非国民通信

ノーモア・コイズミ

就活生は社会を写す鏡

2015-03-04 23:48:06 | 雇用・経済

1次面接に進める確率が3倍違う「証明写真」 見た目の違いは歴然(SankeiBiz)

 そうしたなか、第一志望の会社に就職するためのアイテムとして人気を集めているのが、「ヘアメイク付き証明写真」だ。

(中略)

 「就職活動に臨む大学生の間では『証明用の写真を撮るのなら、ヘアメイク付きの証明写真』が合言葉になっています。大学の就職活動のセミナーでも、そのように指導され、『エントリーシートを出してから1次面接に進める確率が3倍にアップする』という話も聞きます。もしも自分が企業の採用担当で、最後にどの人を残そうかと迷った場合、やっぱり写真の見た目で決める気がします。自分の一生がかかっているわけですし、多少のお金がかってもヘアメイク付きのプロのカメラマンに撮影を頼みたいという友人が大勢います」

 

 「人は見た目が9割」なんて本が、ちょっと売れたこともありました。研修屋が好むヨタ話の一つに、「メラビアンの法則」なんてものがありまして、これも「見た目が9割」みたいなことを言っています。もちろん根拠の無い話ではあるのですが、まぁ根拠なんて必要としないのが日本のビジネスの常識でもあるでしょうか。世界に名をとどろかすような日本の一流メーカーでも、やれマイナスイオンだのプラズマクラスターだの、コラーゲンだの空間除菌だのと、実にいかがわしい製品を盛んに売り込んでいるわけです。中には消費者庁からダメ出しを食らうケースもありますが、それを意に介さないのが日本におけるビジネスの慣例というものですから。

 ……ただ見た目で9割が決まるかというのは根拠の無い話でも、日本の人事担当者が見た目でしか人を判断できていないかと問われれば、それはそうなのかも知れないな、と頷ける話です。いつぞやのテレビの企画では、本物の大学生と無名の俳優やモデルの写真を企業に送りつけたところ、書類選考を通ったのは専ら俳優/モデルの方だったそうです。少なくとも日本の人事担当者は、見た目で人を判断するものなのでしょう。だからこそ、上に引用したような見た目を飾り立てるビジネスも栄えるわけです。その結果として日本の経済もまた栄えるのなら日本的採用も一理あると言えますが――逆に衰退しているのは、いったい何故でしょうね?

 前に勤めていた会社で契約を打ち切られる前、同じ部署の人の昇進祝いで役員の人と隣になりました。その人は面接を担当することも多いのですが、「みんな送られてきた写真と顔が全然違うんだよ」と笑っていたものです。ヘアメイク云々よりも、もっと手っ取り早くフォトショップで加工した写真を履歴書に貼り付けて送ってきた人だって多いのでしょう。ただ、写真と顔が違うという理由で落としますかと尋ねたところ、そこは言葉を濁されました。ならば全く飾っていない写真の人と綺麗な写真の人、書類選考を通すのはどっちですかとも聞いてみましたけれど、苦笑されるばかりでしたね。まぁ、そういうものです。

 どこの国でも、純粋に「勉強するために」大学へ進学する人は多くないはずです。勉強して大学へ行くのは、学校を出た先で機会をつかむため、その大半は「より良い仕事に就くため」でしょう。勉強するために勉強するような勉強好きは、どこの国にだって多くはいません。そして日本の大学生は勉強しない云々と言われるところですけれど、でも根本的には「よく勉強する」国の学生と同じではないかと私は思います。つまり、勉強をするのもしないのも結局は「大学を出た後」を考えた上での最善手なのではないか、と。

 どこの国の人でも普通は、より良い仕事に就くために大学に入るわけです。しかし、入った先はどうでしょう。大学での成績を厳しく問うような文化圏であれば、単純な向学心からではなく「就職のために」大学での勉強に励むことになります。しかし大学での成績は不問で、ただ卒業した大学のネームバリューだけしか見られないような国(つまり我が国のことですが!)では何が「就職のために」最良でしょうか。名高い大学に入ることは就職を考える上で重要です。しかし大学で勉強することは? より好待遇の職を得るために日本で必要なのは何なのか、大学の成績と容姿のどちらを見られるのか――それが理解された結果として昨今の日本の大学生の姿があると考えられるべきです。

 

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