日本経団連の米倉弘昌会長は8日の記者会見で、「日本に忠誠を誓う外国からの移住者をどんどん奨励すべきだ」と述べ、人材の移動が自由化される環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の参加を、改めて促した。
米倉会長は「将来の労働力は足りず、需要をつくりだす消費人口も減る」と述べ、積極的な移民の受け入れが必要との考えを強調した。
ちょっと前のニュースですが、いかにも日本の財界人の考えそうなことと言えます。とりあえずTPP参加や外国からの移住を奨励することに関してはさておき、この移住者に「日本に忠誠を誓う」と冠が載せられているのはどうしたものでしょうか。まずこの場合に「日本」とは何を指すのか、あるいは「忠誠」と言うからには単にビジネス目的の来訪者は歓迎しないのかと、ツッコミどころは多々あります。たぶん、国内企業にとって脅威となりかねない外資系企業の進出は望んでいないのでしょう。そうではなく、来て欲しいのはあくまで企業が搾取できる対象としての「忠誠を誓う」外国人である、そう考えた結果としての発言であるように見えます。
で、「将来の労働力は足りず~」とは決まり文句のようなものとなっていますけれど、しかしこの10年来の雇用情勢を考えてください。特定業界への偏在はあっても、総数として労働力が不足することなど微塵もなかったはずです。ましてや昨年頃からは空前の「超」買い手市場で、今や中小ブラック企業でも大学新卒者を選り取り見取りの時代です。先日の記事でも取り上げましたけれど、企業業績の好調ぶりとは裏腹に採用抑制はエスカレートするばかり、にも関わらず企業側は「もっと容易に社員を解雇できるようにしろ!」と叫び続けているほどです。これだけ労働力が余っている、景気回復が続いても労働力の需給ギャップは大きくなるばかりで今後もより一層、就職できない人は増えることが予測される中で、「将来の労働力は足りず~」などと言えるのは、あまりにも現実を知らない人間の言葉としか思えません。
参考、労働力が不足するから労働力を輸入するのではない。労働力の再生産にコストを払う気が無いから労働力を輸入するのだ - 模型とかキャラ弁とか歴史とか
上記リンク先のエントリは秀逸ですので一度お読みになることをお勧めします。この表題が明言する通り、財界筋が移住者を積極的に受け入れよと説くのは、断じて労働力が不足するからではなく(余っているのですから!)、あくまで労働力の再生産にコストを払う気がないからです。「需要を作り出す消費人口も減る」と経団連会長は語っていますが、そもそも需要を作り出す力が弱まったのは企業が従業員に払うべき給与を削り続け、国民の可処分所得を減らしてきた(その代わりに企業収益を増やした)結果であり、消費人口が減るのは随分と先の話でしょう。その消費人口の減少にしたところで、労働環境の悪化や低賃金が少子化を後押ししてきた結果でもあります。労働力と消費人口を再生産するために適正なコストを投じてきたのならば、その将来的な減少は回避できるはずなのですが。
本来なら雇用主が従業員に適正な賃金を支払うことで国民の可処分所得も増え、それで内需も高まるものなのです。しかるに企業側が資本を蓄積させるばかりで労働者側に還元しないことで、このサイクルを意図的に破壊してきたのが近年の日本経済と言えます。圧倒的な国際競争力を背景にして国家レベルでは巨額の経常黒字を蓄えながら、なぜ日本は貧しくなるばかりなのでしょうか。働く人の取り分を削って会社の利益を確保する、国内でお金を循環させずに海外にモノを売って外貨を稼ぐ、こういう野蛮な収奪型のビジネスモデルが持続可能なわけがありません。海外からの移住者という新たな搾取の対象を探ることで日本的なビジネスモデルの延命を財界筋は図っているようですが、こんなやり方を許している限り日本経済の凋落は終わることがないでしょう。
さて、今まで財界はあえて現状に目をつぶり企業を肥え太らせ、労働者を搾取する為、とんでもを言ってるんじゃないかと思ってましたが、本当は経済なんかしらない世の中も知らない、そして常識もしらない本気の大馬鹿揃いな気がしてきました。
そんな本物の大馬鹿が社会を回している国、恐ろしい国日本です。
労働者と言っても企業からすれば、石油や鉄鉱石とかの原材料に変わりはないですね。
ただ、消費(消耗)させられるだけですから。
働き始めて調子どうですか。
風邪には気を付けてください。
で、今日送りました記事ですが「カス以下のクソ野郎」的なものの言い方する連中の多さに、怒りそのままで書きました。管理人さんがこの記事でふれられていた内容もそうですが、誰かを人間扱いしない事で自分を正気に保とうとする人が多いのにゲンナリきます。
今日はここにて失礼します。
どこまで甘ちゃんなんでしょうかねえ、財界は。
どうも日本の財界筋の議論は、「金儲け」よりも「勝ち負け」に目が向いている気もしますね。いかに「雇う側」が「雇われる側」に対して優位に立てるか、その辺を追求するためなら経済合理性すら無視するほどです。
>ピンク映画好きさん
結局、財界のご機嫌を伺うばっかりで、抜本的なことには手を付けようともしないですからね……
>珍坊痔漏さん
それゆえに「いかに企業に富を集約させるか」という基準で政策が決定され、国全体で見れば貧しくなるばかりの結果を招いてしまうんですよね。日本で働く人を豊かにすることなくして国の発展などありえないのですが、それでも「企業さえ儲かれば」という経済論が幅を利かせているのですから話になりません。
>伊東勉さん
いやはや、仕事の方は通勤に時間が掛かる上に残業も長くて辛いです。シノギに時間を取られたくはないものですが、何せ働く人にお金を回そうとしない時代ですから、何事もままならないものです。
>元大阪府民からの伝言さん
ただまぁ、分断統治には実績のあるのが日本企業ですから、外国人を搾取するノウハウにも自信があるのでしょう。日本人のように雇用側に従順な人材は得がたいと思いますが、その時はクビを切ってまた入れ替えればいいぐらいに考えていそうですし。