非国民通信

ノーモア・コイズミ

「食」の修正主義

2014-11-16 23:23:33 | 社会

「餃子の王将」、なぜ本場中国で失敗したのか(東洋経済)

 しかし、日本に来ている中国人の多くが感じているように、「日本の中華」は中国人の味覚に合わない。味が濃すぎる。調理法が極端に「炒(いためる)」中心で「蒸(むす)」「烤(やく)」「燉(にこむ)」「炸(あげる)」などのバラエティに乏しいから、メニューが少ない。

 

 ここで挙げられている王将のような日本の中華料理チェーン店は元より、中国人が経営している街の中国料理店でもやっぱり中身は「日本の中華」になってることが多いですよね。決して「本場の味」ではなく、日本の客に合わせた味になっているのが普通です。そんな「日本の中華」を中国大陸に持ち込んで撤退する羽目になったのが王将で、引用元で触れられている以外にも日本的な労使関係が海外では通用しなかったとかもありそうな気がしますけれど、まぁ成功はしなかった、と。

 ……で、時には「日本人向け」の中華料理店ではなく、日本語ではない言葉を話す人々がたむろしている異境感漂う中国料理店にも行ってみたりするのですが、総じて「味が薄い」と感じるわけです。引用元、というより引用した箇所でも「日本の中華」は「味が濃すぎる」と指摘されています。昔から日本食は塩分が多すぎると言われてきたところ、基本的に日本の食文化は塩気が強いものであり、そこに慣れ親しんだ日本人の舌を基準とした「普通」は、ヨソの国の人間にとって塩辛すぎるのかも知れません。

 

生徒の約7割が給食を食べ残し…大阪市立中学校(読売新聞)

 仕出し弁当方式の中学校給食を本格導入したものの、「冷たい」「おいしくない」などと不満が相次いでいる大阪市で、生徒の約7割が日常的に給食を食べ残していることが、市教委の調査でわかった。健康に配慮したあっさりした味付けは、脂っこいファストフードなどに慣れ親しんだ世代には敬遠されがち。市教委は新レシピを導入するなど、対策に追われている。

(中略)

 調理施設などの整備にコストがかかることから、民間業者が調理、配送する方式を採用しており、おかずが約10度に冷やされていることが不評の一因。さらに、文部科学省の「学校給食摂取基準」に沿った塩分量などにするため、薄味になっていることも生徒には不満だという。

(中略)

 バスケット部の1年男子生徒は「味が薄い」ことを理由に給食を半分程度残すといい、母親(44)は「毎日帰ってくるなり『おなかが減った』と言い、夕食は山盛り食べる。給食を全部食べればいいのに」とあきれ顔だ。

 市教委幹部は「栄養バランスの改善も給食の目的の一つ。薄味に慣れるよう、家庭でも味付けに配慮してもらいたい」と話す。

 

 そして、こんな報道もあります。曰く「健康に配慮したあっさりした味付けは、脂っこいファストフードなどに慣れ親しんだ世代には敬遠されがち」云々との決まり文句じみた主張から始まるわけですが、どうなのでしょうか? 日本的な価値観からすれば、肉も魚も脂が多いものが上等とされるのが一般的、それはファストフード云々とは別のところから始まっていたはずです。そして日本食は元来、塩分の多い代物です。結構な高齢者であっても、「健康に配慮したあっさりした味付け」の病院食などには辟易しがち、もっと塩味の濃いものを好む人が多いように思います。断じて「ファストフードなどに慣れ親しんだ世代」の問題ではないでしょう。

 「バスケット部の1年男子生徒は『味が薄い』ことを理由に給食を半分程度残す」そうですが、家に帰れば「夕食は山盛り食べる」と伝えられています。母親はあきれ顔と伝えられていますけれど、私が疑問に思うのは「味が薄い」と言って給食を残す子供が、家では「山盛り食べる」のは何故なのかと言うことですね。それは要するに、家の食事が学校給食とは違って「味が濃い」からなのではないでしょうか。結局、ファストフード云々は言いがかりに過ぎない、日本の家庭の味は古来より塩味濃厚なのです。とかく健康的なイメージを捏造されがちな日本食ですけれど、そこまで良いものではありますまい。

 

完全米飯給食 - 三条市

日本人が長い時間かけて築いてきた、優れた食習慣が崩れかけています。
心身を元気にしてくれるはずの食が、病気の原因にもなっている…。

このような現状を何とかしたいと、三条市は食育を進め、中でも次世代を担う子どもたちへの食育には力を入れています。

 「子どもたちを変えることができれば、親になったときに三条市の食生活が変わり、市民の健康レベルは向上する!」
このような考えから、完全米飯給食を起点とした、食育に取り組んでいます。

 そして最後に、新潟県は三条市の公式から。なんと言いましょうか、この政策を訴え図まで作った人の食生活が気になります。もし米ばかり食べた結果がこんな調子なら、頭が悪くなるから米の摂取は控えましょうとでも警鐘を鳴らしたくなるレベルです。でもまぁ、こういう風が吹けば桶屋が儲かる系の論理は、経済誌とかなら普通に見られるものですよね。三条市ばかりが特別ではありません。

 歴史修正主義は、決して戦前戦中ばかりを対象としたものではないのだな、と思います。日本の「食」に関してもどうなのやら。三条市が公式に語る「日本人が長い時間かけて築いてきた、優れた食習慣」とは、いったい何なのでしょう。一見すると「左」と目されがちな論者でも、こと「食」に関しては日本食に対して排他的優越意識を隠さない人も少なくありません。そんなに日本食は健康的なのか、そもそも想定されている日本の食習慣とはいつの時代を指すのか、それとも古来から近世まで不変であるかのように勘違いされているのか、首を傾げたくなるところは多々あります。なにせ新潟の米は「鳥またぎ米」と呼ばれ、味の悪さで有名でした。新潟が米どころになったのはほんの半世紀前からのことでしかありません。鳥も食わないまずい米で悪名高かった新潟で「長い時間かけて築いてきた、優れた食習慣」とは?

 

 ←ノーモア・コイズミ!

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする