非国民通信

ノーモア・コイズミ

子供をダシにするのは基本ですね

2011-09-26 22:32:52 | 社会

<ザ・特集>脱原発「6万人」デモ 「子供守ろう」母の声届け(毎日新聞)

 東京都内で19日に開かれ、6万人(主催者発表)もが参加した脱原発デモ「さようなら原発5万人集会」。来年2月までに1000万人の署名を集めようというプロジェクトの一環だが、果たして脱原発の強力な推進力となりうるのか。一緒に歩きながら考えた。【宍戸護】

 ◇娘からセシウム検出。将来の健康影響、不安 「福島だけではなく、国の問題として広がってほしい」

 午後1時半、集会開始時刻には、会場の明治公園(東京都新宿区)はいっぱい。会場からあふれた人々で周囲の路上まで埋まっていた。舞台前のアスファルトには、ピンクの水玉模様の横断幕を持った小学生3人が座っていた。幕には「げんぱついらない!!」。ひらがなの上にはかわいらしい手のイラスト。山形県米沢市に避難している渡辺加代さん(35)の長女(9)=小3=は「(原発)バイバイの意味だよ」とポツリ。

 参加者6万人のうち、福島関係者は数百人。渡辺さんは午前5時50分米沢発のバスに乗ってやってきた。

 一家は福島第1原発事故前まで福島市に住んでいた。事故後、渡辺さんは放射能のイロハから調べた末、子供の健康への影響を心配し6月から2歳の長男と長女を連れ米沢に避難。夫は地元で仕事を続け、家族は二重生活を送っている。これまでデモと無縁だったが、今回は声を出さずにはいられなかった。「長女の尿から放射性セシウムが検出された。国や自治体は何でも『安全』と口をそろえるが、『将来の健康影響は分からない』が実態。こうなったら自分たちで行動を起こすしかないでしょう」

 集会場では、作家の落合恵子さんが「ひらがなしか知らない小さな子供が夜中に突然起きて『放射能来ないで』と泣き叫ぶ社会を続けさせてはいけない」と訴え、作家の澤地久枝さんは「今日まで一人の戦死者も出さなかった戦後は、二度と戦争はさせないと決心した日本の女たちの力だと思います。命をはぐくむ女性たちが役割を果たすべき時は今です」と熱弁を振るった。

 さて、このデモを大きく取り上げないメディアは原発推進勢力だとレッテルを貼られたりするわけですが、その実態はどれほどのものでしょう。取りあえず、何かに連れ子供が御輿として担がれているのが嫌ですね。どうも日本人はカマトトぶったペドフィリアと言いますか、性的な要素に関しては道徳家ぶって拳を振り上げる一方で、子供を売りにする手口には何の罪悪感を持っていないように見えます。つまり「子供であること」をアピールポイントとして人の気を引こうとする、そういうやり方には何の疑問も持っていない人が多いのではないでしょうか。子供の自己決定権など微塵も考えず、大人である自分の言いたいことを子供の口から語らせる、全くもって嫌らしいやり方だと思います。

 この記事で取り上げられた渡辺加代さん(35)は、子供を連れて避難、夫は地元で仕事を続け、家族は二重生活を送っているそうです。こういう生活を余儀なくされた子供がかわいそうですね。これが「放射能のイロハから調べた」結果というのですから憐れなものです。渡辺加代さん(35)が正しい情報を受け入れていれば二重生活を子供にまで送らせることにはならなかったはずですが、ネットや週刊誌を中心にオカルトじみた怪情報が溢れている中では、現実とはかけ離れた放射「能」の脅威を真に受けてしまう人も少なくないことがわかります。

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 あたかも、今まで放射性セシウムが検出されることがなかったかのごとく勘違いしている人はさておき、ちょっとは名の知れた作家もまた奇妙なことを口にしています。何でも澤地久枝によると「今日まで一人の戦死者も出さなかった戦後は~」と。兵站もまた戦争の一部であり、その活動過程での自殺も戦死に数えれば戦死者が出なかったとは言えない気がしますが、たぶん兵器を以て前線で戦うことだけが戦争であり、兵器によって死ぬことだけが戦死だと思っている人もいるのでしょう。そうでなくとも経済的な困窮から自殺したり、林業みたいに本当に危険な仕事で死んだりする人はいるわけで、戦死者さえいなければ胸を張れるのかと突っ込みたくもなります。まぁ、放射「能」による影響さえ避けられれば他は気にしないような人であるなら、このような発言も納得できるでしょうか。

 そして落合恵子曰く「ひらがなしか知らない小さな子供が夜中に突然起きて『放射能来ないで』と泣き叫ぶ社会を続けさせてはいけない」のだとか。う~ん、「放射能が来る」とか子供に擦り込んだのは誰なんでしょう? 少なくとも今の日本では核実験が盛んに行われていた時代を大きく上回るような放射性物質が飛んでくることはないですし、雨が降ると大気中のラドンが降下して放射線量が増えるとか、黄砂と一緒に極微量の放射性物質が飛んでくるなんてことはあるにせよ、それは原発とは関係のない話です。たぶん、「放射能」なる放射性物質とは全く異なる未知のエイリアンについてでも語っているのでしょう。その実態の乏しさはレイシストの語る外国人や隣国の脅威と同レベルですけれど。

 もし「ひらがなしか知らない小さな子供が夜中に突然起きて『放射能来ないで』と泣き叫ぶ」としたら、それは親など周りの大人が「放射能が来るぞ」と子供を脅しつけたからです。反原発の旗印として担ぎ上げるべく子供に恐怖を擦り込む親が続出しているとしたら、それは間違いなく憂慮すべき事態であり、このような社会を続けさせてはいけないと言えます。そうでなくとも、煽られた放射「能」の脅威を真に受けて一家離散で移住したり、福島の住民や産品を排除の対象にしたりと被害は随所で深刻化しているわけです。損害賠償を求められるべきは事故を防げなかった東京電力だけではなく、この落合恵子や武田邦彦、あるいはAERAなどの煽り系週刊誌もまた同様ではないかと私には思われてなりません。

こんな調子でいいわけ?明治公園反原発デモ - Commentarius Saevus

 あと、一番ひどいと思ったのがこのプラカード。十歳にもならない女の子が持たされていた。

 …なんかもうこんな文句書かせて子どもに持たせるなんて親の常識を疑う。まず「放射線を浴びた女性は子どもを生んではいけない/子どもを生めなくなる」というような実に怪しい認識をほのめかす文句で、「福島の女性は子どもを生んではいけない」みたいな差別につっこんでいく五秒前だよ。その上生理もきてないような小さい女の子が「女の子なんだから将来子どもを生んで当然なんだ」みたいなことを自分で思いつくと思う?なんかもういろいろおかしすぎる。

 で、これは本当に酷い話です。カマトトぶったペド野郎どもの共感を得るには子供を使うのが格好の手なのでしょうけれど、子供に変な刷り込みを計っては子供に大人の代弁をさせる人の存在は、それこそ児童ポルノ制作者と同レベルに語られてしかるべきものです。広島や長崎の調査結果を見る限り福島でこれから生まれてくる子供に他県のそれとの有意な差が出てくるとは考えにくいところですが、色々と怪しい認識(子供が産めなくなるとか、障害児が生まれるとか)を吹き込む人がいるわけで、そんなものを教え込まれた子供には流石に同情せざるを得ません。加えて上記のプラカードは優生思想(障害者は生まれてくるべきではないみたいな考え方)をも体現しています。こういう代物に対して無反省な人たちって何なんだろうと途方に暮れるところですが、そもそも自覚すらされていないのでしょう。

 ブルジョワ新聞の見出しには「母の声届け」と掲げてあります。なにやら子供と母親ばかりがクローズアップされていますけれど、父親はどこに行ったのでしょうか。子供を産み、守り、育てるのは女性の役目であり責任、みたいな感覚もまた、この報道やプラカードからは濃密に感じられるところです。澤地久枝によれば「命をはぐくむ女性たちが役割を果たすべき時は今」なのだそうですが、まぁ実際に産むのはともかくとして子供を守るとか育てるという面では、その役割を女性のものと限定するのはどうかと思います。男性だって命をはぐくんでいる一員ですし、その責任を担うべき、担わせるべきでしょう。反原発デモが広げるのは偏見や恐怖、エセ科学に陰謀論、風評被害や優生思想だけに止まらず、女性/母親の役割に関する保守性でもあるとしたら、ますます以て憂慮されるべきことです。

 

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27 コメント

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親も役目かなあ (PPFV)
2011-09-26 23:12:45
>「ひらがなしか知らない小さな子供が夜中に突然起きて『放射能来ないで』と泣き叫ぶ社会を続けさせてはいけない」

それは「教えてやること」間違いなく親の役目ですね。「デモをする」とか「原発なくす」とかそういうたいそうなことじゃなく、ただ「教えてやること」それだけなんですけどね。簡単なことです。
人々は長い時間をかけて少しずつ「差別」というものを無くす努力をしてきたはずなのに、ここへ来て「我が子」を使って差別を再生産することに何の違和感も持たない人たち、どうか極々少数派であって欲しいと思います。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2011-09-26 23:25:05
http://say-move.org/comeplay.php?comeid=5311
つまりこういうことですかね?

あと、細かいようですけど「優生思想」が正解ですよ。
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Unknown (ユルカラ)
2011-09-26 23:35:47
寒気がしました。
10才の子が、子どもが産めない心配をするとか、放射能を怖れて子どもが泣き叫ぶとか、みんな周りの大人の言動のせいでしょう。
子どもを守りたいなら、親が怯えているそぶりなど毛ほども見せずに包み込んであげるべきではないでしょうか。
放射(能)からだけ守ったってダメなのに…
さんざん煽って怖がらせて、子どもが怖がっているなんて、ふざけるなと言いたいです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-09-26 23:40:01
>PPFVさん

 子供が不必要な恐れや不信を抱かないよう、教えることこそ役目ですよね。しかるに子供を使って差別を再生産させようとしているのですから、二重に悪質と言えます。

>ノエルザブレイヴさん

 サウスパークは大人びた子供達が主人公の話ですから、たとえとしてはどうなんでしょう。誤変換は訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

>ユルカラさん

 この場合に子供を怖がらせているのは、針小棒大に語る周りの大人ですからね。恐ろしいものがやってくるのだと脅しつけるより、まずは安心を与える方が先のはずですが、自分の主張を代弁させることの方が大事な人もいるのでしょう。
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Unknown (ポンポン太郎)
2011-09-26 23:49:04
>命をはぐくむ女性たちが役割を果たすべき時は今

女性であることを誇りに思ってるんでしょうね
まあ男だってそうだけどさ

なんつーか、まるで犬だね。
人種や性別…縄張り作って自画自賛
人間もやっぱり動物かぁ
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Unknown (IBA)
2011-09-27 00:42:48
親バカというか、過保護というか……頭がクラクラしてきます!! 

超微弱な放射能で騒いでるくらいですから、そのうち、ニュートリノからも逃げろとか言い出す人が出てくるんじゃないかと思ってます。光より早いですから、当然人体に有害です(?)

子供ポルノも、そのうち、兄弟で一緒にお風呂に入るの禁止条例、とかできても全然不思議じゃないような気がします。
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Unknown ()
2011-09-27 04:10:15
読んでいて虫酸が走りました。引用された新聞記事を読んで言いたくなったことはもうほとんど管理人さんが記事中で書いてくださってますが、こういった親による刷り込みが子どもに過大な精神的負担を背負わせることに憂慮するとともに、刷り込まれた子どもたちが差別の加害者となっていくことが危惧されます。たとえばそういった子どもたちの学校に福島県からの転校生が来たらどうなるでしょう。「○○ちゃん、放射能ついたから子ども産めないよ」、「○○ちゃんと遊ぶと放射能ついちゃう」、「だってお母さんがそう言ってた」、こんなケースが生まれることが容易に想像できます。さらにこれらの問題をその親に持ちかけても、その差別やいじめを正当化する答えが返ってくるでしょう。これでは学校や教師がどれだけ尽力しようとも解決できない、いじめの中でも極めて深刻なケースを生み出しかねないと思います。

ところで引用された毎日新聞の記事からですが、
>参加者6万人のうち、福島関係者は数百人。
「あぁ、やっぱりな」と思いました。
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呆れ果てています (アゼン)
2011-09-27 06:30:55
この呼びかけ人達は、キリスト教カトリックとも繋がっていて、署名用紙が娘の通う幼稚園にも来ました。しかし、署名したお母さんはほんの少数でした。
原発に問題があるのはよくわかったけど、放射能を今すぐに止めることも、具体的な代替エネルギーも今すぐに出来るものでもないんでしょう…?だったら、署名したって…、という意見が多かったです。署名用紙は集会前に来て、呼びかけ人の名前を観て「この人達何やってるんだろう。」と呆れましたが、集会で誇らしげにしていた姿をテレビで観て、呆れ果てました。洗脳されてゆく子供達には悲壮感しかありませんでした。
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Unknown (ヘタレ一代)
2011-09-27 08:20:36
差別をなくすためではなく、差別を強め、広め、そして継承していくためのデモとは・・・
「放射能」の部分が「~人」になったら簡単にナチスやスターリン時代の再来になりそうで、非常に危ういものを感じます。
労働運動などがいくら起こっても報道しないメディアには常々役割を果たしていないといら立ち覚えていましたが、そのメディア(報道しない思惑は別にありそうですが)に救われる形になるとは・・・
差別の本家をも上回ったということでしょうか。
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Unknown (ルーピー)
2011-09-27 08:53:54
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11027835992.html
 関係ない話で申し訳ありませんが、いったいどこが「役人天国」なんでしょうか。
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