生活保護「なめんな」、上着にプリント 小田原市職員ら(朝日新聞)
神奈川県小田原市の生活保護を担当する職員らが「保護なめんな」などの文字をプリントしたジャンパーを着用して職務にあたり、生活保護家庭への訪問時に着用することもあった。2007年以来使っていたという。
ジャンパーは胸のエンブレムに「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」や、×印がついた「悪」の字がある。背中には「私たちは正義。不正を見つけたら追及する。私たちをだまして不正によって利益を得ようとするなら、彼らはくずだ」と不正受給を批判する内容の英文が記載されている。
とあるジャンパーの着用が10年ばかり、小田原市役所で容認されていた件が結構な話題となっています。全くの別件ですが文科省OBによる天下りもメディアを賑わせていたりするわけで、「ついこの間まで黙認されてきたものが、なぜ今になって世間の批判を浴びるようになったのか」という点については、いずれも興味深いところです。まぁ、この手の「知っている人は知っているが注目はされていない」、しかし本当は異常な事態を広く市民に伝えるという意味合いでは、マスコミにもまだまだ役目はあるのかも知れません。
問題のエンブレムはイングランドの名門サッカークラブ・リヴァプールFCで使われているものを剽窃しており、元々は"YOU'LL NEVER WALK ALONE"と書かれていたところを「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」などと書き換えているわけです。その他にも「私たちは正義」云々と独善性をアピールしていることも伝えられていますが、これこそまさに「自分が『悪』だと気づいていない、もっともドス黒い『悪』だ」ってところでしょう。報道では「不正受給を批判する内容」とのことですけれど、やっていることは単に生活保護受給者を容疑者として扱っているだけです。
同市は17日、緊急の記者会見を開いて謝罪する一方で、「不正受給は許さないという思いがあった」などと釈明し、作った職員を処分しない方針を明らかにした。
「受給者に対する差別意識を持っている職員はいない」「内部に対して『生活保護(担当を)なめんなよ。みんな頑張っているんだ』と訴えたかった」。市役所で行われた会見で、市福祉健康部の日比谷正人部長らはこうした説明を繰り返し、職員の連帯意識を高めることが目的だったと強調した。
ジャンパーは2007年、生活保護の受給を巡って職員が切りつけられた事件をきっかけに、有志の職員が作ったという。1着4400円で、その後に配属された職員も含め約10年間で計64人が購入。複数の職員が受給世帯の訪問時にも着用していたという。
日比谷部長ら上司7人が厳重注意を受けた一方、ジャンパーを購入した職員については「不正受給をなくしたいという強い思いがあった」などとして処分しないという。加藤憲一市長は「市民の命や暮らしを守るべき市職員として配慮を欠いた不適切な表現」とするコメントを出した。
そして報道を受けた後の市の対応がこちら。「作った職員を処分しない」と明言しており、小田原市側は全く反省していないことが分かります。市による言い訳の一つが「内部に対して『生活保護(担当を)なめんなよ。みんな頑張っているんだ』と訴えたかった」とのことですが、隠すことの出来ない現実として差別ジャンパーは受給世帯の訪問時に着用されていたわけです。決して、市役所内部で別の部署の職員に見せるためだけに使われていたものではありません。小田原市による「説明」は純然たる虚偽であり、自らの悪を自覚していない証左でしかないと言えます。
あるいは市の幹部も生活保護受給者への偏見を共有しているが故に「受給者に対する差別意識を持っている職員はいない」ように見えてしまうのかも知れません。往々にして加害者サイドが自身の振る舞いをセクハラやパワハラであると自覚できないように、偏見と差別心に満ちた小田原市職員にとっては、何が誤った行為であるのか理解できないのでしょう。なにしろ差別も差別主義者にとっては「区別」です。そして小田原では生活保護受給者を不正受給者の容疑者と見なして威嚇するのが「正義」になるわけです。
発端は「生活保護の受給を巡って職員が切りつけられた事件」と伝えられています。別の報道によれば生活保護費の「支給を打ち切られた人」が職員を切りつけたそうです。保護費を打ち切られたことに怒って市職員を切りつけるような人が普通に就職できるのかどうかも考えて欲しいところですが、今回発覚したジャンパーやその後の無反省な対応を見るに、受給者側を追い詰め、憤らせるような対応を市が以前から取っていたであろうことは想像するに難くありません。切りつけた側にも情状酌量の余地はありそうです。
そもそも生活保護を「打ち切られた」人とのトラブルが「本当の」原因なら、どうして「不正受給は許さないという思い」に繋がるのでしょうか。2007年に起こったと伝えられているのは、不正受給によって市(職員)が損害を受けたという類いではありません。あくまで生活保護を打ち切られた特定の個人との諍いです。実際に小田原市職員が敵視してきたのは、生活保護受給者そのものではないでしょうか。そして生活保護の打ち切りもまた小田原市側が一方的に「不正扱いして」行われたのではないかと邪推してしまいますね。その結果として刃傷沙汰に至った、それに対して「俺は悪くねぇっ!」と逆ギレしたのが市側であった、と。
本来は生活保護でカバーされるようなリスクというのは社会保険でカバーされるべきことですよね。保険金としてお金が支払われるのと税金から補助されるのでは、後者はどうしても養ってやってるという感情を持たれやすい
どの職場でも、仲間うちで嫌な客を罵倒して溜飲を下げる位やっていますが、それを「客の前でやってしまった」わけで、そんな事をすれば、ましてや公的機関の職員なら、そりゃ叩かれます。社会常識がないと言わざるを得ないでしょう。