Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

森の泉の渋味の世界

2008-05-19 | ワイン
ブュルックリン・ヴォルフのランゲンモルゲンをアスパラガス料理に開ける。この2006年産ワインの少量収穫の中、その一部を逸早く確保したのである。醸造責任者の勧めに応じて、まるで水のように流れるこのリースリングを購入した。

その後落ち着き始めると、初めに感じた静的な印象が強調されて、アルコールやミネラル味の裏に酸が隠れるような不思議な味となった。個人的には若く弾けるようなリースリングが好みなので、こうした着物を着た大和撫子のようなワインは苦手であり、既に三本以上を試したが一度も満足出来なかった。

そのような趣向もあり、元々若年寄りのような謂わば舞妓さんのような雰囲気のリースリングであったので、どうも手が伸びずつまらない思いをすることが多かった。しかし、先日2007年産を試して、その強く元気な酸に興味をもって半ダース購入したので、比較対象にこれを試すことになった。そして、もうそろそろ飲み干すべきだと言われたのである。

今回は、最初からハーブティーで口を整え、デキャンタをして一滴も無駄にせずに試そうと思ったのである。その味の傾向からアスパラガスが合うことは分かっており、万膳を期した。

今までの印象は覆されること無く、その森深くにあり人知れず水を湛えた泉のような静的なおとなしさは変わらないが、評価は変わった。何よりも深みが違う。決して底無し沼のような深みではないのだが、ざわめき一つない平らな面の下にいくつもの層が眠っているようだ。

全く酸が表に出て来ない不思議は、村の七不思議のような趣があり、今まで感じていた苦味はまさに玉露の甘みである。そして何を思い出したかといえば、日本でご馳走になった熟れたザールのスレート土壌のリースリングである。あの海藻のような代わりにここにあるのは、雑食砂岩の基調であるが、あたかも珊瑚礁のような静けさである。

あとに出て来る酸の重い圧力にゆったりと揺らぐ味の中には様々な土壌の味が滲み出てくる。是非、日本食にも合わせて頂きたいと思わせる。

このように考えてくると、人の好みも様々でそれはそれで良いのだが、上のような静的なものに見出す美観は、受ける方が見出してやるものかといえばそうとも言えない。動的で弾けた若さを受け止めるのは、こちらに体力があれば必ずしも難しくは無く、それを判断するのは容易である。

しかし、動きの少ないものを観察して細かく受け止めるのは、試験者に同じように平静さが求められる。試験者は生物であるので、全く静止することは出来ないのだが、こうした細やかさを受け止めるだけの自己コントロールが出来ていないと判断出来ない。

まるで、「雪国」を一向に読み進める事が出来ない読者が、渋味の世界を探っているようなもので、そうした良さが解るようになるには個人的にはまだまだ四半世紀ほど掛かりそうである。


参照:ランゲンモルゲンとはこれ如何に (新・緑家のリースリング日記)

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2 コメント

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ただ今晩酌中 (緑家)
2008-05-22 20:49:52
今、飲んでいます。
おっしゃるように酸はまったく表に出て来ませんね。何故でしょう?元々弱いのか、はたまた隠れているだけなのか。それにしても舞妓さん、珊瑚礁。なるほど、言い得て妙ですねー。非常に肌理の細かい味わいのミネラルだと思います。それに花の香り。深みがありますね。まだこの先何かが出て来るようにも思えますが、もう潮時なのでしょうか?
もう1本あるのでしばらく置いてから変化を試してみようと思います。
酸が弱いと苦味が前に出てきて (pfaelzerwein)
2008-05-23 14:22:58
初めに飲んだときに酸を感じなかったので、どのようになるのかなと思っていました。飲み頃が難しいワインの一つだったようです。

それに比べて、2007年産は初めから酸が量感はなくとも厳しかったので、酸の出方は土壌の性質でもあり、ヴィンテージによって変化が大きそうです。

決して好きなワインではないですが、興味深いワインですね。2006年産もまだに三本残っているので、勉強材料にしたいと思います。

しかし酸が弱いと苦味が前に出てきて養命酒のようになりそうで怖い。

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