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ノーモア・コイズミ

労働者の権利

2011-05-28 22:58:17 | ニュース

国家公務員給与削減、連合系労組が合意 5~10%案に(朝日新聞)

 東日本大震災の復興財源を確保するため、菅政権と連合系の公務員労働組合連絡会(連絡会)は23日、国家公務員給与の削減幅について合意した。課長以上の幹部を10%▽課長補佐・係長を8%▽係員を5%それぞれ削減する。ボーナスは一律10%減らす。給与法の改正後に適用し、2013年度末まで実施する。

 菅政権は当初一律10%減で3千億~4千億円の確保を目指したが、削減幅で譲歩した。片山善博総務相と連絡会が同日協議し合意した。政権は労働基本権を拡大する国家公務員制度改革関連法案とともに、給与法改正案を6月3日に閣議決定したい考え。法案が成立すれば人事院勧告を経ない削減は初めて。

 元より公務員の給与カットを「目的」としてきた現内閣ですけれど、震災という「追い風」を得て勢いづいたのか、ついに人事院勧告を経ない給与削減に踏み込んだことが伝えられています。こういう労組側が反対しにくい状況での断行は卑怯ですね。元より給与カットで確保される財源は一律10%減で3千億~4千億円とのことですから、係員を5%の削減に止めたとなると2千億円強という辺りになるでしょうか、90兆円を超える歳出から見れば微々たる数値でもあります。歳出から見れば0.2%程度、この辺は景気の動向次第で簡単に飲み込まれてしまうレベルです。売上アップではなくコストカットで利益を確保することを是とする日本的経営感覚からすれば好ましい政策に見えるのかも知れませんが、給与所得者の生活に与える影響の大きさに比した予算の捻出効果は大いに疑わしいところです。まぁ、叩けば叩いた分だけ支持が得られるのが公務員というものですから、政府の人気取りとしては悪い策ではないのでしょう。

 さて「公務員労働組合連絡会」が削減幅について合意したことが伝えられていますが、別に公務員全体や、全ての組合が同意したというわけではありません。日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)や国家公務員一般労働組合(国公一般)は今回の削減案に反対しているようです。

根拠なしルール無視の国家公務員賃下げ強要は認められない-改めて大臣による説明求める(国公労連)

625万人の「国民生活を第一」に破壊する国家公務員給与10%カット-人間と経済つぶす悪循環(国公一般)

 国公一般に関しては原発がらみで俗論の垂れ流しに終始する姿勢を露わにしたばかりでもあるだけに、給与カットに関する分析でも自説に都合良く物事を歪曲していないか疑わしく思わざるを得ないところもあるのですが、ただ論拠の公平性はさておき直接の利害関係者として自身の権利、自身の取り分や地位を守るために声を上げる資格はあると思います。部外者から見れば利権の類であろうとも、自己犠牲を強要される謂われはありません。労働者として、あらかじめ定められた賃金を受け取る権利は誰にでもある、労働条件の不利益変更を迫られたときに抵抗する権利は必ずあるはずです。非常事態にかこつけた強引な賃下げには労働者として断固、立ち向かうべきです。

 一方、東京電力に関しても給与カットや人員整理、年金の減額などが迫られています。労働者として、この事態にどう向き合うべきでしょうか。


東電社員がテロ予告?原発を盾に恫喝発言連発(探偵ファイル)

「ああそうそう、なんでウチの社員に給与出すんだなんて言ってる人たちがいるけど、ウチの社員結構現金な人多いから、給与カットした瞬間に仕事しなくなるよ。福島も柏崎も同時にメルトダウンするし関東も大停電して復旧しない。 それでもいい?ww」

「ちなみに冗談のように聞こえるけど、働いてる社員がやる気なくして全員帰ったらメルトダウンだって普通になるし、首都大停電も普通に起きる。これは紛れもない事実。」

 出所が出所なので真偽の程は怪しいものですが、上記引用は東京電力社員を自称する人の書き込みとされるものです。いうまでもなく激しいバッシングにあったようですけれど、言い回しはさておき東京電力同様に人件費削減を迫られたJALの場合はどうだったでしょう。強引なリストラに空の安全を危惧する人も多数派ではないながらも存在しましたし、年金受給権に関しても理解を持った人はいたわけです。しかるに東京電力の場合は? 私は労働者として、企業の責任とは別に労働者の権利は守られるべきだと思いますし、社会インフラを運用する上での安全面もまた考慮されなければならないと思います。事故を起こした企業の責任は問われるとしても、過度なバッシングによって本来業務を滞らせインフラを危うくするようなことがあっては社会全体にとってもマイナスになりますし、そこで働く労働者には自身を守る権利があるはずです。東京電力の労働者が自身を守るために声を上げるなら、私も労働者の一員としてそれを応援するつもりです。

 しかるに上述した国公一般なんかは東京電力に対する社会的憎悪を煽る側に立ってきたわけです。まぁ、このご時世ですから東京電力を叩く側に立っていた方が幅広い支持を得やすい、得策であることには違いないのでしょう。でも東京電力で働く労働者の立場に対してはどうなのかな、と首を傾げずにはいられません。敢えて世間を敵に回すこととなろうとも、労働者の権利を守るという立場から東京電力社員の権利をも守ろうとするのなら尊敬に値することですが、東京電力という嫌われ者を罵る一方で自身の労働者としての権利を守ろうとするのなら、これまたムシのいい話でもありますよね。まぁ自分を守ろうとするのを否定はしませんが、同じ立場に置かれた人を守る意識も持つべきではないでしょうか。どのみち公務員も東京電力社員も、世論上はどっちも「敵」であり、世間の認識上はどっちも高給取り、似たもの同士なんですから!

 

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 本文とはあまり関係がありませんが、今後は不適切な測定が流行りそうな気がします。例えば公務員給与の場合、ホワイトカラーの正規職員の平均給与と、パートタイムまで含めた全職種の労働者の平均給与を並べて論じるのが一般的です。これは条件が全く異なりますので比較対象としては甚だ不適切ですが、公務員叩きに好都合であるためによく用いられてきました。そして今後は、「地面に擦りつけて放射線濃度を測定」みたいな誤った測り方が一般化するのではないでしょうか。これまた特定の目的以外には不適切なものであろうとも、東電叩きや反原発論には好都合ということで頻繁に行われるものと予測されます。どうにも不合理な叩き方が許される社会の「共通敵」が新たに増えたのだと、そう私には思われてなりません。


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9 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (とおる)
2011-05-29 06:17:15
民間でもごく一部では、今回の給与カットについて疑問の声が出ているんですけどね。

「国家公務員の給与カット表明に熟慮と覚悟があるか」
http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2011/eye110516.html

でも、大半はカットは当然で、カット率が低いって声になっていますね。一部雑誌では、この給与カットは民間にも波及するよって警告も出してますが、それも馬の耳に念仏状態という感じです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-05-29 18:55:26
>とおるさん

 ただ公務員の給与カットに対しては懸念を表明する声はあっても、東京電力に突きつけられた人件費削減要求に関しては、危惧する声が皆無なんですよね。安易な労働条件の不利益変更が認められれば、それは当然のように社会全体に波及するものですが、しかし東京電力という「嫌われ者」は見捨てようとしている、その辺に限界を感じます。
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Unknown (ルーピー)
2011-05-29 20:21:22
 総ガマン比べ社会になってますね。「自分はここまで身を切った。次はお前達もだ」という態度に、一人一人がなっているのが問題ですね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-05-29 22:35:37
>ルーピーさん

 私などは、我慢などしないで済めばそれに越したことはないと思うのですが、世間の風潮は我慢を重ねた方が「善」みたいなところがありますからね。そして事故を起こすなど「悪」をなした人は、その償いとして身を切ることが求められるわけです。そんなことをしても解決には繋がらないにも関わらず!
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Unknown (こっぱなお役人(北のほう))
2011-05-30 00:18:25
実は国公は連合系がかなり少ないうえ、自治労様(公務員連絡会の最大派閥)が、「自分たちに影響なければOK」という方針できたので被害を受ける他の労組(脛に傷がある組合が2つ…しかも有力)も折れざるを得なかったというのが真相かな~と思います。
まあ、私の考えていた最悪のシナリオ「俸給は全額支払うが、そのうち1割を強制寄付(ちなみにこれは国家公務員だけができる最悪シナリオで地方公務員や民間でやるともれなく労基法違反で捕まりますが、所得計算上では一切変わらないので所得税を今までどおりに取れる)」ではなかったことついては胸なでおろしてますが、どこをどう考えても「パンドラの匣」を開けたような気がします。
 今被災地のために考えなければいけないのは、「どうやって被災地にお金を回すか?」の1点のみです。寄付や義捐金よりも東北でできた製品や農産物を購入することでより効率的な復興が可能になるのではないかと思うのですが、そのための家計を傷めつければ消費なんてできません。企業にしても最終消費者が家計の場合最低限は買ってもらえるかもしれませんが、そのパイは確実に減るのでダンピング競争が始まってしまいます。観光業に至っては「余裕のあるときに」観光をするのですから余裕削りとられれば、壊滅的な被害を受けるのは火を見るより明らかではないでしょうか?そして、給与(賃金)が下がれば必然的に所得税の税収が下がります。おそらく国家公務員の賃下げ分を全部吹っ飛ばす位に所得税、そして消費税の税額が減ると思われます…
 それに私だって言いたい…国道がすべて管理放置したら、…(ダムもひっくるめて)河川で管理放棄したら…雪国で除雪を行わないとどういうことになるのか…乞うご期待ですね(苦笑)
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分断統治の二項対立 (不備)
2011-05-30 00:49:14
 売り上げが上がらないから給与カット、成果が思わしくないないから研究費カット、災害を起こした会社に所属しているから賃金カット、etc...
 拘束時間含めて労働に従事したことに対して支払われる対価が賃金なのに、+αがないと基本的なその額から差し引かれてしまう。そして、それを見て、「ざまを見ろ」という人が居る。

 世間では自粛だの削減だのより、消費して経済をまわそう、という志向が出てきていたのに、消費層の賃金を下げ、「民間」にもその波を波及させるような政策を取るとは。
 これは下中の下策だと言えるんですが、やはり分断統治の論理では目先のことしか考えていない、ということなのかも知れませんね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-05-30 23:25:49
>こっぱなお役人(北のほう)さん

 どうせ強制的に徴収するなら累進課税が筋と思われるのですが、「寄付」を「強制」するみたいな、自主性を強要する動きはありますよね。まぁ、今回はそうならないだけでもマシだったと思うほかないのかも知れません。

 さて被災地にお金を回すには、お金を持っているところが財布の紐を緩めるしかないのですが、しかるに民間は自粛ムード、企業は電力不足で大幅な制約を科され、残る政府筋の動向は……

>不備さん

 ことによると経済を回そうという発想より先に、イデオロギー的な理想があるのではないかという気がしますね。労使間の力関係を強固なものにしたい、勧善懲悪的に「悪い奴」「役に立たない奴」の賃金を引き下げたい、贅沢や「我欲」を戒めたい――こうした思惑が経済合理性を蹴散らしているのが日本経済なのだと思います。
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Unknown (アンフス)
2011-06-02 14:52:55
公務員は国家に就職しているも同然なわけで
国が危うい際に賃金カットされるのは当然と思いますが。
むしろそんな覚悟も無くガタガタぬかす公務員なんぞ害悪でしかない。直ちに辞めていただきたい。

まぁ、削減するにしても平の若い連中からではなく、利権が絡みに絡んだ高給取りの管理職を中心に引いて欲しいものですがね。
公務員とは言え、出世するまでは生活で精一杯と聞きます。何事においても未来ある若者が割を食う社会とは嫌なものです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-06-02 23:26:37
>アンフスさん

 何というか、いかにも典型的な、経済誌を読んで「わかったつもり」になっただけで現場を知らない人の言葉ですね。そもそも就職先たる組織の経営が悪い場合に損を負うのは経営者であり株主であるのが本来の資本主義なのですが。
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