市長の話なんか誰も聞いていないに決まってる

騒ぐ新成人を市長一喝　佐世保の式典　「迷惑考えなさい」会場拍手(西日本新聞)

　長崎県佐世保市で１０日開かれた成人式で、朝長則男市長が式辞を述べている途中、新成人の一部集団が壇上に登り、職員に制止される騒ぎがあった。集団は席に戻されても大声で「おまえの話なんか誰も聞いとらん」「一発芸しろ」とやじを飛ばし続けたため、たまりかねた朝長市長が「人が迷惑していることを考えなさい」と一喝。会場を埋めた新成人から拍手がわき起こった。

　この集団は会場最前列で式の冒頭から騒ぎ、１人は壇上で扇子を振り上げながら市長に近づいた。朝長市長は式辞を読み上げた後、集団を見据え「社会は厳しいもの。ルールを守ることを十分認識してほしい」と説教。集団は来賓あいさつの途中に退出した。

　出席した同市の女性（２０）は「式が台無し。目立ちたいのだったら、ほかで騒げばいいのに」と冷ややかに話していた。

　さて、毎年恒例の報道です。普段は旧成人が起こしたトラブルばかりが報道されているわけですが、１年に一度は新成人にスポットを当てて報道するのが慣習になっているようです。そこで長崎は佐世保の場合ですが、「おまえの話なんか誰も聞いとらん」等とやじを飛ばした人がいたそうです。

　さて、成人式なんか出なかった人も多いかとは思いますが、学生時代やその他諸々を通して「来賓あいさつ」を聞かされた経験はどなたにでもあるでしょう。皆さん、聞いていましたか？　私は、何一つ記憶に残っていません。例外なく「さっさと終れよ」と思っていました。他の人も似たようなものではないでしょうか。来賓の挨拶なんて誰も聞いちゃいません、だからここで取りざたされている新成人は「本当のこと」を口にしただけなのかも知れません。本当のことだけれど、敢えて皆が黙っている、そんな中で「王様は裸だ」と叫んでしまったのでしょう。童話の世界ではなく美しい国で「王様は裸だ」と叫ぶとどうなるかを、この記事は示しています。

　そもそも、出席者の大半も日頃は市長のことをバカにしていると思うのです。急増中のポピュリスト系首長なら若い（というより幼い）人には大人気かも知れませんが、普通の真面目な市長だったら、決して市民からの尊敬は勝ち得ていないはずです。圧倒的多数の人は自民党がダメ、民主党がダメとかそういう感覚ではなく、政治家一般をまるごと否定している、用途を問わず国や自治体の支出であれば何でもムダと思っている、そういうものではないでしょうか。ロクな仕事もせず税金をムダに食い散らかしている、それが世間における最大公約数的な政治家のイメージです。成人式に集った新成人達だって決して市長を尊敬などしていない、むしろ日頃は頭ごなしに存在を否定していたはずです。ただ面と向かって相手に軽蔑の気持ちを伝えた人もいれば、いつもは相手を蔑ろにしてはばからないのに面前では従順に振る舞っていた人もいた、それだけのことに過ぎません。

　どのみち、「お偉いさん」への反抗はここまでなんですよね。学生時代には校長に向かって「長いぞー！」「もう次行こうぜ！」などとヤジを飛ばしていたヤンチャ坊主も、成人式で市長に「一発芸しろ」とやじを飛ばした生きの良い若い衆も、会社に入るや途端に従順になってしまうものです。社長や役員が自己満足の無駄話をダラダラ垂れていても、決して声を上げずに直立不動で聞き入ったフリをする、そういうつまらない人間になってしまいます。そして意味もわからぬまま、ただただルールだからとそれに縛られる思考停止した人間になってしまうわけです。

　早くも社畜の素質を披露している女性は「式が台なし」などと言ったそうですが、そんなに市長の訓辞がありがたいのでしょうか？　本当は彼女にとってもどうでもいい話のはず、ただ彼女にとってみれば、暴走した若者のルールに縛られない行動が許せなかったのでしょう。自分は黙ってルールに従っているのに、あいつらだけルール無視で行動しているのはずるい、その辺りが真情に見えます。暴走した新成人を一喝した市長の方に拍手が送られたとのことですが、拍手を送った新成人達が、市長の本分であるはずの政治面で市長に心から拍手を送る場面はあるのでしょうか。政治には無関心だけど、ルールを無視した連中を抑えつけることには拍手喝采というようでは先が思いやられます。

 

　←応援よろしくお願いします