パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

レイモンド・チャンドラーの世界(3) The High Window

2018-10-28 | レイモンド・チャンドラー
レイモンド・チャンドラーの長編ハードボイルドの3作目、「The High Window(高い窓)」を読んだ。「大いなる眠り」「さよなら、愛しい人」に続く3作目である。1942年刊行というから昭和17年、先の大戦中の作品である。村上春樹訳で2014年12月刊行だ。村上チャンドラーの第4弾。

私立探偵のフィリップ。マーロウが、裕福な未亡人、エリザベス・マードックに呼び出され、息子の嫁、リンダを捜してほしいと頼まれる。理由は、リンダが貴重な金貨、ブラッシャー・ダブルーンを勝手に持ち出したというのだ。古銭商モーニングスターから、金貨の問合せがあった。

その家には、妻に未練たっぷりの息子レスリー、エリザベスの秘書、若いマール・ディビスがいた。

マーロウは依頼の帰りに、私立探偵のフィリップスと出会う。そして、古銭商モーニングスターを尋ねる。そのフィリップスとモーニングスターが銃で殺される。
リンダの友人ロイス。その夫、高級クラブの経営者モーニー。モーニーのボディガードエディブル―。ロイスの愛人、ヴァ二アー。ブリーズ刑事など、個性的で荒くれ者たちが、マーロウに絡みつく。そしてヴァ二アーも殺されてしまう。その場にいたのが、マールだった。マールはマーロウに助けを求める。

金貨を巡る怪しい動き。エリザベスの前夫の窓からの投身自殺の謎。細かい描写と登場人物の心理を丁寧に、そして、恰好いいセリフが連打する。チャンドラー節の炸裂だ。

村上春樹は今回も、チャンドラーの翻訳の魅力を語る。「何より嬉しいことはところどころではっと息をのむような素敵な文章に出会えることだ」「自分の言葉で日本語に移し替えられるというのは、楽しいという表現ではとても追いつけない格別な喜びとなる」としている。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一茶

2018-10-21 | 藤沢周平
「一茶」は、藤澤周平が、昭和52年(1975)から53年(1976)にかけて、月刊文芸誌に掲載した。しかし、この構想は、藤澤が作家としてデビューする前、胸を病んで入院していた昭和30年前後、病院内にあった句会に参加し、一茶の句とは程遠い人間の名誉欲、出世欲、財産欲を垣間見たからであった。1981年昭和56年12月刊行。

藤澤周平は、1927年昭和2年に生まれ、地元山形で中学校の教員になる。しかし、教職について2年後、結核にかかり、休職。治療のため東京の病院に入院する。闘病すること5年。休職期間が過ぎ、教職に復帰することは許されなかった。そして、東京で職を求め、業界紙の記者となる。そして、40を前に、小説を書き始める。その動機を「こんな生活で一生を終えるのだろうか」だったという。

15歳の弥太郎(一茶)は、ほほ親と死に別れ、祖母も死んだことから、継母と折り合いが悪く、江戸へ奉公に行くことになる。父、弥五兵衛との北信濃の柏原での別れの場面から物語は始まる。奉公先を転々とし、二十歳時に御家人くずれの露光で出会い、俳句を知る。
25歳の時、俳諧師になる決意をする。田舎百姓の若造が、江戸の俳諧の世界に悩み、もがく。一門家でも名をあげ、15年ぶりに帰省した柏原は、腹違いの弟の仙吉と継母の住む故郷だった。
6年間の西国修行。36歳になっていた。江戸にいても故郷は一茶の中でも特別な思いをもたらす存在だった。
しかし、父親の弥五兵衛が病で倒れ、様態が悪くなる。一茶39歳の時だった。遺産を半分一茶にと弥五兵衛は亡くなる。遺産を巡り、義母と弟仙吉との壮絶な戦いが始まる。
俳諧師として身を立てることのむつかしさにもがき、知人も死んでいく。そんな中、仙吉から父の7回忌の知らせが入る。7年ぶりに江戸から柏原に帰省した柏原。そこでも修羅場を演じ、遺産の解決はつかない。
50歳の一茶はいよいよ故郷に住む決意をする。いよいよ遺産に区切りをつける。
そして嫁を迎えることになる。28歳の菊だった。
4人の子を設けるがつぎつぎと亡くなり、菊も亡くなる。]一茶61歳だった。62歳で38歳の後妻の雪と結婚したが離縁し、酒におぼれ、中気を患う。さらに32歳のやをを後妻に迎えるが、一茶は65歳の生涯を終える。

若くして親と離れ、都会で自分の才能を信じ、懸命に走り続ける。しかし、才能への不安と都会で暮らす生計への不安が、一茶に襲い掛かる。そこには常に懐かしく、「自分を包み込む故郷があった。しかし、故郷も訪れてみると自分の居場所はなく、また、さびしく江戸へ帰る、。その繰り返しだった。
そんな一茶の寂しさ、背伸びをして暮らす息苦しさに、藤澤は自分を重ね合わせていたのだろう。
故郷に帰り、安息の日々かと思いきや家族には恵まれなかった。これも人生。

藤澤の作品で実物の人物をとりあげたものはフィクションに比べ、数少ない。
一茶の作品が庶民的で、市民目線であるがゆえに、「その人間味がまた、『これらの句を興味深く際立たせる。

一茶が詠んだ2万句。その中で藤澤が好きな句。「木がらしや地びたに暮るゝ辻諷ひ」「霜がれや鍋の墨かく小傾城」。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

空を駆けるジェーン

2018-10-14 | book
空飛び猫の第4弾、クロネコの一番末っ子の妹猫、ジェーンの冒険談「空を駆けるジェーン」を読んだ。村上春樹訳。1999年発刊。翻訳は2001年9月。「Jane on her own」。On her ownは自立、一人でやっていくといった意味だという。

丘の上農場で過ごす4人兄妹。セルマ、ロジャー、ハリエット、ジェームズ、そしてジェーン。母屋で暮らすアレキサンダー。皆、この平穏な生活に満足していた。でも、ジェーンは、この生活に不満を抱いていた。外へ出たい、冒険したい。そして、外へ飛び出していく。

出会ったのは、町に住むおじさん、ポッパだった。ポッパは、空飛び猫をマスコミに紹介する。外へも出られない生活に苦痛を感じたジェーン。外へ出る機会を伺っていた。

自分の帰巣本能を信じ、たどり着いたアパート。そこにお母さんのミセス・タビーがおばあさんのサラ・ウルフと暮らしていた。都会が好きなジェーン。居場所をここと決めた。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昭和の鉄道模型を作る 3

2018-10-08 | life
昭和の鉄道模型を作るの3回目。ジオラマの世界に昭和を感じ、Nゲージを走らす。違った風景を紹介する。息づく人たち。

面影橋駅を


駅前風景 タクシーに乗る人、駅に向かう人
 

違った風景を
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち

2018-10-07 | book
空飛び猫の第3弾。「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」。(Wondefull Alexander and the Catwings)。1994年刊行。日本では村上春樹訳で1997年6月刊行。

田舎のファービー家。そこには猫の4匹の兄妹たちがいた。一番上のアレキサンダーは、冒険の旅に出る。牛に出合い、トラックに曳かれそうになり、そして猟犬に追われ、大きな木に登り逃れたものの、降りられなくなり、一晩を過ごす。そこに黒い羽の生えた猫がやって来る。

黒い猫はジェーン。前作でジェームズとハリエットに助けられ、オーバーヒル(丘の上)農場で、4匹の空飛び猫たちと暮らしていた。アレキサンダーは、ジェーンに連れられ、農場で暮らすことになる。アレキサンダーは、ハンクとスーザンに気に入られ、普通の猫なのでハンク兄妹のお母さんにも気に入られる。でも、アレキサンダーは、ファービー家の人々、そして妹たちのことが気にかかっていた。農場に現れた赤い車。その車は、ファービー家のお父さんの車だった。
農場で暮らし始めたアレキサンダーは、何か恩返しをしたいと考え始める。気になっていたのは、自分を助けてくれたジエーンが言葉をしゃべらないことだった。ジェーンは過去に大変怖い経験をしていた。

本編48ページ。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする