非国民通信

ノーモア・コイズミ

菅が就任すべきではなかったのは

2010-07-19 23:01:22 | ニュース

「財務相に就任しなければ…」=首相、参院選敗北でぼやき(時事通信)

 菅直人首相が参院選での民主党敗北に関し、「自分が財務相にならないで国家戦略担当相のままだったら、もっと地方の声を聞いて、目配りしてメッセージも伝えることができたのに」と周辺に漏らしていたことが16日、分かった。政府関係者が明らかにした。

 首相は敗因について、稲盛和夫内閣特別顧問に「消費税問題をあげたから」と語るなど、自らの消費税発言が影響したことを認めている。野党側からは「首相が増税を目指す財務省の官僚に取り込まれた」と批判する声も出ていたが、首相の「ぼやき」は、財務相に就任しなければ消費税発言もなかった、と悔やんでいるように受け取れる。

 こうした首相の姿勢に対し、民主党内からは「具体的な議論をせず、消費増税を打ち出したのは安易だった」「やけくそになって変なことを言わない方がいい」などの批判が出ている。 

 民主党内から批判が出るのももっともな話です。公の場での発言ではないにせよ、トップの考えることがこれでは党に所属する議員達もやりきれないでしょう。曰く「自分が財務相にならないで国家戦略担当相のままだったら、もっと地方の声を聞いて、目配りしてメッセージも伝えることができたのに」とのこと。正直、菅が国家戦略担当相のままだったとしてもロクなことにはならなかっただろうと確信しているのですが、もしも本当に国家戦略担当相のままだったら戦略は変わっていたと本人は言いたいのでしょうか。

 菅の消費税増税論に関しては「首相が増税を目指す財務省の官僚に取り込まれた」との批判が、野党側だけでなく世論上にも少なからず存在しているわけです。ただここで財務官僚を黒幕として、菅をそれに屈した背信者のように見るとしたら、色々と誤りがあるように思います。一国の全体を見渡さねばならない立場にある首相としては、この不況時に逆進課税を強めるのは愚行としか言いようがないですけれど、より担当範囲の限られた立場からすればどうでしょう? 政府の財政を管理するのが役目である立場から見れば、歳出削減と増税による財政再建は、その役目の範囲内においては間違っていないはずです。

 財務官僚が財務省の立場でモノを言うのは、別に筋違いではありません。財務省とは異なる立場(財政再建優先で予算を削られては困る立場)のことも考えろと言いたくなるフシはあるにせよ、その「異なる立場」を代弁すべき部署は財務省とは別個に存在しているのですから。財務官僚が財務省の目線で提言する――たとえば消費税増税すべき等々――としても、それは職務に忠実なだけであり、一方の意見と言えます。問題なのはそうした財務省目線の提言が存在することではなく、国政全体を見渡すべき立場にいる人間が「一方の意見」ばかりにとらわれ、それとは異なる立場の見解を検討することを忘れてしまうことでしょう。

 菅が財務相のままであったなら、消費税増税論も立場上の発言として無理からぬところがあったと、まぁ情状酌量の余地がないでもありません。不況時には財政よりも優先すべきことがいくらでもあるだけに、その意見を聞き入れるべき時期ではない、再分配という面では単に「取りやすい税(=消費税)」では問題がある等々と思うわけですが、財政を担当する立場の人間が他所の事情よりも財政事情を中心に語るのは、立場上は致し方ないものと言えます。しかし、繰り返しになりますが総理大臣は別です。総理たるもの、「全体」に目を向けなければならないわけで、それはもちろん財務省の都合だけではなく、他の担当部局の声も聞かなければならない、その中で適切なバランスを見いださなければならないわけです。しかるに菅は、財務相の感覚を引きずったまま総理となり、著しくバランスを欠いた財政優先の思考のまま参院選に臨んでいたように見えます。菅が「なるべきではなかった」のは財務相ではなく、総理大臣の方ではないかという気がしてなりません。

 

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