鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・大災害後のサバイバルのために

2013-11-14 | 「ぷらっとウオーク」 2012年~2015年

大災害後のサバイバルのために

                                                              情報プラットフォーム、No.314、11月号、2013、掲載

 

   防災関連製品を高知県は産業振興の切り札の一つにしようとしている。企業から提案される数々の防災用品を吟味すると、想定が単純で、発想が 大変甘いことが気になってくる。さいとう・たかを氏の漫画「サバイバル」を思い出して欲しい。未曾有の大地震と地殻変動で孤島となってしまった山 の中で、鈴木サトル君が生き延びる話である。高知県が陸の孤島になる可能性もある。支援物資が届く迄が数日から一週間程度ならば、備蓄した災害 食・保存食で食いつなげるだろう。しかし、孤立状態が数ヶ月にもなるとき、インスタント食品だけでは栄養バランスの偏りだけではなく、精神的スト レスも大きくなる。

 大地震が誘発する大災害は、大津波、深層崩壊・巨大土石流、地盤沈下・液状化、大火災、そして放射能汚染などであり、さらに、これらの複合であ る。水害による土砂崩れとは異なり、地震による深層崩壊は同時多発的である。海路だけではなく陸路も長期間に断たれ、陸の孤島になる可能性は極め て高いとの想定も必要である。全ての交通路・ライフラインが各所で寸断されるだろう。被災地の広域化で、空からの支援には限りがある。

  ここでは、防災・減災の装備の中で非常食の在り方について考えよう。まず生きるに必要なものは「食料」、「水」、「燃料」である。「食料」と は直ぐに食べられる保存食だけを意味しない。畑の農作物や家庭菜園、そして山野に自生する山野草、果実、キノコもある。イタドリは高知県の地産地 消の代表選手である。「飲める水」は保存容器の水だけではなく、加熱すれば飲める水も多い。カセット・コンロだけが加熱法ではない。摩擦熱や太陽 熱を利用する「火」の起こし方、消えない焚き火の秘訣などの経験が欠かせない。

  大災害という自然の脅威に曝された後でも、残された自然の恵みを最大限に生かすアイデアが必要である。野性味豊かな調理法を経験しておくべき であろう。美味しく食べる工夫も出てくるだろう。災害食とは、常備食であると同時に、日常的な消費食でなければならない。保存している食料は定期 的に消費し、そして常に補充することである。これを「ローリング・ストック」と呼んでいる。各家庭で、仲間内で、地域社会で、非常事態を体験する ことが必要である。このような観点から、保管すべき最善の食料は、日常的に食べている「お米」であり、「パスタ」、「うどん」などの麺類である。 塩、梅干し、チーズ、調味料があれば万全である。さまざまな山野草を使いながら、定期的にグルメを楽しもう。

  食料・水・燃料の「その場調達」で必要なものは、調理器具などを作り出せる道具類である。ナタ、スコップ、ノコギリ、ナイフ、バールなどの工 具類、ルーペ、ライターなどの着火道具である。これら工具は、釜、鍋、皿などの炊事道具類他を作るに役立つ。防災保管庫に常備すべきである。折に 触れて、湿った薪から作った焚き火を自慢し、竹で作った容器でさまざまな混ぜご飯や玄米食を楽しむことができる。工夫する力を付けよう。

  土佐には無人島の鳥島で生き抜いた先人達の事例がある。野村長平やジョン万次郎である。調べてみよう。寺田寅彦は「人間は時が経つと急速に忘 れてしまう持病、健忘症を持っている」と指摘している。防災倉庫を中心に展開する定期的な調理教室や試食会は健忘症には特効薬である。年寄り、親 達、子供達にも、災害を忘れさせない効果がある。

  防災訓練は「逃げる」に集中しているが、次は「生き延びる」である。官主導ではなく自主的な活動を我々が展開すべきである。各種の提案を皆で 吟味する場を作りたい。皆でさらに高知発の防災関連製品を優れたものに成長させ、地産外商の実を挙げよう。

 

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鈴木朝夫 s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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