大手企業の利益温存加速 100社調査、内部留保99兆円(共同通信)
大手企業100社が、利益のうち人件費などに回さずに社内にため込んだ「内部留保」の総額は2012年3月末(一部2月末なども含む)時点で総額約99兆円に上ることが7日、共同通信の調査で分かった。
リーマン・ショック直後の09年3月末からの3年間で10%増。労働者の賃金は下落傾向が続く中、企業が経営環境の変化に備え、利益を温存する姿勢を強めている実態が浮き彫りになった。
デフレ脱却の鍵は、政府が6月に示す成長戦略などで、企業内に厚くたまったお金を前向きの投資や賃金に振り向けさせる政策を打ち出せるかにありそうだ。
2012年3月末の段階で、大手企業100社の内部留保の総額が99兆円に到達したそうです。おそらく今頃は既に100兆円を突破していることでしょう。3年間で10%増とのことですから、年平均で3%強、増え続けていることになります。僅か2%のインフレ目標の設定ですら、「ハイパーインフレがやってくる」と、したり顔で語る人も目立つ我が国ですが、2%の目標設定ですらハイパーインフレ云々というのなら3%強の継続的な増加はどういう扱いになるのでしょうね。
なお内閣府の統計によれば日本の名目GDPの前年度比は以下の通りです。
2008 -4.6%
2009 -3.2%
2010 +1.1%
2011 -2.0%
2012 +1.4%
日本経済が衰退を続ける中、内部留保ばかりが増え続けていることが分かると思います。
そして同様に内閣府の統計によると、雇用者報酬の推移は以下の通りです。
2008 -0.5%
2009 -4.4%
2010 +0.5%
2011 +0.1%
2012 -0.0%
日本で働く人の取り分は増えない中で、やはり内部留保ばかりが増えていることがよく分かります。
また日銀の資金循環統計によると、非金融法人の現金・預金資産は以下の通り。
2008 +0.2%
2009 +3.5%
2010 +3.8%
2011 +3.9%
2012 +3.5%
デフレが続く中、当然ながらGDPも伸びない、被雇用者の賃金は抑え込まれたまま、そんな中でも内部留保は増え続けている、大手企業100社の内部留保が年平均3%超で増加を続ける中、非金融法人の現金・預金に至っては4%に迫る勢いで増え続けているわけです。日本のどこでお金の流れが滞っているか、何が日本経済を停滞させているのはどこかは自ずから明らかと言ったところでしょうか。
「ギリシャのようになっても良いのか」みたいな脅しをかけて菅は消費税増税を迫ったものです。ではギリシャが実際に何をやっていたかと言えば、法人税を下げて代わりに消費税を上げていたわけです。自殺的な経済政策が改革の名の下に続けられてきたのが日本と言えますが、ギリシャの真似もまたそこに含まれるのかも知れません。昨年末の政権交代で金融や財政政策の面ではようやく常識的な路線への回帰が見えてきたところですけれど、相変わらず法人税を下げよと説く声は喧しい、しかし法人税の低さをウリにして資本の呼び込みを続けてきたキプロスの惨状は言うまでもないでしょう。自前の経済基盤に乏しいがゆえにタックスヘイブンまがいの法人税率で外国資本(というより課税逃れに勤しむ企業)を招き入れることに熱心な国の法人税率を比較対象としては「日本の法人税は高い」と強弁する論者も目立ちますけれど、全く以て馬鹿げた話です。
もし日本国内の企業が設備投資や雇用拡大に積極的で、そのための資金を必要としているのなら法人税減税は多少の意味があるのかも知れません。しかし、投資先を見つけることができずにストックを積み上げるばかりの事業者を減税対象としたところで、税収が下がる以外に何の効用があるのでしょうか? 日本で働く人の取り分を減らし、非金融法人の現金・預金残高を増やすこと、労働者から企業への所得移転を進めることこそ経済成長と定義するのなら、日本のこれまでの経済政策及び税制策は正しいと言えます。しかし、企業へのストックではなく国全体でのフローの拡大を是とするのなら、やるべきことは全くの真逆であったと言うほかありません。
A.収入は30万円、支出も30万円で特に貯金はない生活
B.収入は20万円、支出は18万円で毎月2万円貯金できる生活
このAとBがあるとして、Bの方に豊かさを見出しているのが日本的経営なのだろうなと思います。結局のところ法人税を下げたところで、内部留保を増やすスピードが上がるだけでフローが増えるわけではない、法人税減税は(一般的な意味での)経済成長を考える上では極めて無駄が多いやり方です。少なくとも現代日本に適したやり方ではない、と。むしろ有り余る資本の使い道を見いだせずに内部留保、中でも現金預金を積み増すばかりの経済界に代わって、国が資本を使ってやるべきだと言えます。金は使う意思がある人に渡されるべきもの、貯蓄性向の強い企業に眠らせておくのではなく、法人税を高くして公的支出を増やす方が、日本ではずっと効率的な経済政策です。
給料はおんなじ、
残業規制がかかって実質給料目減りです。
円高不況で内部保留は使い切ったと思い込んでいたら
なんと、こんなことになっていたとは驚きです。
むしろ不況を大義名分に労働者の賃金を抑え込み、その分だけ内部留保、特に現金を貯め込んできたのが日本の企業ですからね。政権が代わって賃上げ要請など悪くない動きもありますけれど、その先に踏み込めるかが問われるところです。