非国民通信

ノーモア・コイズミ

派遣会社はどこに消えた?

2008-12-13 22:27:59 | ニュース

トヨタ系部品メーカー、派遣9割を削減 トヨタ紡織九州(朝日新聞)

 トヨタ自動車系の部品メーカー、トヨタ紡織九州(佐賀県神埼市)が来年3月までに派遣社員の9割に当たる約100人を削減することが分かった。10月から順次、契約期間が終わった人について契約を打ち切っている。

 「100人」というと大したことがないようにも見えますが、「9割」と書かれると大事に感じられますね。まぁ、この会社だけに限ったことではありません。新卒なら内定の取り消し、正社員なら早期退職の強要と色々ある中で、とりわけ目立つのがこの派遣契約の打ち切りです。

マツダも大半が雇用打ち切り(中国新聞)

 景気悪化を受け、派遣社員や期間従業員など非正規労働者に寒風が吹き付けている。大手製造業を中心に人員削減が中国地方でも本格化。マツダ本社宇品工場(広島市南区)では5日、派遣社員約800人の大半の雇用が打ち切られた。再就職や住居、家族の将来…。さまざまな不安を抱え年末を迎える。さらなる減産や景気後退も懸念され、地域経済の足元が揺らいでいる。

 午後5時すぎのマツダの宇品工場西門。家路を急ぐ人波が続く。一部はもう戻ることのない派遣社員。九州出身の40歳代男性は「3年働いた。今日が最後だと思うと寂しい」と何度も後ろを振り返った。派遣会社の寮住まいで次の住居は未定。「この年齢では職探しも難しい」とつぶやいた。

 来年3月までに、シャープ福山工場(福山市)や三菱自動車水島製作所(倉敷市)など大手が次々と非正規労働者の雇用打ち切りを計画。その数は中国地方で約4600人に上り、さらに拡大する恐れもある。

 好景気では高操業を支えた一方、減退期では「調整弁」としてカットされる悲哀が、派遣社員など非正規労働者に押し寄せる。

 会社の規模相応に問題も大きいということでトヨタの名前が挙がることも多いですが、それに劣らずマツダの名前をよく見かける気がしますね。しかし日本の自動車産業のライバルであるアメリカのビッグ3は瀕死状態、競合他社が経営破綻の危機ならシェア拡大のチャンスだと、プラス思考で考える企業が出てきてもよさそうなものです。とくに、通期ならバッチリ黒字を確保しているトヨタなどは。

 それはさておき、派遣切りが深刻です。深刻ですが、「派遣先」企業の名前が挙がるばかりで「派遣元」の名前が挙がってこないのが不思議です。就業先企業と労働者だけの問題ではなく、派遣会社も関与しているはずの問題なのですが、不思議と派遣会社の姿が見えません。トヨタやマツダと違って、名前を挙げられても誰もピンと来ないようなマイナーな会社だからでしょうか? それとも「専ら派遣」、すなわち直接雇用を回避するためにグループ内に派遣会社を作って、いざというときに切り捨てられるよう籍は派遣会社に置かせるが、実質は直接雇用するものだからでしょうか? いずれにせよ派遣社員が契約を打ち切られたからには、派遣先企業と派遣元企業の契約も破談になっているわけで、ならば契約を打ち切られた派遣元企業はどうなっているのでしょうか?

 カンバン方式――普段は下請けに在庫を持たせておき、トヨタが必要になったときに必要な分だけトヨタに納入させることで、トヨタが在庫を抱えずに済む方式――は、なにも部品在庫に限ったことだけではありません。下請け企業を派遣会社に、部品を人間に置き換えてください。普段は下請け企業=派遣会社が部品在庫=労働者を用意しておき、トヨタが要求したときにそれを供給する、そしてトヨタは余分な在庫=余剰人員を持たない、完璧なカンバン方式です。部品在庫を保有していれば倉庫代と税金がかかりますが、派遣社員を登録しておくのはタダ、という点に違いがありますが。

 派遣会社側の抗議がないのがおかしい、とも思います。派遣社員が契約を打ち切られてしまったら、収入を失うのは派遣社員だけではありません。派遣会社だってそうです。派遣会社には、派遣会社の利益を確保するためにこそ、契約の延長を派遣先企業に求めてもよさそうなものでしょう? しかるに、そんな動きがほとんど見えてきません。我々の社会の注目度が低いからでしょうか? これがプロスポーツの代理人の世界だったら、話は違います。代理人は契約選手の年俸の何%かを自らの報酬とするわけで、選手の年俸が上がれば代理人の取り分も増える、だからこそ貪欲な代理人は選手の年俸をつり上げ、有利な契約を結べるよう奔走します。しかし派遣会社の姿は見えてきません。

 正社員は手厚く保護されているが、派遣社員は~という見方もありますが、それ以上に問題なのは、派遣社員を保護すべき制度の大半が形骸化しており、ほとんど守られていないことにあります。例えば、派遣社員の事前面接は禁止されていますが、この禁止を守る会社などどこにもありません。本来であれば、派遣先企業と派遣元企業が契約を結び、派遣元企業と派遣社員が契約を結ぶわけで、面接の必要があるのは派遣先と派遣元企業の担当者、及び派遣会社と派遣社員の間だけです。派遣社員を選ぶのは派遣会社であって、派遣先企業ではないわけです。ですが、ここでも派遣会社は姿を消し、派遣先企業が面接して当否を決めるのが常です。そしてクビキリもまた同様、派遣会社は姿を消しているかのようです。派遣制度の在り方もさることながら、日本式派遣会社の在り方もまた再考される必要がありそうな気がしますね。

 

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8 コメント

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株式会社テクノスマイル (焚火派GALゲー戦線)
2008-12-13 23:27:23
http://www.haken.or.jp/search/search_detail_comp.php/:/corp_cd=1780000701?district_cd=70

 トヨタの派遣打ち切りのトップをだったのが、トヨタ自動車九州だったかと。
 そこには、株式会社テクノスマイルというのがあり、九州に本社を置きながらも関東、東海以西に営業拠点を持つようです。

>確かな人材育成システム 
当社の人材育成室のトレーナーのほとんどがトヨタ自動車九州(株)のOBであり、当社独自の研修所でお客様のニーズに合わせた研修を実施します。

 恐らく、トヨタの外郭企業的なものであり、この会社のトヨタのOB自体は派遣業で金が入らなくても別のトヨタの息がかかった所をあっせんしてもらえるのかな?
 ある意味、中央官庁の高給官僚OBみたいな感じで。(Aという外郭団体が就職直後に整理されれば、Bにあっせん。)
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-12-14 01:02:17
>焚火派GALゲー戦線さん

 派遣会社でも質が悪いのが、「専ら派遣」専門の会社なんですよね。派遣会社と派遣先で何の資本関係もなければ、派遣会社と派遣先企業には競争関係が働くはずですが、実質的にグループ企業ですと、トヨタ本社の利益のために、派遣会社が犠牲になる、必然的に派遣社員も一緒に潰されるようなこともやりやすいわけで。
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Unknown (ふみたけ)
2008-12-14 01:39:10
ま、一つ明らかなのは切られるも地獄、残るも地獄でしょう。まるで運動用の車輪の中で必死にもがく小動物の如き扱い=派遣・契約社員って事実に尽きます。
こんな馬鹿げた事態、さっさと止めさせるべきだと痛感します。
共産党だったかはモノ扱いするなと反論してましたが、正直モノより扱いが酷いと思うんですがね。
個人的にこの世界的異常な状況を『受け流す』方法は、国内の内需を活性化させる点に尽きると考えており、その前提としてまず雇用と生活面の維持は最低必須と思うのです。
ところが、現状は生活面の保障は準備されつつも、大手企業が不安ばかり煽る雇用面はお先真っ暗、おまけに将来的な増税予告と国内の流れが凍りつくような事が横行しており、これでは国内の状況がさらに悪化してしまうと危惧しています。
それにしても腹立たしいのは昨日の麻生がやってた発表ですね、アンタの心配事は政権与党であるプライドと大手企業の歓心だけかい?と。そんなんだから小沢の生活者重視のストレートなメッセージに負けてる現実に気づけと思うですがね。
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カラクリが見えたような気がします (紅葉修)
2008-12-14 06:39:15
初めてコメントいたします。

私はしがない警備員をやっております。
管轄される法律は違えど、社会のニーズに応えて人材を派遣するというシステム自体は共通するところがあるわけですが、元請会社からこれだけの人員削減が行われれば、警備会社なら半壊するのに、人材派遣会社の悲鳴が聞こえてこないのは実に不思議に思っておりました。
なるほど、グループ企業なのですね。

しかし、この日本的派遣は、労働力の売り買いという資本主義の原則が行き着くとこまで行って半奴隷制度に一周してきた感があります。

>マツダの記事が多い
トヨタ、日産、ホンダに比べて報復されてもあまり怖くないからでしょうか(苦笑)
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-12-14 23:00:58
>ふみたけさん

 モノは倉庫代と税金で維持費用がかかりますが、派遣期間外の人間は維持費用がかかりませんからね。モノよりも人の方が、扱いが楽なのでしょう。そこで景気対策が必要になってくるわけですが、将来の増税をちらつかせることで消費を萎縮させてしまうような無駄を繰り返す、やれやれですね。

>紅葉修さん

 同じ派遣でも事務系の場合はそれほどでもないと思うのですが、製造業の場合はグループ内での専ら派遣が多いのでしょうかね。これだけ派遣切りが相継げば、派遣会社が経営破綻したり大規模なリストラに走ったりと、相応の影響があるはずなのですが、不思議と派遣会社の存在が出てこない。この辺も追求されてしかるべきですよね。
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モノと人とは違う (ゴム屋)
2008-12-15 00:49:14
モノなか倉庫代は会社が持つのだろう。派遣なら住居代で巻き上げられるから、往復で儲けがあるんだと思う。

昔の炭焼きさんの労働と似てます。

炭焼きは、深い山で伐採と炭焼きをしていた。買い上げ価格は商人の言い値だった。その中から、商人の配送による米代味噌代、必需品を差し引き払いで買っていた。

往復商売。元値は人が生きるためのモノを買えるギリギリにしている。
弱者を原料コストみたいにモノに計算している。
小泉さんは、香川の豊島に不法投棄を黙認した真鍋知事と同じ罪を犯した。

そりゃあ、どんな経済モデルを選ぶかは政治や倫理の問題だよ。だから、経営の問題は経済オタクがするってえだけでは、力不足だ。
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兵隊は赤紙一枚で来るが、 (ベースケ)
2008-12-15 12:39:33
「畏れ多くも天皇陛下より賜った三八式歩兵銃は云々・・・」というやつを思い出しますな。>正直モノより扱いが酷い
蟹工船にもそんなシーンありましたっけ。

あと知りたいのは「派遣会社での首切り」ですね。そうは言っても大手は従業員多いでしょうし、結構ありそうな気がしますよね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-12-15 23:59:46
>ゴム屋さん

 在庫は売れなくても会社が倉庫代を支払いますが、住居付派遣の住居代が支給されるのは、派遣期間中だけ、モノより人の方が安いようです。会社は放っておけば利益を追うものですから、そこを調整するのが政治でもありますが、経営者目線しか持てない政治家が「改革派」として賞賛された結果が、このザマでしょうか。

>ベースケさん

 どこも営業系は激務ですが、派遣会社の社員はどうなんでしょう。平日でも8時過ぎとか、あるいは土日に問い合わせの電話をしても意外に担当営業が捉まるので、時間辺りの給料は私とあまり変わらないのかも知れません。私が雇い止めに遭うより先に、自分から退職してしまう担当営業も結構いますし。ともあれ派遣会社は派遣社員が「商品」ですから、派遣切りは取引停止や返品に等しいはず、自動車メーカーにとって車が売れなくなるのと同じ様な影響が派遣業界にもあるはずなのですが、それが表に出てこないのが一つの謎でもあります。
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