非国民通信

ノーモア・コイズミ

同じ調査に基づく報道

2015-03-25 22:53:06 | 政治・国際

地域格差が悪化、6年ぶり高水準 景気回復実感広がらず(朝日新聞)

 地域格差が悪化していると感じる人の割合が6年ぶりの高水準になったことが、内閣府が21日付で公表した「社会意識に関する世論調査」でわかった。景気悪化を感じる人の割合も1年前より大幅に増えた。アベノミクスによる景気回復の実感が広がらず、格差の拡大を感じる人が増えている実情が浮かび上がった。

(中略)

 「悪い方向に向かっている分野」(複数回答)との質問では、「景気」を挙げる人の割合が30・3%と昨年同期の調査より11・3ポイント増えた。「地域格差」は29・6%と5・9ポイント増で、2009年の調査の31・3%に次ぐ6年ぶりの高い水準となった。

 

 さて内閣府の世論調査が公表されまして、それを新聞各社が報道しているわけです。まずは偏向報道のチャンピオン・朝日新聞ですが、「地域格差が悪化」と見出しに掲げています。しかし、地域格差が悪化していると「回答した人」が「29.6%」であることが伝えられこそすれ、実際に地域格差が広がっているかどうかを判断できるようなデータは提示されていません。まぁ、そういうメディアなのでしょう。しかし29.6%と言うのも微妙な数字ですね。反対に地域格差が広がって「いない」と感じている人が果たして何%いるのか、気になるところでもあります。

 

内閣府調査:「アベノミクス」恩恵実感できず(毎日新聞)

 内閣府は21日、「社会意識に関する世論調査」の結果を発表した。現在の日本の状況について「悪い方向に向かっている」と思う分野を複数回答で尋ねたところ、「景気」が30.3%で、昨年1月の前回調査から11.3ポイント増えた。「良い方向に向かっている」分野では「景気」は同11.6ポイント減の10.4%にとどまり、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵を国民が実感できていないことがうかがえる。

 

 次は毎日新聞です。これも意図的なチョイスを感じないでもない見出しですけれど、あまり突っ込む要素はないでしょうか。実際のデータではなく感覚論に根ざした景気判断という点では朝日新聞と同等ですが、大元が世論調査であることを差し引いても、新聞なんてのは概ねそういうものですから。

 

内閣府世論調査 75%が「愛国心を育てる必要あり」…否定的な回答を大きく上回る(産経新聞)

 内閣府が21日付で発表した「社会意識に関する世論調査」で、「国民の間に『国を愛する』気持ちをもっと育てる必要があるかどうか」を尋ねたところ、75.8%が「そう思う」と回答した。平成26年の前回調査比で0.5ポイントの微減だが「そうは思わない」(12.5%)との否定的な回答を大きく上回った。教育現場などで愛国心を養う機会を増やすべきだという意見が大勢を占めた格好だ。

 他の人と比べて愛国心が強いかを聞いたところ、55.4%が「強い」と答え、「弱い」と回答したのは6.6%、「どちらともいえない」は37.9%だった。

 国民が「個人の利益」と「国民全体の利益」のどちらを大切にすべきかを尋ねた質問では、「国民全体の利益」が50.6%と、20年の調査から8年連続で半数を超えた。「個人の利益」との回答は31.4%だった。

 

 ネタ的に面白みのない毎日新聞とは対照的なのが産経新聞で、朝日新聞には政治色を隠して中立ぶる嫌らしさを感じるところなのですが、産経新聞には一種の突き抜けた潔さを感じないでもありません。引用した記事もとても同じ世論調査に基づいた報道とは思えないところ、でもまぁ探せばそういう項目もあるのでしょう。しかし産経新聞的には好ましい結果なのか嘆かわしい結果なのか微妙にも思えますね。例えば「他の人と比べて愛国心が強いかを聞いたところ、55.4%が『強い』と答え、『弱い』と回答したのは6.6%」とのこと、産経新聞としては愛国心の不足を訴えたいものと推測されますが、この世論調査を見る限り日本人の愛国意識は既に高めと言えそうです。

 あるいは「国民が『個人の利益』と『国民全体の利益』のどちらを大切にすべきかを尋ねた質問では、『国民全体の利益』が50.6%と、20年の調査から8年連続で半数を超えた」云々もどうでしょう。産経新聞は総じて個人主義に否定的、「公」という名の下に国家の利益を重視させたがっていたはずですが、やはり世論調査から見る限り、日本人は一貫して全体主義的、個人の利益よりも「全体」の利益を大切にすべきものと考えていることが明らかです。産経新聞が批判してきたような個人主義の横行など微塵も存在していません。

 そして「愛国心を育てる必要あり」云々も、やはり産経新聞が危惧するような愛国心の希薄化などとはほど遠い現状を窺わせる結果と言えます。日本人の愛国心は至って高いのが現実ですね。ただまぁ、「『国を愛する』気持ちをもっと育てる」という日本人の75%の考え方に私は疑問があります。国民に国を愛しなさいと教えるよりも、国が国民に愛されるよう努めることを求めるのが先というものでしょう。まぁ、個人の利益よりも全体の利益を尊ぶような社会においては、国ではなく国民の側が変わることを求められるものなのかも知れません。

 

悪い方向に向かう分野…「国の財政」最多39%(読売新聞)

 内閣府は21日、「社会意識に関する世論調査」の結果を発表した。

 現在の日本の状況で「悪い方向に向かっている分野」(複数回答)を尋ねたところ、「国の財政」を挙げた人が39・0%(前年比6・2ポイント増)で最も多かった。

 次いで、「物価」が31・3%(同5・6ポイント増)、「景気」が30・3%(同11・3ポイント増)だった。「景気」を挙げた人が急増したのは、昨年4月の消費増税後に個人消費が落ち込んだことなどが影響したとみられる。「良い方向に向かっている分野」(複数回答)でも、「景気」は前年の22・0%から10・4%に半減した。

 「悪い方向」で「外交」を挙げた人は25・2%で、前回38・4%から大幅に減少した。良好な日米関係に加え、昨年11月に日中首脳会談が行われるなど冷却化した日中関係に改善の兆しが見られることが背景にあるようだ。

 

 ……で、大手新聞社のトリは読売新聞を。これはまぁ他紙に比べると概ね客観的な報道ですね。景気が悪い方向に向かっている云々との項目で消費税に言及しているのは、ここで引用した4紙の中で読売新聞だけです。朝日新聞や毎日新聞としては「悪いのはアベノミクス」という方向に持っていきたい、そのためには民主党政権時代に決定された消費税増税のことなど言及したくもないのでしょう。それに比べると、疑いようもなく回復へと向かっていた景気の腰を容赦なくへし折った消費税増税の存在に僅かながらも触れている読売の報道は、随分と良心的に見えます。

 なお「外交」に関しては前回調査に比べて「悪い方向」に向かっていると回答した人が大幅に減少したことも伝えられています。安倍内閣のタカ派色を警戒する人も喧しい昨今ですが、確かに政権交代直後に比べれば箍が緩んできたようにも思えるフシはあるものの、世論調査上はむしろ昨今の方が外交面での改善が見られると、そう考えている人が多いようです。懸念材料が少なくないのとは裏腹に、意外や実際に衝突している場面が目立つようなこともない、その辺を感じ取っている人も多いのでしょうか。

 

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