意外でも何でもない

意外に低い！？日本人の“ふしだら度”…下から６番目（ZAKZAK）

　日本人の“ふしだら度”は予想外に低かった－。米国の著名教授が先月３０日、世界的学術誌「Ｎｅｗ　Ｓｃｉｅｎｔｉｓｔ」に発表した世界各国の「性的解放度」調査で、日本が調査対象４８カ国中４３位だったことが分かった。１位は学力調査でもトップ常連のフィンランド。日本は学力もセックスも“凋落傾向”にあるのか。

　調査は米ブラッドリー大（イリノイ州）のデヴィッド・シュミット教授（心理学）らが実施。世界４８カ国、１万４０００人以上の男女を対象に、一夜限りの関係を持った人数、今後５年間で何人の異性とベッドを共にすると思うか、カジュアルセックスについての快楽度－などを調査し、ランキングした＝別表。

　それによると、トップはフィンランド。以下、上位を欧州各国が独占し、日本はアジアではトップクラスながら、全体では４３位。もっとも保守的と評価された最下位国は台湾だった。

　さて、この順位、果たして日本人としては喜ぶべきことなのか？

　日本性感染症学会評議員で性心理に詳しい医師、赤枝恒雄氏（６４）は「問題はカジュアルセックスの“質”。全体の順位は低いが、日本の場合、ひとつひとつのセックスの質が非常に悪い」と前置きし、次のように語る。

　「欧州各国の男女は、自我がきちんと確立したうえで大人の判断としてカジュアルセックスを楽しんでいる。しかし日本では、女性を性の対象としか見られない男性が、自分を大切にできない女性を相手にする一方的な快楽セックスが多い」

　まず見出しが重要です。「日本人の“ふしだら度”」が「意外に低い」そうですが、この意味するところはすなわち、「日本人はふしだら」との自意識があったということです。性的開放度で最下位を争う結果を「意外」と感じられるのは、むしろ上位に入るだろうと思っていたからでしょうね。私からしてみれば、納得の結果なのですが。

　まず「性的開放度」を“ふしだら度”と読み替えているところに勘違いがあります。あくまで否定的な文脈で使われる“ふしだら”と「性的解放」を混同してはいけません。性が統御されていない状態、解放されている状態を指して、それを詰るときに“ふしだら”という言葉は使われるのであり、初めから価値判断を含む言葉を使うのは不適切です。

　それでも“ふしだら”と「性的解放」をあたかも同じもののように扱ってしまうのは何故でしょうか？　性は解放されるべきではない、きちんと（男性の元に）管理されているべきだ、人目に付かないところに隠されているべきだ、そういう考え方を当然視していると、「性的解放」＝“ふしだら”になります。そしてこうした考え方――性的解放は好ましくないことだとする考え方――こそ、「性的開放度」の低さを如実に表す所以なのです。

　ここで誤解してはならないのですが、性が消費や性の流通量の増加と、性解放の度合いは比例するものではありません。抑圧的な考え方を自明のものとしている人は、性が消費され流通しているからには、“ふしだら”になっている、すなわち性的解放が進んでいると、そう思いこんでしまいます。しかし、性的解放とは性の流通量の増加ではなく、性が尊重されるようになること、性が日の当たるところに存在する、その他のものと平等に肩を並べられるようになることなのです。

　いかに色を好んだところで、性を尊重できない以上は“ふしだら”では有り得ても、「性的解放」とは無関係です。確かに日本の性産業、ポルノ産業の規模は過去よりも大きくなったかも知れませんが、だからといって性産業やポルノ産業が社会的な敬意を払われるようになったかと言えば、その点では進歩が見られません。むしろ欧米人をドン引きさせるほど性に開放的だった江戸社会の方が、性を卑賎なものとすることが少なかったと考えれば、日本の性的開放度は後退していると言えるでしょう。

　例えばスポーツ選手であった場合、その選手のファンであることは、その人を尊敬することと容易に結びつきます。しかし性産業の場合は違います。あるポルノ女優のファンであるからといって、そのポルノ女優を尊敬するかと言えば、そうしたケースはほぼ０です。性を楽しむことはあっても尊重はしないわけです。そしてこの消費はすれども尊重はしない、こうした性に対する態度への批判ですが、往々にして「尊重しない」ことに対してではなく、「消費」そのものに批判が向けられます。

　性を尊重しないことが悪いのではなく、性を楽しむことが悪い、こうした立場からの批判もまた性への抑圧です。つまり、性を楽しむべきではない――性は管理されるべきである、性は人の目に触れる場所におかれてはならない、性は少ない方がよい――とする考え方は、言うまでもなく性への蔑視を強く表明しています。性を卑しむべきもの、日の当たる場所から遠ざけるべきものと見ている点で、実は性を楽しみながらも性を尊重しない人々と大差のない発想なのです。

参考、エロは解放ですから

　「性的開放度」とは要するに、性が尊重されているかどうかです。性が消費されている度合いではありません。いかに性が消費されようと、それが隠すべきもの、恥ずべきものと扱われている限り、性的開放度は世界最低ラインを争い続けるでしょう。もっと性的なものが誇りを持って語られる、性的な魅力が他の魅力、例えば学力や職務上の能力などと同様に、日の当たるところで尊重されるようにならなければ「解放」の日は訪れません。

 

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