パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

探偵は女手ひとつ

2018-01-28 | book
深町秋生の「探偵は女手ひとつ」2016年12月刊行を読んだ。2012年から2016年まで各誌に掲載された6作の短編集。深町は、山形生まれで在住。2004年に「このミス大賞」を受賞し、作家デビュー。ハードボイルド作品を手掛ける。

本作は、山形を舞台に、30代後半の、元刑事、椎名留美が探偵として活躍する。タイトルの通り、山形署に勤務していた椎名は、職場結婚し、退職したものの、夫が急逝し、探偵業を営みながら、小学生の一人娘と暮らす。もちろん、全編山形弁で語られ、雪下ろし、サクランボなどの郷土色の随所に出しながら、夜の街を描き出す。元刑事の警察つながりや、現職の時のネットワークをいかし、依頼者の案件を解決していく。

サクランボ泥棒を捕まえる「紅い宝石」、店内保安員をしていた留美は、少女の万引きに遭遇する。その少女が行方を消した「昏い追跡」。留美の現職時代に高校生でやんちゃをしていた逸平が、強い味方となって、留美に協力する。組の依頼で、失踪した女性たちの行方を追う「白い崩壊」。雪下ろしの依頼を受けていたアパート経営の老人の恵理から頼まれたのは、入居人の男性の女性関係だった。その女性は複数の家を定期的に訪れていた。その背景を知る「碧い育成」。逸平の妻、麗から、逸平の浮気を調べてほしいと依頼を受ける留美。逸平を追うとそこに若い男女を食い物にする夜の世界の犯罪が浮かび上がる「黒い夜会」。訪問販売の男性から女性ストーカーの被害の依頼を受け、対応していた留美は、新たな女性ストーカーと出くわす「苦い制裁」。

いずれも、真実を知りたいという留美の一途さが、彼女の理解者たちに守られ、事件を解決する。そこには、雪国で生活する生活者の視点があり、読後も心地よい。
続編の登場を楽しみにしている。
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わたしの好きな仏さまめぐり

2018-01-21 | book
瀬戸内寂聴が仏様を訪ねる旅。「わたしの好きな仏さまめぐり」を読んだ。2017年2月刊行。寂聴は、1922年生まれというから、95歳。比叡山の大阿闍梨の故酒井雄哉の「一日一生」でも登場するお坊さん、作家である。京都嵯峨野の寂庵に住まいする。現在でも新聞にも定期にエッセイを寄せている。

本では、奈良県、岩手県、京都府、滋賀県の阿弥陀三尊、薬師如来、釈迦如来、観音菩薩、千手観音・十一面観音などを紹介する。写真もある。

若い頃から仏像が好きで、心洗われ、救われたという。今なお、輝きを失わない拠り所。まさに仏縁である。

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君たちはどう生きるか

2018-01-14 | book
「君たちはどう生きるか」。1937年、昭和12年に出された。戦争の色が日一日と濃くなり、軍国主義の足音が確実に近づいてきた頃だ。著者の吉野源三郎は、1899年明治32年生まれ。この本は、40歳を前に書かれた。1981年昭和56年5月、82歳で逝去した。

平成29年、2017年、最近では漫画化で評判になった。15歳、中学2年生のコぺル君に、大学出たての叔父さんが、アドバイスをするという形をとった10篇の物語だ。


新潮社から出ていた原典版を、岩波文庫が、1982年、昭和57年に第1刷を刊行した。手元にあるのは、1987年の第15刷である。

巻末で、丸山真男が、逝去した吉野の追悼として寄せた「回想」に、「「君たちはどう生きるか」は、どんな環境でも、いつの時代にあっても、変わることのない私たちに対する問いかけであり、」とし、戦後2回、改定されたが、初版本の復刊を希望した。当時のイラストをそのままに、当時の学校生活、東京下町の風情、家庭などを背景に、思春期の子供たちに、こう考えてほしいと著者のメッセージが詰まっている。

還暦を迎えた自分が、この本を初めて読み、感動している。10代の頃に読まなかった反省や口惜しさはない。それ以上に、今の自分に共鳴できる部分が多い。

「一 へんな経験」。百貨店の屋上から見た景色から、物事の見方、考え方を考える。
「二 勇ましき友」。浦川君を演壇に立たせ、ひやかそうとするクラスメイト。人間の立派さとは何か。
「三 ニュートンの林檎と粉ミルク」。当たり前ということが曲者だ。コペル君が叔父さんに手紙を書く。人間分子、網目の法則だ。
「四 貧しき友」。浦川君が学校を欠席した。コペル君は、浦川君の家、豆腐屋を訪れる。「ありがたい」を考える。
「五ナポレオンと四人の少年」。北見君、浦川君、コペル君は、正月に水谷君の家を訪れる。ナポレオンの偉業を考える英雄とか偉人とか言われている人々の中で、本当に尊敬できるのは、人類の進歩に役立った人だけだ。人類の進歩と結びつかない英湯的な精神も空しいが、英雄的な気迫を欠いた善良さも、同じように空しいことが多い。
「六 雪の日の出来事」。生意気だと上級生から目を付けられた北見君。コペル君ら3人は、北見君とともに行動しようと約束する。上級生に絡まれる北見君に、コペル君はどうしたか。
「七 石段の思い出」。コペル君は雪の日の出来事がショックで、寝込んでしまう。叔父さんは、煮え切らず後悔ばかりしているコペル君をしかる。お母さんが女学校の時のいやな思い出を語る。後悔は決して損にはならない、そのおかげで人間として肝心なことを心がしみとおるように知れば、その経験は無駄ではない。
おじさんのNote。
自分勝手な欲望が満たされないからといって、自分を不幸だと考えているような人もある。つまらない見栄にこだわって、いろいろ苦労している人もある。実は、自分勝手な欲望を抱いたり、つまらない虚栄心が捨てられないことから起こっている。つまり、自分勝手の欲望を抱いたり、つまらない見栄を張るべきものではないという真理が、この不幸や苦痛のうしろにひそんでいる。
「八 凱旋」。思い切って北見君たちに手紙を書いたコペル君。臥せっているコペル君の家に、3人がやってくる。雪の日の事件の後日談。3人の家族がとった行動とは。
「九 水仙の芽とガンダーラの仏像」。中2になる春休み。15の春に、コペル君はノートを書き出す。春を前に伸び行く水仙。叔父さんが語る仏像の歴史。
「十 春の朝」。コペル君の決意

実業家の息子、水谷君。予備軍人の家のガッチンこと北見君。豆腐屋の浦川君。そして、母子家庭のコペル君。それぞれ異なった家庭環境の中、個性を伸ばして、成長していく子供たち。そして、真剣に向き合う大人たち。
購入したのに、読破したのは今回が初めてだ。80年の時を経て、今なお、示唆に富み、問いかける。まさに古典だ。
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表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

2018-01-08 | book
2008年に大ブレイクした、漫才のオードリーの突っ込み役、1978年生まれの若林正恭の旅行記、「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」2017年7月刊行を読んだ。

37歳の時、五日間の時間が空いた。そこでキューバ旅行を思いつく。学生時代に成績は芳しくなかった若林は、夜間大学を出て、下積みを過ごし、同級生らの一握りの成功者の現実を目の当たりにする。敗者、負け犬、コンプレックス、生活への不安。それが、一躍時の人になり、環境が180度変わる。人間の豹変のむごさ、現実、無常を感じていた。そこに最愛の父の死を迎え、意気消沈。父が行きたがっていた、そして自由で社会主義の国、キューバへの旅を思い立つ。スマホで旅券、ホテルを予約し、一人旅。カナダで乗り換え、向かう。

旅行ツアーにない、ディープな現地を知りたい。在住日本人のマリコさんの案内や現地の人との交流を楽しむ。
革命博物館、カバーニャ要塞、劇場、軽食や夕食で地元の味に触れ、市場や配給所、闘鶏など、生活も知る。一人で浜へ行きたいと乗ったバス。興ざめの浜辺でのトラブル。

この旅で若林は、日本でのわだかまりを消すことができたのか。奇妙なタイトルの意味は。
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60歳からの手ぶら人生

2018-01-07 | book
今年、還暦を迎え、そして、定年となる。漫画家の弘兼憲史が2016年11月に刊行した「弘兼流 60歳からの手ぶら人生」を読んだ2017年1月には第6刷という。課長島耕作シリーズで一躍名を馳せ、今も現役という著者が、題名の通り、60という定年を迎えたら、手ぶら、つまり、身も心も軽くなれという指南本。

弘兼は1947年生まれで、執筆時は69歳。定年はない自由業の著者が、60という境を超え、10年たって定年制があるサラリーマンの覚悟と実践を忠告する。

持ち物を捨てる
人生80年、元気年齢70歳。あと10年スパンが2回。もう60になれば、起承転結の結の仕上げの時代。本やテレビに振り回されるな。見えやこだわりからの脱却。持ち物を半分にしよう。

友人を減らす
友人とは何か、一人いれば十分。年賀状歳暮中元はやめよう。60歳からは人は人、自分は自分。孤立ではない孤独を楽しむ。頑固ではなく柔軟に。

お金に振り回されない
サイズダウンの必要性。むやみにお金を増やそうとするから損をする。分相応のお金。本当に困ったら役所へ

家族から自立する
家族は一つは幻想。家族は理解してくれるが悲劇を生む。定年後の男の価値はゼロと思われている。奥さんとの適当な距離が大切。在宅死の勧めと延命治療もしない。介護は家族だけでは無理。60歳から介護ボランティアを。

身辺整理したその先に
料理の勧め。仕事は若い人がメイン、仕事探しは求められる場所へ。ボランティアの勧め。遺言状と自叙伝を書く。60からの手習い。どんとこい逆境、カモンストレス。
体力、物忘れ、老いは老人力と思って、何でもいい感じと割り切れ。

高齢者が多くなり、これからますます、高齢社会です。この手のハウツー本がめだちます。売れるということは、皆が見えない将来に不安を抱えている証拠です。
わが町内も高齢世帯がメインとなりました。老いを楽しむとはいきませんが、もう後が見えてきたから故の現実問題。そして、病気、年金、ボランティアなどの家庭環境は、それぞれの家庭で異なるので、一たす一はという具合にいかないのです。

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someday

2018-01-01 | book
Someday「ちいさなあなたへ」

アリスン・マギー 文 alison meghee
ピーター・レイノルズ 絵 peter h. reynolds
なかがわちひろ 訳 

生まれた娘の成長と、それを見守る母親の心情を鮮やかに描いた絵本「サムデイ」。
高校時代に使っていた研究社の新英和中辞典では、somedayの訳は、「いつか」。「未来についてのみ用いる」とある。過去は「the other day」「one day」を用いるとある。

図書館では日本語版で読んだ。そして、原文を購入した。2007年発刊。日本語版は2008年4月。



Someday
ちいさなあなたへ

One day I counted your fingers and Kissed each one
あのひ、わたしは あなたの小さな ゆびを かぞえ、そのいっぽん いっぽんに キスを した。
One day the first snowflakes fell, and I held you up and Watched them melt on your baby skin.
はじめて ゆきが ふった ひ、そらへ むけて だきあげた あなたの まあるい ほっぺで、ゆきが とけていった。
One day we crossed the street, and you held my hand tight.
みちを わたるとき、あなたは いつも わたしの てに しがみついてきた。
Then, you were my baby, and now you are my child.
いつのまにやら あなたは おおきくなって、わたしの あかちゃんは、わたしの こどもに なった。
Sometimes, when you sleep, I watch you dream, and I dream too….
すやすやと ゆめを みている あなたを みながら、わたしも ときどき ゆめを 見る….,
That someday you will dive into the cool, clear water of a lake.
いつか きっと、あなたも とびこむのだろう。ひんやり すきとおった みずうみの みずの なかへ。
Someday you will walk into a deep wood.
ほのぐらい もりへ さまよいこむことも あるかもしれない。
Someday your eyes will be filled with a joy so deep that they shine.
うれしくて たのしくて、ひとみを きらきら かがやかせる ひが きっと ある。
Someday you will run so fast and so far your heart will feel like fire.
しんぞうが はりさけそうに なるまで はやく とおくへ、かけていくひも くるだろう。
Someday you will swing high-so high,higher than you ever dared to swing.
もっと たかく、もっと たかく はずみを つけて、めまいが するほど たかくまで、じぶんを ためすときも あるだろう。
Someday you will hear something so sad that you will fold up with sorrow.
かなしい しらせに みみを ふさぎたくなる ひも あるだろう。
Someday you will call a song to the wind, and the wind will carry your song away.
あなたが かぜに むかって たからかに うたう うたを かぜが とおい ところへ はこんでいく。
Someday I will stand on this porch and watch your arms waving to me until I no longer see you.
やがて せいいっぱい てをふりながら しだいに とおざかっていく あなたを みおくる ひが やってくる。
Someday you will look at this house and wonder how something that feels so big can look so small.
あなたは ふりかえり、あんなにおおきかった いえが とても ちっぽけに みえることに おどろくだろう。
Someday you will feel a small weight against your strong back.
いつか あなたも、 たくましくなった その せなかに ちいさな おもさを せおうときが くるかもしれない。
Someday I will watch you brushing your child’s hair.
わたしの まえで こどもの やわらかな かみのけを とかすかもしれない。
Someday, a long time from now, your own hair will glow silver in the sun.
そうして いつか ながい としつきの はてには、 あなたじしんの かみも ぎんいろに かがやく ひが やってくる。
And when that day comes, love, you will remember me.
わたしのひとしいこ。 そのときは、どうか、わたしの ことを おもいだして。


本の導入部の一節。帯といったところか。いわゆるキャッチー。
A mother’s love leads to a mother’s dream- 
every mother’s dream-
for her child to live life to its fullest
母の愛は母の夢へと導く。あらゆる母の夢へと。彼女の子が精一杯の人生を送るために。

A deceptively simple,powerfull ode to the potential of love and the potential in life,
Someday is the book you’ll want to share with someone else…
today.
愛の力、人生の力を歌う一見シンプルで力強い詩。
「サムディ」は、今日にでも誰かと分かち合いたいと思う本です。
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