのですが、相変わらずみたいですね。条件を揃えない比較に意味など無いのですが、作られた「官民格差」を煽り立てる傾向は不変のようです。
>kuronekoさん
まぁ腐っても新聞社ですし、自称といえど「全国紙」ですから中小企業に比べれば健全経営なのだと思います。本物の低賃金層からすれば、産経の悲鳴は甘えと断じられるレベル?
>ベースケさん
おそらくは正社員の平均だと思われますが、正社員でもハローワークで紹介されているような仕事では賞与ナシなんて珍しくないですからね。ブラック企業で働いていた頃は賞与8000円なんてこともありましたし。一方で本物の優良企業が平均値を大きく引き上げているのでしょう。それに比べれば「官」の世界は格差の少ない、あるべき賃金体系だと思うのですが……
3番目のコメントのリンク先記事を書いた人です。
少しでも、正しい情報が伝わったのなら、当方、記事を書いたことが、報われます。
(もっとも、新聞各紙さんが、ミスリードかどうか、私には判断できませんが)
ありがとうございました。
まぁメディアによっては官と民で条件が異なることを、携帯電話の料金広告だったら行政指導の対象になりそうな位置に書き添えているようですから、報道する側としては「ミスリードするつもりではない」と逃げ道を作ってあるつもりなのかも知れませんね。でも読者や視聴者は、そんなこと気にせず公務員給与が高いと信じ込む方を選ぶのではないかとも思います。
私、平の40代中盤の職員ですが、そんなにもたえません。主任級以上だと、一般のボーナス支給額に加算される制度や扶養者がいると加算されます。
主任以上だと、給与表で決めているほかにも、月々に手当までついています。まだ、記載したいことは、多々ありますが、こうした実態も知って欲しいと思い投稿しました。