内閣府は13日、子ども手当を満額支給(月2万6000円)した場合でも、民主党が打ち出している各種控除の廃止が実現すれば、所得が増える世帯は全世帯の38%にとどまるとの試算を発表した。
試算は、民主党の昨年の衆院選マニフェストに沿い、所得税の扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除の廃止を前提とし、子ども手当と高校授業料無償化による影響を調べた。
一方、所得が減る世帯は19%で、43%は影響が出ないとした。子ども手当や高校授業料無償化などにより、子どものいない世帯から子どものいる世帯への所得の移転が実質的に起きるためだ。世帯年収が300万円以上の場合、52~45%の世帯で所得が増える。299万円以下の世帯で所得が増えるのは34~4%にとどまった。
この試算に関しては各紙が報じているのですが、それぞれ重点を置いているところが違うようで、ある新聞では書かれていることがある新聞では書かれていなかったり、同じ調査結果を報道しているにしては異例なほど、記者の取捨選択が現れていたりします。引用した読売の記事には載っていないが他紙には載っていたこととしては、「高校以下の子供を持つ世帯は確実に収入増(高校授業料無償化が算入されているため)」「収入減になる世帯は専業主婦のいる世帯に集中(配偶者控除の廃止が前提のため)」「半額支給から全額支給にした場合、収入減になる世帯は22%から19%に減少」辺りが挙げられます。半額支給でも全額支給でも、今ひとつ変わりがないみたいですね。
一方、読売は世帯年収の差による影響の程度を伝えており、これによると年収300万円以上の場合は52~45%の世帯で所得が増えるのに対し、299万円以下の世帯で所得が増えるのは34~4%に止まるとのことです。つまり低所得層が子ども手当によって所得増になる可能性は、中所得層が所得増になる可能性よりも低いわけです。この結果からすると低所得層にとって子ども手当はあまり旨みがない、リスクがある割には恩恵が薄いものと判断されます。年収300万円未満の世帯で所得が増える可能性はせいぜい3割で、逆に所得減となる可能性もある、より所得が多い世帯に比べて低所得層が不利な制度設計になっている、これは貧困対策や富の再分配という面では欠陥と言わざるを得ません。
日本では一人親世帯の場合、再分配によって逆に貧困率が増大することがOECD調査によって指摘されています。つまり税や社会保険料に逆進性が強い一方、公的給付や社会保障が著しく不十分であるため、所得再分配の結果として貧困層はより貧困になる、そういう仕組みができあがっているわけです。子ども手当は公的給付の拡大という面でこそ評価できるものの、それが高所得層から低所得層への所得移転を促すものであるかと言えば、むしろ低所得層の所得が増える可能性が低いなど、相変わらず再分配としては機能していません。色々と論議を呼んでいる割に、どうも目先を変えただけの代物にしか見えないのは私だけでしょうか。
また別紙報道によれば高校生以下の子供がいる世帯では高校授業料無償化の影響で全世帯が収入増となるらしいのですが、ここにも落とし穴はあります。というのも元より貧困世帯は授業料免除の対象とされていることが少なくないため、そこから授業料が無償化されたとしても何ら恩恵がない世帯もまた多いのです。しかも、「授業料が無償化されたのだから」との理由で奨学金への寄付を取りやめる人が増えているとも伝えられています(参考)。結局、授業料免除の対象となるような貧困世帯にとって高校授業料無償化は恩恵がないばかりか、逆に奨学金を受けられなくなる可能性が高まる一面すらあるようです。やはり高所得層から低所得層への所得移転という面では、民主党の目玉政策もまた従来の機能不全ぶりを引き継いでいるのかも知れません。
本来なら、直接税の累進性を高くして、資産課税の強化やキャピタルゲインなどの総合課税化をした上での補助的制度であるべきだと思います。(もちろん、抜け道だらけの法人税減税はなしです)
あと、教育費などもOECD加盟国中最低水準なのにそこを正さず、稚拙な大衆迎合的な制度を作るあたり、「ちゃんと考えてるのかよ?」とつっこみたくなります。
とにかく、土台を変えていかなきゃダメじゃないかと思うのですが・・・
再分配機能を高めるなら財源は累進課税としなければならないはずなのですが、実際は単なる予算の組み替えであったり、あろう事か消費税にしようとかしている有様ですからね。このままでは、単なる話題作りのパフォーマンスに終わってしまいかねません。
>nakayosiさん
結局「敵」を作る政治が昨今の主流なんですよね。民主党代表選では両候補とも官僚を敵に見立てて正当性を主張してきたわけですけれど、こういう政治が支持されてしまうようでは、いやはや助け合いの精神を期待するのは難しそうです。
ホテルさんではないが
スキルアップのチヤンス訓練、子供手当だけでなく
低所得者老人手当
肉体労働者にはサウナ券
路上生活者には、一週間交代制で、的もな食事入浴宿泊施設招待券等無駄使いした金の一部あればどれだけ出来たことか
仕事は確かにないが
なんとかなるのさ
一人を無駄遣いしすぎ
ばらまきと言えばさ
以前鳩山さんが
ユッキー名刺を女子高生に必死の形相で配っていましたね
その時からのばらまき体質に国民は築くべきでしたね。
無駄無駄無駄遣いだったぬあれも税金だったよな
あー
バラマキというよりは、目先を変えただけ、朝三暮四とでも言ったところでしょうか。とりあえず従来からの上積みは期待できないようですので。
>HANAKOさん
結局、個人に責任を押しつけることばかりが好まれ、根本的な支援体制は作られる気配がないんですよね。世論も世論で、社会保障を必要とする人をばっさり切り捨てて「自立」を強要した方が盛り上がりそうな気運もありますし……
苦学をしながら進学をした人々を見かけなくても家族や親戚がやり繰りしながら学費を捻出してくれたこと。
周囲の助言を得て進学や就職を考えたこと。
こういうことに想像力を働かせることがなければ「人間としてどうか」と思います。
世界の大学ランキングが発表されたことをご存じの方は多いと思います。
東大を含めて4、5の大学が軒並み順位を落としたことについて「教育予算の削減」を指摘されていましたが、それよりも香港か中国の大学が上位に来たことに関してケチをつける方に神経がいきそうです。
支持率は気にしても、生活の方はあまり気にする必要もないのでしょうね。有権者も生活に密接に関わることを、あまり選択基準にしていないようですし。
>不肖の弟子さん
大学のランキングと科学力テストの点数とかを気にする割には、教育機会の拡大には無関心であるどころか否定的な社会ですからね。公的な扶助によって誰かが得をする、苦労しないで済むことを嫌がる国柄でもありますし。