女子も武道、男子もダンス 中学で「必修」に 中教審(朝日新聞)
学習指導要領の改訂を検討している中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の専門部会は4日、中学の保健体育で武道とダンスを男女にかかわらず、1、2年生で必ず履修すべきだとする案をまとめた。中教審の教育課程部会での検討を経て、文科相に答申する。早ければ11年春から、男子がダンスをし、女子が柔道や剣道をする姿がどこの中学校でも見られることになる。
改正教育基本法で「伝統と文化を尊重」の文言が入ったこともあり、「中学から武道を必修にすべきだ」との意見が部会の委員から出ていた。中教審は保健体育の授業時間を増やす方向で検討しており、より多くの領域を指導できる見通しが立ったことも、今回の案に影響している。
なんでしょうね、学力低下とか騒いでいた割には、保健体育の授業時間を増やす方向で検討しているとか、学校で体育なんかやっている暇があったら勉強した方が良いんじゃないでしょうか? まぁ、日本は学歴社会である以前に体育会系社会、各種世論調査でも日本の子供は中韓やアメリカと比べると向学心が低い代わりに運動への意欲は突出して高かったりもします。日本のお国柄にあった方向性で進めていると言えるのかも知れませんね。
ミランのコーチに聞く選手育成論
第1回:イタリアの子どもと日本の子どもの違いは?
学校教育に関して、日本の子どもは運がいいと思います。日本では体育の時間にたくさんスポーツをできるけれど、イタリアの子どもは教育制度のせいで運動があまりできないからです。このことがもたらす結果は、サッカーに関しては顕著です。同じ年齢なら日本の子どもの方が運動神経もいいし、テクニックもあるし、ボールタッチも柔らかい。これはプロを目指すサッカー選手のキャリアに役立ちます。
日本人の体力が低下していると言われますが、2006/7年度の欧州チャンピオンであるACミランのコーチに言わせればイタリアの子供よりも日本の子供の方がよく鍛えられているようです。そしてこれは学校教育の成果だと。勉強をするところであるヨーロッパの学校と違って日本の教育は体育重視だからでしょうか、この辺の実情は頭に入れておくべきですね。
しかしまぁ、「伝統と文化を尊重」で武道とダンスが必修化とは意図を図りかねるところもありますね。戦前派にしてみれば柔道や剣道への憬れがあるのかも知れませんが、ダンスはよく分かりません。でも小学校体育の中心を占めているマスゲームの延長でしょうか? むしろ伝統や文化云々を口にするならば、武道なんぞよりも衆道の方が良いような気がします。武道よりも衆道の方が遙かに長い歴史を持つ日本の伝統であり、世界に冠たる日本の文化、現代日本人が大好きなサムライの文化でもあるのですから。
別に男子がダンスをやって、女子が武道をやってもいいと思うのですが、敢えて必修にする必要があるかは疑問です。ダンスがやりたい男子に、武道をやりたい女子に門戸を開くというならば歓迎できるのですが、必修と言うことでダンスが嫌な男子も女子も、武道が嫌な男子も女子も、必ずやらねばならないわけです。ふむ、武道とダンスを通じて、どんな子供を育てたいのでしょうか?
たとえば、研修と称して社員を自衛隊に入隊させる民間企業が非常に多いわけですが、この意図は何でしょう? 社員にライフルや戦車の扱い方を学ばせたいのでしょうか? そうではなく、民間企業としては社員に自衛隊的な価値観、軍隊的な価値観を叩き込みたい、そういう思惑があっての事ではないでしょうか。社員には自社の兵隊になって欲しい、そんな願いがあるに違いありません。
そこで、武道の必修化です。私の好きな「格闘技」ではなく「武道」であるところがポイントのような気がします。自衛隊「研修」と同じように、そこで学ばせたいのは戦う「技術」ではなく、もっと他のもの、すなわち「武道」の価値観ではないでしょうか。剣術の後に創られた剣道の「道」、柔術の後に創られた柔道の「道」、そんなものに妄想と憬れを持つ人の意向が強く反映されているような気がします。強さや技術ではなく精神論、とりわけ日本の体育会系特有の上下意識、上と下が固定されて動かない関係、そんなものを学ばせたいのでしょう。
どんな子供に育てたいのかその裏を読み取っておいでのようですが、はっきりいって現場は・・・
そんなの関係ねぇ!(小島よしお風)
だと思われます。友人で先生の卵の奴がいますが、そいつをみるかぎりでは、こんな子供に育てたいとか思って教育をする奴いないと思いますよ?
何かを教えたら予想と違うことが返ってくるのが人間です。それがおもしろいから先生やるやつもいるということをどうか知っておいて下さいね。
現場は現場で「お上」の意向とは裏腹に動くものですが、その現場への介入を強めているのが昨今の教育行政でもあるのです。現場に対する理解などない教育委員会が、妄想に基づいて現場に指示を出す、そして教育委員会からの指示に従わなかった現場の教員が処分されたりもします。
とりあえず今回は教育現場への批判ではなく教育行政への批判であることをご理解いただきたいかと。
そうですねぇ、例えば会社の研修でも、実際の仕事で使う技術的なものを教えるよりも仕事に向かう姿勢だとか「社会人の常識」だとか、そういう精神的なものを刷り込もうとするタイプばっかりですよね。やはり「術」よりも「道」が好きなんでしょうか。格闘技ファンの私としては柔道ではなく柔術だったら是非やってみたいくらいなのですが、教育行政の期待するのはやはり格闘の技術ではなく精神論なのでしょう。
>遊楽庵さん
お上の教えを叩き込むには頭だけではなく、体に教え込もうと言ったところでしょうか? 言葉ではなく武道のを通じて不動の上下意識を刷り込んだり、あるいはダンスでも動きを規格化して、あらかじめ決められたとおりに動くことに慣れさせようとか、そういう意図も読めるかも知れませんね。
ドイツ人は「~学」が好き、象を置いておけば「象学」という学問分野をつくる、なんてジョークがあるのですが、明治以降の日本人は「~道」が大好きですね。剣術が剣道に、柔術が柔道に、武士道、華道、相撲道などなど、色々なものに「~道」が付くようになりました。でも、江戸時代以前は「~道」なんて代物は「衆道」くらいしかなかったと思うのですが、変われば変わるものなんでしょうね。