鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・あなたは二十世紀の喪に服したか

2015-03-12 | 「ぷらっとウオーク」 2012年~2015年

あなたは二十世紀の喪に服したか  

                                          情報プラットフォーム、No.330、3月号、2015、掲載

先に行われた衆議院選挙では、経済活性化、消費税増税延期、地方創生、そして原発再稼働、特定秘密保護法、集団的自衛権が論点になった。その中でも、経済活性化と地方創成は与野党を問わず誰も反対しない一致した主張であった。しかし、これで良いのだろうかと考えながら、テレビ・新聞を見ながらの正 月を過ごした。経済活性化は何時までも続けられるのか、地方創生は人それぞれで思いが異なっているのではと思えたのである。

 最初の一つがNHK BSプレミアムの名作選「ココ・シャネル 閉ざされた時代に自由の翼を」(2015/1/12)である。コルセットのある衣装の概念を根底から覆し、女性の活動的な服を創り出したのはココ・シャネ ル(1883/8/19~1971/1/10)である。彼女は「わたしは、19世紀の喪に立ち会っているのだ。一つの時代が終わろうとしていた」 と述べ、社会通念を打ち破った。それから100年、我々は20世紀の喪に服すべき時であるように感じた。今後も経済発展を当然として、そのまま続 けることができるのだろうか、何時までもプラスの経済成長率を信奉しても良いのだろうかと疑問が出て来た。

 次いで、BS朝日の「激論!クロスファイア~資本主義の未来、どうなるアベノミックス、水野和夫氏に問う」(2015/1/17)を見た。この 番組は「水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書、2014/3/14)」の著書に準じて、「経済成長の限界」、「ゼロ金利は資本 主義終焉の兆候」、「先進国は空間の拡大ができなくなった」、「これからどうなる?資源価格」の各テーマに「敢えて問う」とした田原総一朗との対 談である。

ここでは地球上には未開拓の空間も、搾取できる開発途上の対象も無くなりつつあることが「資本主義の終焉」と指摘している。変化が起これば、必ずエントロピーは増大し続けて元に戻ることはない。「循環型社会」や「ゼロエミッション」は幻想に過ぎないことを「エントロピーでは誰も読んで貰えない か?」(本誌、No.248、5(2008))、「右肩下がりの下山の先は」(本誌、No.298、7(2012))で説明した。これらで述べた ように、地球に暮らす人類の先行きを、五木寛之は「下山の思想」で、鷲田精一は「『右肩下がりの時代』をどう生きるか」で教えている。人任せでは なく、「自立」のときであると指摘している。

   22日付けの夕刊には、トマ・ピケティ著「21世紀の資本」(邦訳、みすず書房(2014/12/4))が「快進撃 格差反映? 1ヶ月で13万部」の見出し付きで出ている。関連する解説書も売れているようである。資本主義経済の致命的な欠陥は富の分配が公平に行えない仕組みであ り、特に貧富の格差が進んでいるのは米国・英国であると指摘している。

 具体的になすべきことは何か。一つの答が、高知新聞、現論(2015/1/12)に、山折哲雄の「今、『ひとり』の哲学を」で出ていた。気が付 けば、世の中は少子高齢化が加速し、孤独な一人暮らしの時代である。この時に必要な目標は、経済的豊かさではなく、「何ごともこちらから出かけて いってことにあたる『出前精神』、己の手と足を使って物をつくる『手作り』、なけなしの財布のヒモを緩めて『身銭を切る』の覚悟」であるとしてい る。

地球の人口密度は最盛期のイースター島の50人/km2に近づいている。欧米圏とイスラム圏のモアイ倒し戦争は収まる気配もない。世界平和を主導できる日 本の筈である。地球市民の社会に向けての意識改革が必要である。地方創生の主軸は、経済成長を至上とする政策ではなく、素直に暮らせる生き甲斐の ある地域毎のシステム設計に移すべきである。地球温暖化を遅らせる努力ができる日本である。シャネルに倣って、「20世紀の喪に立ち合い、経済発 展優先の一つの時代が終わるのを見届けた」と言えないものだろうか。

 

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp 〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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