鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・豊かな個性と発達障害は同じこと

2013-08-21 | 「ぷらっとウオーク」 2012年~2015年

豊かな個性と発達障害は同じこと

                                                                  情報プラットフォーム、No.311、8月号、2013、掲載

今から10年前、孫のタッチャンが小学生になったとき「貴方のお子さんは、多動児です。飽きやすく、移り気です。学習障害ではないですか。お医者さんに見て貰ってください」と先生に言われたと、東京に住む娘からの電話である。好奇心旺盛なタッチャンは一つことに熱中すると、それ以外はその他になっ てしまう。分かったと納得すれば、教室から出てしまうことも多いらしい。困った生徒であることは容易に想像できる。

幾つかの精神医学に関わる新書本で「にわか勉強」をした。「発達障害」は、落ち着きがなく衝動的な「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、対人関係・社会性に欠ける「アスペルガー症候群(AS)」、そして読み書きに難のある「学習障害(LD)」に分かれるらしい。しかし、納得出来ない点がある。そ れは日本語訳である。略語の最後の「D」は「Disorder」または「Disabilities」である。日本語では「障害」と訳す。まことに 不適切な訳であり、「○○障害」は差別的に使われる傾向にある。また、略語の最後の「S」は「Syndrome」、日本語では「シンドローム」、 「症候群」である。これを語尾に付ければ、流行や社会現象を表現する言葉に仕立てられ、遊び感覚になる。いずれにしても、適切な訳語が欲しい。

 複雑な事象を分類することは、科学的推論の手法の1つであるが、ともすると不用意な発現や素人発言になってしまう。指導要領に沿って進める座学 中心の教育では、温和しくしていない生徒を「○○障害」と決め付けるのが先生にとっては一番気楽である。しかし、個性を伸ばす教育の否定につなが る。

娘は小2の1年間をアメリカの小学校で過ごした。「算数は満点。その時間に英語を勉強しなさい」と担任はクラスの友人を個人授業の先生に指名した。家に遊びに来た彼女に聞くと、算数は大嫌い、成績は最悪との答え。翌日学校へ駆けつけた。「彼女の家庭環境は進学ではない。ヨウコに英語を理解させるこ とに熱中している。こんな輝いている彼女を見るのは始めて。」と画用紙に描いた自作の教材を見せて呉れた。子供たちの個性を育てる、自信を持たせ る見事な教育である。このヨウコがタッチャンのお母さんである。

公職を離れてから、地域を元気にする作業、いわゆるボランティアの仕事に関わっている。多くの人とのお付き合いの中から、人付き合いの悪い人に出会うこと がたまにあって、何故と悩むことも少なくない。そんな時「発達障害に気づかない大人たち」(星野仁彦著,祥伝社新書(2010,2))に目が留 まった。その「診断基準」によれば、好奇心・ひらめきは素晴らしいのだが、対人スキル・社会性が未熟で、行動・感情の制御が不得意とある。蜘蛛の 巣グラフでは凸凹の多い図になる。「アスペルガー症候群」に当てはまると納得し、何とか腹立たしさを押さえようとした。しかし冷静さを取り戻す と、自分も、たっちゃんを学習障害と決めつけた先生と同じことをしていると気付いたのである。

 星野氏は、「障害」ではなく、「アンバランス」が適切と述べている。「癖」と言っても良いだろうと述べている。黒柳徹子は学習障害だったとか、 ニュートンもアインシュタインもそうだったと指摘している。これを借用すれば、私を悩ませた彼は「発育アンバランス症候群」となる。これなら「豊 かな個性の持ち主」や「○○癖のある人」と同じであり、独断でも差別でもない。ようやく安眠できると自分を納得させた。

 あの個性豊かなタッチャンは進級し、中学に進んだ。好奇心はそのまま、人付き合いも最高、今は工業高校2年生である。航空整備士に憧れている。

 

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鈴木朝夫 s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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