非国民通信

ノーモア・コイズミ

何もかも経団連の言いなりに

2006-12-12 23:07:12 | ニュース

「残業代ゼロ労働」導入を要請 経団連会長、厚労相に

 日本経団連の御手洗冨士夫会長と柳沢厚生労働相らが11日、東京都内のホテルで懇談し、労働法制見直しなどについて意見交換した。経団連側は、一定条件の会社員を労働時間規制から外し残業代を払う必要がなくなる「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入のほか、派遣労働者の期間制限や雇用申し込み義務の廃止などを要請した。

 昨夜はワーキングプアの話題、深刻な貧困層が少なからず存在しているわけですが、それに比べればまだ裕福なはずのホワイトカラーにも絶体絶命の危機が迫っています。そもそもアメリカで先行導入済みのホワイトカラー・エグザンプションといったら適用されるのは年収10万ドルを超えるクラス、エグゼクティブクラスとは言わないまでも相応に裕福であり、かつ裁量権を持つ階層に適用されている制度です。しかるに日本で提案された際の条件は年収400万以上、新卒でまともな会社に入った人なら大半が当てはまる数値です。厚生労働省の統計によれば平成15年度の平均所得は579万円(これでも7年連続低下中ですが)、その平均である579万円を大きく下回る年収400万円にラインを設定しているあたりでもう滅茶苦茶です。

 特に若年層に多いわけですが、貧困層の中には中流階級に奇妙な敵意を向ける人が少なくありません。俺はこれだけしかもらえないのに、あいつらは俺の倍以上もらいやがって、許せん!・・・といった感じなのでしょうか。本物のトップはそれよりも遙かに巨額の報酬を貰い、かつ彼ら貧困層の賃金を決めているのも中流ではなく特権階級であるわけですけれどね。

 で、特権階級に対してではなく中流階級に敵意をむき出しにしている、中流階級が自分たち同様に没落すればいいと願う貧困層が少なくないわけです。彼らはこのホワイトカラー・エグザンプションをどう見ているのでしょうか。年収300万以下で昇級の見込みのない貧困層から見て、年収400万以上を対象に襲いかかるこの制度はどうでしょう? ざまぁみろ、そう思っていた人もいるのではないでしょうか。ところが現実は甘くありません、案件には具体的な数値は盛り込まれず代わりに使われた文面は「年収が相当程度高い」と。相当程度っていくらでしょうか? 生活保護水準を上回る程度、でしょうか。解釈は自由です。下手をすれば年収200万以上からホワイトカラー・エグザンプションが適用されることになるかもしれません。貧乏人だって決して安心はできませんよ!

 それからもう一つ「派遣労働者の期間制限や雇用申し込み義務の廃止」これも見過ごせません。たしかに、これを推し進める雇用者側の口実の中にも一分の理はあるのです。派遣労働に期間制限が設けられているのは非正規雇用のまま固定化してしまうのを防ぐため、期間が過ぎれば直接雇用に切り替えることで不安定雇用から脱却できるように、そんな意図のある制度なのですが、逆にこの制限のために一定期間の過ぎた派遣社員があっさりと切り捨てられてしまうことが少なくありません。派遣労働の期間がなければ派遣社員が期間切れとして放出されることが減り、派遣社員としてでよければ働き続けることができる、雇用申し込み義務がなければ雇う側も躊躇なく積極的に採用できるようになる、そういう可能性もあるわけです。ですから、今回の見直し案の結果として派遣社員が損害を被る可能性もあれば恩恵を受ける可能性もあるわけです。どっちの可能性が高いかはご想像にお任せしますが。

 ただ、派遣社員にとって法改正がプラスの可能性とマイナスの可能性の双方を含んでいるのに対し、雇用者側にとってはどうなのでしょうか? 派遣労働の期間制限がなくなれば企業はいつまでも安価な派遣社員を使い続けることができます。制限がなければ仕事を覚えた派遣社員を放出する必要性がなくなるわけです。そして雇用申し込み義務がなくなれば高コストの社員を増やす必要がなくなり、人件費を低いまま、解雇が容易な状態で人員を確保し続けられるわけです。派遣社員側には正負両側面のある制度改正案ですが、雇用者側にとっては純粋にプラスの面しかない、企業側が全くリスクを負わない改正案なのです。

 ホワイトカラー・エグザンプションも理論上は労働者側に労働の柔軟性を与えるという点でプラスの影響を与える可能性もあり得るわけです。言うまでもなく、残業代がカットされ、仕事の時間だけが際限なく増えていくマイナスの可能性もあり、こちらの方がどう見ても濃厚ですが、一応は労働者に対し正負の両面があるのです。しかし雇用者側から見れば? やはり企業側にとってはプラスの要素しかない、企業が損をしない制度ではないでしょうか? 損になるかもしれないけれど得になるかもしれない、リスクを冒さなければ成功はできないよ、と特権階級は労働者層に囁きかけ、制度改正を正当化します。しかしその一方で、経団連のお偉方、大企業の経営者層は何のリスクも犯さず、一方的に自分たちが有利になれるルールを作り続けています。


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