遠い物価上昇2% 日銀、緩和2年 あふれるマネー、バブル警戒(朝日新聞)
「デフレ脱却」を旗印に日本銀行が大規模緩和を始めて、4日で2年になる。大量のお金を市場に流し込み、物価上昇率2%を目指す政策は2年では達成できなかった。大規模緩和で金回りが良くなる人は増えたが、市場にはリスクがたまっている。
(中略)
消費者物価の上昇率は14年春、1%台前半まで上がったが、夏場以降、原油価格が落ち込んだあおりで、直近2月には0%まで鈍っている。2%の達成時期は見通せない状況だ。
よく朝日新聞では「給与水準が上がっていない、アベノミクスはダメだ」みたいなことが書いてあったかと思いきや、別のページには「人件費の上昇に苦しめられている企業が多い、アベノミクスはダメだ」という趣旨のことが書いてあったりするわけです。まぁ賃金が上がっているかどうかとは無関係に、安倍政権への評価という点では一貫しているのが朝日新聞と言えます。
そして物価上昇に関してはどうでしょうか、アベノミクスで物価が上がって消費者が苦しんでいると、そう朝日新聞では伝えられることも多いです。しかるに同じ朝日新聞で、日銀ひいては安倍政権が掲げた物価上昇目標である2%に全く届いていないこともまた報道されています。現実の賃金相場や物価上昇率は統計によって知ることができますが、果たして朝日新聞にとっての真実とはどこにあるのでしょうね?
図にあるように「生鮮食品、消費増税の影響除く」という条件下ですと物価上昇は0になることが伝えられているわけです。これはまぁ、そういうものなのでしょう。物価上昇を批判的に語ってきたメディアであるからには、黒田日銀が目標を狙い通りに達成「できなかった」ことを肯定的に評価してもよさそうなところですが、そうしない辺りに朝日新聞なりの一貫性が窺えないでもありません。
それはさておき、結局のところ我々が体感できる物価上昇は専ら消費税増税によるものが大きいわけです。消費税増税分を差し引くとデフレ脱却にはほど遠い状況ですから。消費税増税が景気回復の腰を折り、生活者を苦しめることにも繋がっている――消費税増税をしきりに訴えてきた、消費税増税を決めた政党を贔屓にしてきた朝日新聞社はこの辺から目を背け続けているようですが、記者達に良心の呵責はないのでしょうか。
ジンバブエの100兆ドル紙幣 危機の産物は「他山の石」か(朝日新聞)
先日、偶然通りがかった都内のコイン商で「100兆ドル」の紙幣を見つけ、記念に買い求めました。紙幣に印字されたゼロは14個。アフリカ南部にある人口1400万人の国、ジンバブエ共和国で流通した、ドルはドルでもジンバブエドルの紙幣です。
(中略)
でも、一難去ってまた一難。ハイパーインフレが収束したと思ったら、今度はデフレのふちに立っているようです。米ドルを通貨とする以上、ジンバブエ経済は米国の金融政策に連動せざるをえません。米国では今年後半にも利上げが予想されていますが、ジンバブエにとって意図せざる金融引き締めはデフレ気味の経済に大きな打撃を与える恐れがあります。
ちなみに冒頭の100兆ドル紙幣のお代は2千円なり。店頭にはハイパーインフレ紙幣「10点セット」も並び、売れ行きはなかなか好調のよう。自国では使えぬ紙幣に海外で思わぬ価値がついたわけです。これを遠いアフリカの話だと笑って済ませられると良いのですが……。杞憂(きゆう)でしょうか。(「週刊東洋経済」編集部)
あまり興味のない人からはインフレの国と知られているジンバブエですが、ハイパーインフレの後に一転してデフレに陥っていることは、もう少し知られてしかるべきでしょう。デフレなんて滅多に起こるものではないのですけれど、日本とジンバブエは世界の希少な例外として継続的なデフレに見舞われてきたわけです。今時デフレという点でジンバブエと肩を並べた稀有な存在が近年の日本経済なのですが、どうにもインフレの危機を叫ぶばかりでデフレを放置しようとする人が少なくない辺りに、日本の政財界やメディアの貧困ぶりが窺われます。
朝日新聞(に転載された東洋経済)のバカボンが匂わせた懸念とは裏腹に、現実の日本が僅か2%と言う微々たる物価上昇目標すら達成できないでいるのは、冒頭に引用した通りです。日本人が心配すべきはデフレの方、ジンバブエのようにインフレの押さえ込みばかりを優先してデフレに陥ってしまうことの方でしょうね。ちょっと景気が上向くと「バブルになるぞ~」と頭の悪い脅しを連呼する人は朝日新聞に限らず多いですが(今時の日本的な感覚を適用すれば、日本以外の国はどこでも恒常的なバブル景気みたいなものになってしまいます!)、実際に起こっているのは景気の停滞ですから。
福島の原発事故の後、日本には人が住めなくなると煽って回った人もいたものですが、色々な苦労はあれど福島でも人は元気に暮らしています。そして安倍内閣が誕生して経済政策の方向性も変わって、そしてハイパーインフレになるぞと根拠のない脅し文句を並べ立てていた人が大手新聞や経済誌にも頻繁に登場したわけですが――現実はご覧の有様です。むしろ2%という物価上昇目標は「低すぎる」として批判されるべきだったのでしょう。日本が反省すべきはバブルではなく全く上昇することができなくなったバブル「後」の過ちであり、懸念すべきはインフレという全く訪れる気配のない代物ではなく、退治できていないデフレという(日本とジンバブエぐらいにしか生息しない)珍獣の方だと言えます。
物価の定義をそのようにすれば、達成できなかったということになるのですが、目標としている物価上昇とこの話は最初からズレてるように思います。
金融緩和によって上げたい物価は原油価格などの外的要因による部分ではなく、需要と供給のマッチする価格の変化や所得との関連などの内的要因によって決まる物価なのではないですかね。その点についてはむしろおおよそ上手く行ってるように思われますが。
石油価格上昇によって物価が上がったときに「石油価格が上がったことで物価が上がったからデフレ脱却だ」と主張することがズレているように、「石油価格が下がったことで物価が下がったからインフレ誘導失敗だ」というこの朝日記事などの論調もやはりズレていると思います。
まぁ結局のところ、朝日新聞はいつも「安倍政権のやっていることはダメだ」という結論に沿うような形で条件を整えているだけなんですよね。似たような論者はヨソでも見受けられるわけですが、そういう人が強弁を続ければ続けるほど、自民党批判者側に説得力の不足を感じるばかりです。ある程度まで結果の出ている部分は認めた上で、より良い提案ができるようなら良いのですが……