鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・ふわっと’92)25周年記念、パーティー(2/3)

2017-12-10 | 「ぷらっとウオーク」 2017年~

(ふわっと’92)25周年記念、パーティー(2/3)     

                                                                          高知ファンクラブ、No.186,11(2017)

  羽田からタクシーでホテルに着いたのが16時前、程なくして娘の葉子、少し遅れて孫の樹ちゃんがやって来た。車椅子での25年周年記念パーティーの出席を決断できたのは妻 一枝のお陰であり、車椅子の担当を樹(たつき)ちゃんに任せる決断もしてくれたのである。                          

 早めに会場に向かい、受付で手続き済ませ、懐かしい方々にご挨拶を済ませたが、50人ほどの参加予定者名簿には、既に「鈴木朝夫先生のお孫さん」と樹ちゃんが記入されていた。次々に出席する方々にお会いするにつれて、25年前の記憶が蘇って来る。会場のあちこちで思い出話に花が咲き、次第に賑やかになってくる。話題の中心は水漏れ事件である。 

-- -- -- -- {代表研究者が居ない材料実験M23}からの抜粋(註4)-- -- -- --         

 ・・・材料実験はM01からM22まで全部で22テーマである。第2・第3材料グループ実験の大半はラック8だ。冷却水を使わない実験が1つできるだけである。これらの実験の責任者である東京大学の西永先生と金属材料研究所の中谷先生に、いつもの笑顔はない。第1材料グループは、ラック10でのタイムラインの最初の実験がM11である。「私の実験だけが出来てしまっては大変具合が悪い」・・・「ここは無重力の空間である。水漏れで大騒ぎすることはない。なぜならば、ビール券を持って謝りに行くような階下の実験室は何処にもないではないか」・・・回復作業が成功したとき、忘れることが出来ないのは、顔中笑顔の西永先生の大きな笑い声である。・・・運命の女神はちょっといたずらをし、そして微笑んだのだ。そして我々は思わぬ実験をしたことになる。この実験を提案したPI(実験提案者)はどこにもいない。私はこれを材料実験M23と名付けたい。無重力下で水漏れしたとき、どのようになるかを、映像を通じて世界中の人々が見ることができたのである。・・・

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私達の提案した複合材料の無重力下での製造実験、M11{高剛性超低密度 炭素繊維/アルミニウム合金 複合材料の製造}(註5)にたどり着くまでの苦労を、会話の中で、車椅子の上で思い出していた。まず、アイデアを模型で示すことが必要であった。グリコのポッキーを使った模型である。プリッツ部分を炭素繊維、表面に被せたチョコレートをアルミニュウム合金と見立てた。短くしたポッキーを、2リッターのペット・ボトルの上を切り取った円筒形の筒に、ランダムに詰み上げる。チョコレートが柔らかくなる程度にゆっくりと温める。チョコレートが接着剤となり、空隙の多い立体ポッキーが出来上がる。短い炭素繊維から出来た柱は、人工衛星のアンテナやソーラー・パネルの支柱として使える。

無重力下で使う構造物は、自重を支える強度の必要性よりも、剛性が高いこと、軽量であること、そしてマテリアル・マイレージが小さいことが重要である。この場合、原材料の体積を最小にしての運搬、その場での製造・製作が必須となる。実際に人工衛星のアンテナなどの場合には、折り紙や昆虫の羽化のように畳み込んだものを、必要とする場所で拡げることが行われている。炭素繊維間の接着には濡れ性を良くする合金元素の知見が重要と考えていた。M23の水漏れを目撃できたことは、濡れ性の重要性の再確認だったと感じたのである。孫の樹ちゃんが動かしてくれる車椅子の上での思いは、地域の、高知の活性化である。副産物として作り出した「無重力ポッキー」の商品化はできないだろか、さらに愉快なこと、楽しいことはないか、と考えていた。

 ノアの箱舟、打ち下ろし花火、新々古今和集などは1987年に提案済みである。(註3) 車椅子に座っているから思い付いたことが沢山ある。宇宙での食生活を念頭に置くとき、液体状態が関わるゾル・ゲルの状態に注目すべきであろう。ゾル(コロイド溶液)とは、豆乳、牛乳、コーヒー、ペンキなど、ゲル(半固体状態)とは、豆腐、ヨーグルト、ゼリー、煮こごり、などである。また、無重力下での発泡体の挙動を知りたい。フィルターなどに使える連続発泡体と断熱材に使われる独立発泡体がある。

高齢化社会・人生百歳時代にとって、ホスピスや宇宙葬の必要性も増してくる。長期滞在での体力維持や娯楽も重要である。ネットやゴールの球技、格闘技などの各種のスポーツのルール作りも必須である。壁を相手のスカッシュや立体ビリヤードなどを考えていた。

このパーティーの主役はアラバマ州ハンツビルの指令センターで運用に関わった面々が、主役である。最初は誰?と思っても、話を続ける内にお互いを思い出してくる。毛利衛さん始めとする宇宙飛行士、向井千秋さん、そして土井隆雄さんの3人に樹ちゃんを引き合わせることができた。記念写真も撮らせて頂いた。

 註4、{代表研究者の居ない材料実験M23}、NASDA NEWS、No.133,12(1992) p8

註5、{高剛性超低密度 炭素繊維/アルミニウム合金 複合材料の製造}、鈴木朝夫、三島良直、三浦誠司;ふわっと’92宇宙実験成果報告(2/2分冊);宇宙開発事業団、5(1994)   p648~p684.

 

 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」高知ファンクラブに掲載 2017年~

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2016年~現在に至る)

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2012年~2015年

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