休む理由は「黒ネコに遭遇」? ユニークな口実で有給休暇を取得(産経新聞)
「黒ネコが家の前を横切ったので、仕事を休みます」-。婚礼プロデュース業の「ノバレーゼ」(東京都中央区、浅田剛治社長)は3月から、ユニークな口実で有給休暇を取得できる「アイデア休暇(通称・エープリルフール休暇)」制度を導入した。既に「モナコグランプリに参戦する」として取得した社員もいるという。
ここ数年、ワークライフバランス推進のため、「失恋休暇」や「ボランティア休暇」などユニークな休暇を導入する企業が増加。同社は「ユニークな話で社員を笑わせ、休暇でリフレッシュすることで、顧客のもてなしにも社員コミュニケーションにも良い作用が生まれる」と説明する。同社に3カ月以上勤務した正社員と契約社員が取得できる。
ちなみに、冒頭の「黒ネコ」のほか、「大リーグからオファーが来た」「チョモランマに登る」などはOKだが、「ユーモアに欠けた場合は再申請が必要」だという。
ユーモア云々はさておき、これ自体は日本の労働環境に適した良い方法だと思います。基本的に日本の職場では有給休暇が取りづらい、「やむにやまれぬ事情」みたいなものを説明できないと白眼視されがちです。「どうしても休むしかない事情」があればともかく、単に「休みたいから」「疲れたから」「遊びに行きたいから」「会社に来たくないから」などの理由で有給を申請すると上司から睨まれる、大体の職場はこんなものですよね。「正当な理由なく有給休暇をとってはならない」みたいな暗黙裏の「社会人の常識」が蔓延っているわけです。
何か特別な事情でもない限り有給休暇を使用しづらい――そういう環境においては、この「アイデア休暇」制度は職場環境の改善に有効性が高いのではないでしょうか。有休を使いたくても理由がなくて申請できずにいる人にとって、これはチャンスです。有休を使う理由を問われたときに、普段なら上司のお眼鏡に適う理由が挙げられずに嫌な顔をされるところですが、この「アイデア休暇」ならば問題ありません。堂々と嘘をつけばよい、しかも会社の制度として嘘をでっち上げることが定められているのですから、嘘を本当らしく見せる必要もない、適当に口から出任せを言えば済むわけです。まぁダメな上司ならその先に「本当の理由は? 何か用事でもあるの?」とか訊いてきそうな気もしますが、ともあれ有休を取りやすくするためには良いアイデアと言えるでしょう。有休を取るのに理由など必要ない、この当たり前のことを日本で実現させるためには、「アイデア休暇」は妙手です。
ところが、せっかくの「アイデア休暇」制度を導入したノバレーゼ社の報道資料によると「付与日数は、毎年1月1日から12月31日までの1日とします」とのこと。要するに、それ以外の10+αの有給休暇に関しては通常と同じ運用、ノバレーゼ社が「普通に日本的」な会社であれば、おそらくはもっともらしい理由を示すことができなければ有休を使うことに対して冷たい視線を注がれるものと推測されます。これでは、単なる話題作りにしかなりませんね。あらゆる有給休暇に際して理由を実質不問にするのであれば他社にも見習ってほしいところですが、たかが1日では単なるネタ止まりです。
暖房節約のために有給休暇あまりとりませんがね
遊びに行くお金ないから
だから取らない取らせてはくれますハイ「仕事単純だし雑用だから」賃金安くても有給休暇取れないんだよ!
遊びにいけないし、関係なくはない!
そしてこれを取得出来ていると言うことは逆に当然法定有休も消化されているだろうことが推測出来るわけで。
「もっともらしい理由を示すことができなければ有休を使うことに対して冷たい視線を注がれるものと推測されます」というのはちょっと邪推が過ぎると思いますよ。
金融機関は、不正防止(着服等の防止)のため年間1週間(5営業日)連続休暇取得が義務になっています。取得状況が悪ければ御当局(金融庁)から改善を求められます。さらに社内的には一定期間ごとの休暇取得義務があって、内部統制部門から厳格に監視をうけます。合計年間11日ぐらいは義務的休暇取得となります。この間「親展」以外の郵便物は開封され、机の引き出しの中も検査されます。また、他の担当者が顧客に接触して不正の兆候が無いか探ります。
ユーモアも何にもありませんが、昨今流行りのコンプライアンス強化として、他の業種にも広がれば多少は改善するかも。でも強烈に不正を疑われていることになるので気分は悪いか……
まぁ結局、話題作りですからね。遊び心だけで終わり、なかなか待遇改善までは行かないのでしょう。
>RRDさん
当たり前です。法定有給休暇にプラスしての付与である旨は本文にも書いてあるでしょう? しかし、+αの有給制度があるからと言って法廷分が消化されていると考えるのは、あまりにも労働現場の実態から乖離した発想です(まぁエコノミストやコンサルタントだったらその程度の認識でしょうけど)。話題作りのための+αの有給だけは消化されるけれど、本来の有給は未消化として積み残されたままで終わるのが、日本の標準的な職場なのですが。
>northeastさん
たしかに、有給が有名無実化しているだけに強制的にでも休ませる仕組みは解決策の一つになってしまうのかも知れませんね。自分自身の都合ではなく、組織の都合上で必要な休みであるのなら、それは有給とは別の枠で扱われるべきだと思わないでもありませんが、それぐらいしないとダメな気もしますから。
「権利を権利として主張するのは義務である」みたいな格言がありませんでしたっけ?
権利を主張して闘うというシミュレーションを欧米など民主主義国の人権教育では取り入れられてるんですが、日本の教育ではお目にかかったことがありません。
大半はそのまま社会に出て行くわけですから、こんな風潮が受け継がれるのでしょうね。
日本ですと権利を主張することが「わがまま」みたいに受け取られてばかりですからね。「権利」というものが根本的に理解されていないのかも知れません。権利を教えるかわりに義務を教えたがる風潮は強まるばかりですし……