非国民通信

ノーモア・コイズミ

働く人までは思いやれないようです

2009-11-09 22:56:40 | ニュース

「思いやり予算」1164億円も事業仕分け対象(読売新聞)

 政府の行政刷新会議は2010年度予算の概算要求から無駄を洗い出す「事業仕分け」で、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)のうち、基地従業員の給与に充てる労務費を取り上げる方針を固めた。

 概算要求額で1919億円の思いやり予算のうち、1164億円が対象となる。仙谷行政刷新相が岡田外相や北沢防衛相らと調整し、週明けの同会議で決定する見通しだ。

 在日米軍基地では、司令部の事務職員やレストランやゴルフ場などの娯楽施設職員として計2万5499人(08年度末現在)が働いている。日米両国の特別協定に基づき、このうち2万3055人分の給与は日本政府が、残りは米軍が負担している。この日本側負担分が仕分けの対象となる。

 従業員は日本政府と雇用契約を結ぶが、身分は公務員ではなく、民間労働者と同じ扱いだ。ただ、給与水準は政府が毎年決定しており、国家公務員とほぼ同じとなっている。

 民主党は野党時代から給与水準が高すぎると指摘していた。労務費を仕分け対象とする方向なのもこのためだ。ただ、従業員数は協定の期限が切れる11年3月末まで変更できない。このため、同会議では、給与水準を基地周辺の民間企業並みに減額することを念頭に置いており、「十数億円程度の削減は可能だ」(政府筋)と見ている。

 う~ん、見出しを目にした段階では「おっ」と思ったのですが、中身を見てがっかりです。かのアンタッチャブル、思いやり予算に手を付けるということですから民主党も偶には良いことをするなと糠喜びしてしまったのですが、蓋を開けてみたらこの通り、国が雇っている人の人件費を削ろうという話でした。なんでぇ、いつもの民主党かよ。

 米軍が利用する福利厚生施設ですから、その費用を米軍が負担するのは当たり前のことで、日本側が費用を持つのはおかしい、だから見直しが必要だというのは当然の流れです。しかし、そうであるならば日本政府と米軍との費用負担割合を見直していくのが筋ではないでしょうか。日本側の負担を減らすと言いつつ、米軍へのサービスはそのまま継続する、ただ従業員の給与が減るだけ、これってどうなんでしょう? 給料は減らすけれど今までと同じように働きなさい、なんてことを言い出したら、これはまさに雇用側の横暴でしかありませんよね。

 日本に米軍基地は必要ないでしょうけれど、基地関係で働いている人の雇用のことは気になります。基地がいるかいらないかと問われれば、迷わず「いらない」と答えますが、敢えて米軍基地の存在を肯定的に評価できる点を探すとしたら、基地もまた一定の雇用を生むという点だと思います。雇用は大事ですから。しかるに沖縄米軍基地の移設問題でも煮え切らない民主党政権、基地関係の雇用に関してはなおさら冷淡ではないでしょうか。

 労務費を削減した場合でも従業員数の減少にはならず、給与の減額は米側が給与を負担する従業員にも適用されて経費削減につながるため、政府は米側の理解を得られると見ている。

 日本側が費用負担している従業員の給与をカットした場合ですが、従業員数は維持される(=米軍へのサービス体制は維持される)ことと、日本側の賃金カットに合わせて給与水準が下がる=米軍側の負担する人件費も減ることから、「政府は米側の理解を得られると見ている」そうです。ふむ、やはり米軍と事を荒立てるつもりはないのでしょう。しかし予算を削減するからには、どこかが泣かなければなりません。米軍には何一つ負担を負わせないで予算を減らすとなると、代わりに涙を呑まされるのは……

 ただ、給与減額になれば、基地従業員が作る全駐留軍労働組合(全駐労)が反発するのは確実だ。全駐労は民主党の支持基盤である連合の傘下だが、同党が協定案に反対した08年には衆院補選での選挙協力を見直す構えを示したことがある。

 言うまでもなく、割を食うのは基地従業員です。日本政府にとっての重荷である思いやり予算を、米軍の機嫌を損ねることなく切り詰めるために犠牲を強いられるのは、この思いやり予算から給与を受け取ってきた人々になるわけです。まぁ自治体の予算削減でも、人件費を切り詰め官製ワーキングプアを量産していくのが昨今の流行ですから、米軍基地の雇用も同じ道をたどるのかも知れません。しかし、それでいいのでしょうか?

 繰り返しになりますが、米軍のための福利厚生施設である以上、日本政府が費用を負担するのは必然性のない話です。そうであるからには思いやり予算の見直しも欠かせないわけですが、米軍との関係の見直しを抜きにして単に予算額だけを圧縮するのは、何かが抜け落ちてはいないでしょうか。利用者である米軍側に費用負担を求めていくのではなく、サービス提供側である従業員の給与を削減するのは、我々が期待してきた思いやり予算の見直しとは一線を画するものです。日本政府が費用を負担していたものを、代わりに日本人従業員の労働強化によって置き換える、これでは負担を政府から労働者に付け替えているだけであり、労働者を犠牲として政府の体面と財政を守ろうとする、最悪の選択と言えます。

 

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6 コメント

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おもいやり予算ねぇ~ (最下層公務員)
2009-11-10 00:22:42
私は在日米軍完全撤収すべきと考えています。
ちなみに、一度だけ米軍基地のゴルフ場でプレイした事があります。今はゴルフなどする身分ではないと前市長様の有り難い主義により、年2ゴルファーです。

あそこのプレイフィーって兵士や軍属は、おそらく二千円程度かもしくはもっと安いみたいです。
それが、日本人従業員の最上位ランク(コネの様です)が少し乗せて流す、次のランクの人が更に乗せて流すってな具合で卸売りしていくんです。
これって、終戦直後のヤミのシステムそのままです。ここで最初に出した米軍将校の懐にまず入るのです。殆どが日本人の客です。米兵の為の保養施設が個人の利潤追求に使われているんです。
アメリカ人ってソ連が嫌いだったし、健康保険さえ共産主義だって言ってるのにソ連時代の横流しと同じ事は好きなんですね。
話題がズレちゃいました。
一にも二にも、賃金の確保、これを手付けずで何をやっても、生まれるのは失業者だけです。
今沖縄の事もありますし、つい米軍基地問題に思考がながれてしまいました。
すいません。
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Unknown (源内山人)
2009-11-10 13:33:49
>>これでは負担を政府から労働者に付け替えているだけであり、労働者を犠牲として政府の体面と財政を守ろうとする、最悪の選択と言えます。

まったくその通りですね。結局、内弁慶なんでしょう。それにしてもやり方が姑息です。基地で働く人たち・・公務員扱して悪者扱いですか・・かわいそうに。
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思うこと (ヒイロ)
2009-11-10 22:44:24
「働く」ということに対して「ねぎらい」とか「いたわり」を込めるように言われてきました。
そう言う経緯があるので、思いやり予算の削減が糠喜びにすぎなかったことが自分でも嫌になります。
純粋に米軍に対しての費用を削減するものだと思いこんでしまいましたので。
米軍の撤退は望ましいにしても、基地で働く人のことがあるので、完全には言い切れません。

安保や米軍基地の維持を求める人々はこのことをどう思うかを知りたいです。
「民主党のやることは気に入らない」で終わりにしてしまい、労働者の雇用環境を維持することに対しては「ありえない」とか「左翼的」で切り捨てそうですが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-10 22:56:18
>最下層公務員さん

 むしろ自分たちの嫌っているものに似る、そういう場合もありますよね。極右層が中国や北朝鮮的な政治体制を日本に望んでいるように、米軍もまた……なのかも知れません。そして我らが日本政府はどうでしょう、民主党が否定したはずの自民党政治を継いでしまうようでは……

>源内山人さん

 米軍との間に軋轢を生む度胸はなく、むしろ(実質上の)公務員と労組を締め付ける、国民向けにはウケの良いパフォーマンスかも知れませんが、働く人にとっては災難でしかない、在日米軍との関係も解決に向かわないまま、最悪ですよね。

>ヒイロさん

 私自身、思いやり予算の見直しと言ったら米軍への負担の肩代わりを減らすものとしか考えてこなかったのですが、まさか日本側の従業員給与を減らそうとは大いに失望させられました。たぶん、安保や米軍基地に賛成している人からも歓迎されそうな方針ですよね、米軍への奉仕は維持、(半)公務員の給与はカットですから。
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米軍基地問題 (最下層公務員)
2009-11-10 23:56:43
たまたま米軍基地問題で他のサイトで議論がありました。テーマは在日米軍はいらないみたいなテーマでしたから、議論の出発点は違いますが、この様な意見がでてました。在日米軍がきれいさっぱりいなくなれば、おもいやり予算どころか大幅にお金をださなくて済みます。それで余った予算を雇用に回せばおつりがくる。それと米軍基地は利用価値の高い場所が多い。開発にいくらか必要にはなりますが、経済効果がかなり期待できる。
在日米軍が存続してる前提ならこんな話しにはなりません。
仰る様に、またも賃金カットの事か、、、、、、ですね。
ただ、保養施設で働く人達って、いままでの自民党理論によると日本を守ってる人達に含まれるんでしたね。これって防衛聖域に触れない微妙な存在ですね。両方の手の届かない見捨てられた存在になりそうですね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-11 00:07:23
>最下層公務員さん

 経済効果云々は……風が吹けば何とやらと言うほどではありませんが、ちょっと都合の良すぎる話に見えますね。子供からゲーム機を取り上げれば勉強するようになるわけではないのと同じように、どこかムダな予算を削れば他に有効な使われ方をする、とは限らないわけですから。結局、「ムダ」と呼ばれたところが割を食って終わる可能性が高くて、米軍で働いている人はその犠牲にされてしまうような気がします。

 ちなみに米軍への海上給油活動など兵站行為は軍事活動に当たらないと強弁してきたのが自民党政府でしたが、米軍施設で働く人もその論法ではじかれてしまうのかも知れません。武器を持つものだけが防衛聖域に含まれる、と。
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