鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・皆が行く方向、皆と進む方向

2013-12-16 | 「ぷらっとウオーク」 2012年~2015年

皆が行く方向、皆と進む方向      

                        情報プラットフォーム、No.316、12月号、2013、掲載


   名古屋では中日ファンが、広島では広島ファンが多いのは当然である。しかし東京では巨人だけのプロ野球ではないのに巨人ファンが多すぎる。「巨人の優勝が 日本人を幸せにするのです」と言い切るほどである。「アンチ巨人は隠れ巨人ファン」と言われると私の巨人嫌いの度はさらに増してくる。高知で は阪神ファンが多いのでほっとしている。

  小学生の頃、「欲しがりません勝つまでは」の標語の下、出征兵士を送る歌「我が大君に 召されたる・・・いざ征け つわもの 日本男児」を信じて唱っていた。中学生になった年に敗戦、昨日の先生が急に民主主義に豹変するのを目撃した。以来、皆が一斉に進む方向は極度に警戒する癖 が付いている。巨人嫌いもこのような幼児体験から来ていると思われる。毛語録を片手の紅衛兵やホメイニと叫ぶデモ隊の映像は見たくもなかっ た。

   日本中が熱中するイベントや番組、例えば、紅白歌合戦、大河ドラマ、オリンピックゲーム団体戦の中継などは意識的に見ない。「なでしこジャパン」も「侍 ジャパン」もその絶叫が好きになれない。私のこのような傾向は「合成の誤謬」に陥ることを極度に警戒するために生じている。皆で盛り上げるこ とを否定する積もりはない。でも、熱狂することはない。皆と行かない様にしている。「天の邪鬼(あまのじゃく)」と云われることも多い。

    「合成の誤謬」とは経済学の分野でよく使われる言葉である。皆が買いに走ることでインフレがどんどんと進行する状態や、皆が節約することで急速にデフレに 落ち込んでいく状態は「合成の誤謬」による現象と説明し、さらに「個人が合理的な行動をとっても、多くの人が同じように行動すれば、全体とし て悪い事態になること」と一般化している。「劇場で座席の上に立ち上がれば、公演がもっとよく見える。だから観客全員が座席に立ち上がれば、 みんな公演をよく見ることができる」は「合成の誤謬」のよく使われる例である

  流言飛語や風評被害には、何らかの仕掛け人が居る場合が多い。「情報操作」が行われている。「今年の流行色は赤」のようなファッションや「巨人・大鵬・ 卵焼き」のような流行語は「意図的な合成」と名付けてもよいであろう。

  土佐宇宙酒計画では「酵母菌は本当は宇宙に行ってないらしい」の風評に対抗できるだろうかと議題になった。「宇宙飛行士アームストロング は月面に着陸していない」との本が堂々と出版されている。一地方の地域産品では、このような風評被害から逃れられない。考え出した対抗策は、 宇宙実験を2度行うことであった。「2度とも宇宙に行っていないらしい」との話は誰も信用しない。

  民主主義とは原則的に多数決であり、合理的な合成が基本である。民主的な政治とは合成の落とし処を得るための手続きである。しかし、結果として意図したこ ととは逆方向へ行ってしまう「合成の誤謬」の可能性も高く、このことは古今東西の数々の歴史が教えている。民主主義は、また衆愚政治と呼ばれ る所以でもある。

  情報操作による意図的な作為の可能性も高い世論調査や意識調査のようなアンケート結果も警戒が必要である。事柄を見抜く力「メディア・リテラシー(情報を 評価し識別する能力)」の涵養が市民社会の大原則である。また、議論を尽くすことも重要であるが、結論に至らないこともある。指導者には柔軟 性だけではなく、決断力が求められる。

  土佐人気質の「いごっそう」や「はちきん」では「付和雷同」や「合成の誤謬」は起こり得ないと言い切れるだろうか。原稿締切直前の4日の朝刊の一面は「東 北の底力、楽天イーグルス 日本一」である。この一文を締めくくるに相応しい見出しである。

 

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鈴木朝夫 s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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