パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

今だから「方丈記」 3 簗瀬「角川」

2019-09-29 | book
簗瀬(やなせ)一雄は、1912年(明治45年・大正元年)生まれというから市古の一つ下になる。2008年(平成20年)に亡くなる。

この簗瀬が訳注した「方丈記」(角川ソフィア)は、昭和42年(1967年)に初版発行、平成22年に改版初版、平成30年9月に改版21版となる。

中野幸次が底本とした本なので、6節の37細節の作り。21と33に別の参考文献からの引用文が掲載されている。しかしあえて簗瀬は後から挿入されたものだとしている。

6節の37細節ごとに本文(大福光寺本を主)、その下部に脚注。脚注で足りないところを93の補注。そして現代語訳。異本などの参考資料。京都付近図・平安京図、鴨長明の年譜(その時代の主な出来事付き)を置き、最後に索引を配置した。
35年間、付き合ってきた鴨長明との集大成として、簗瀬が、長明が出家した50歳を超えた頃に、方丈記が世に出た長明58歳、1212年から750年を超えて詠み継がれる方丈記の文庫版に着手した。簗瀬が55歳の昭和42年(1967)に刊行された。そして2016年平成28年で50年を迎えた。

まさに研究書といえる一冊。
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日曜の午後はミステリ作家とお茶を

2019-09-23 | book
アメリカ東海岸、ニュージャージー州に住む50代のミステリー作家、ロングシャンクスの巧妙な事件解決を描いた14の短編集「日曜の午後はミステリー作家とお茶を」を読んだ。シャンクスは50歳台。同じ作家の妻ローラと結婚して20年余になる。軽妙な掛け合いも魅力だ。本邦初公開、2018年5月初版。

作者は、ロバート・ロプレスティ。ワシントン州の図書館に勤務する。1976年から雑誌投稿を始め、1979年に初めて採用され、短編に送られる賞を2度受賞しているという。いずれの短編も末に「著者からひと言」欄があり、楽しめる。読む前に読みたい気持ちが起きるが、読了後が味わい深い。2度読みもよいのでは。

シャンクス、昼食につきあう Shanks at Lunch
妻の取材につきあったシャンクスは、取材の場所となった喫茶店の窓から詐欺の現場に遭遇する。

シャンクスはバーにいる Shanks at the Bar
パネルディスカッションに登壇したシャンクスは、ファンという男性に声をかけられる。男性は推理作家志望だった。男性の話した事件をシャンクスの友人作家たちが真相を暴く。

シャンクス、ハリウッドに行く Shanks Goes Hollywood
知り合いの作家エド・ゴッドウェンが、20歳も年下の女優と結婚し、彼女を殺して捕まった。前妻のジーンは、シャンクスに彼の無実を明かしてくれと頼む。しぶるシャンクスに、ジーンは昔、シャンクスと付き合っていたとローラにいうと脅す。

シャンクス、強盗にあう Shanks Gets Mugged
街で強盗にあったシャンクスは、犯人を突き止める。彼の個人情報を手に入れたシャンクスがとった行動とは。自転車事故による脳震盪が出だしのヒントだという。

シャンクス、物色してまわる Shanks 0n the Prowl
深夜に若い女性巡査がシャンクスの家を訪れた。シャンクスの住むブロックで、深夜に車上荒らしがあった。そのトランクの中に、違法拳銃があった。しかし、犯人には、どの車からとったのか覚えていないという。シャンクスは巡査部長から助けを求められる。

シャンクス、殺される Shanks Gets Killed
殺人事件の犯人を見つけるという作家たちのチャリティイベントに参加したシャンクス。役柄は、早々に殺される役だった。見つけた人にプレゼントする初版本が会場から消えた。

シャンクスの手口 Shanks on Misdirection
ローらとともに参加したパーティー。そこにシャンクスの本を酷評した評論家がいた。そのパーティに同席した蒸留作家の夫のATMトラブル。2つの出来事を軸に、推理と評論家をやりかえすシャンクスがお見事。

シャンクスの怪談 Shank’s Gohst Story
週末に作家の夫婦らがペンシルバニアの古風な農家に集まった。そこで皆がゴーストストーリー(怪談)を披露する。シャンクスは昔自分がゴーストライターになった体験を語る。その作品が出版される前に、その作家はいなくなっていた。

シャンクスの牝馬 Shank’s Male
コーラの友人が所有する牝馬がいなくなり、身代金を要求された。この馬は競走馬ではなく、乗馬を教えるための馬だった。近くその馬に乗る予定だったのは高校生の女の子だった。その調査に乗り出すシャンクス。コンピュータと馬の知識を得て書いたと「著者からの一言」に。

シャンクスの記憶 Shanks for the Memory
小説を映画に売り込むことを考え、引っかかってきたエージェント。彼がシャンクスの住むビッグ・アップルにディナーを食べに金曜の夜に彼女とやってくる。コーラと4人で食事でするが、エージェントから気のない返事を聞き、こちらに来たのは彼女の実家に来るためと気づいたシャンクス。彼女が町を気に入り、皆で散歩に出かける。長らく町に住んでいるシャンクスは並ぶ店の変遷を語る。宝石店の隣の店が夜に工事をしていた。シャンクスは、その店と宝石店は以前は、一軒の書店だったと語る。

シャンクス、スピーチをする Shanks Commences
シャンクスの母校の大学の学位授与式に講演の依頼があった。子どものないシャンクスは、遺稿などを大学に寄付してほしいと依頼される。他の寄付者とともにその式に呼ばれたシャンクスは30年前の在学時代にシャンクスを酷評した教授がいることを知る。その教授が殺された。シャンクスの既刊本も消えてなくなる。シャンクスの推理を当てにしなかった地元の刑事、スタインボック警部補も無視できなくなる。

シャンクス、タクシーに乗る Shanks’ Ride
酔って一人タクシーに乗り込んだシャンクスは、運転手が10年前、若い頃にロックバンドの設営スタッフをしていたが、仲間に裏切られ、盗みの濡れ衣で、好きな仕事を追いやられた過去を語る。誰が真犯人なのか。シャンクスは解き明かす。

シャンクスは電話を切らない Shanks Hold the Line
シャンクスに電話がかかる。パソコンがいつ壊れてもしようがない状態だ、修理が必要と。適当に相手と電話でやり取りするシャンクスは、最近、隣人の80歳近い女性が同じような電話を受け、パソコンを壊されてしまったと駆け込んできたことを知っていた。ちょっとした復讐劇。

シャンクス、悪党になる Shanks Goes Rogue
シャンクスは、コーラに頼まれ、彼女の友人のディクシーの3度目の夫となる男性の品定めを頼まれる。ディクシーとの出会いを話しを聞き出し、それが嘘だと指摘する。

この作品は、ロプレスティの短編を読んだ訳者が、出版社に翻訳を持ち掛けたことで日本で出版する機会を得た。いずれの作品も短編で、軽く、ユーモアに富み、謎解きをきちんとしてくれる。続編が紹介されることを楽しみにしている。
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青春のジョーカー

2019-09-22 | book
1983年生まれの奥田亜希子の「青春のジョーカー」を読んだ。2018年3月刊行。
中高一貫校の私立中学校を舞台に、3年生になった基哉の青春の悩みと成長を描く。

基哉の家族は、獣医の父とその手伝いをしている母親。兄の達己は、引きこもりになったが、大学受験を経て大学生活をエンジョイしている。

基哉は、兄の大学のサークル活動で女子大生の二葉と知り合う。そんな基哉には気になる同じクラスの女の子咲がいた。

閉塞感に満ちた学校生活。基哉は尚介と弦のグループにいた。啓太の4人のグループは強者グループ。基哉は弱者のグループ。啓太が、基哉と二葉がいるところに居合わせた。二葉が啓太に放った言葉で、形勢が逆転する。基哉は啓太のグループに入る。

二葉が拾った子猫。そして、咲とは、殺処分対象の犬猫を預かるアニマルシェルターを通し、基哉は2人の女性と交流を深めていく。

沖縄への修学旅行という異次空間。達己の大学サークルの暴行事件なども盛り込んだ。

犬や猫の愛玩動物の生態。青春のボーイミーツガール。ジョーカーとは形成を逆転させる最強のカード。登場人物たちが得たジョーカーとは。
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銀の匙

2019-09-16 | book
中 勘助の「銀の匙」を読んだ。著名な本で、かなり昔に岩波文庫を買っていたが、書架に置いていた。なぜか、読みたくなった。

なぜにこれほど詳らかに幼少、学校のことなどの生活や感情が書けるのか。天才ではないかと思える。四季の移り変わり、花々の名、行事の様子、細やかな感情の機微。これらをまるで今、そこにいるかのように綴っている。

中は、1885年(明治18年)生まれ、1965年(昭和40年)に亡くなる。東京出身の作家・詩人である。この作品は恩師ともいえる夏目漱石が絶賛し、前編と後編に分かれる。前編は幼少時から小学校、後編は小学校から17歳。前編は中が27歳の時に書かれ、後編は翌年に書かれた。前編は大正2年1913年4月から6月に、後編は大正4年1915年4月から6月に新聞掲載された。手元の岩波文庫は、1935年昭和10年11月発行解説が和辻哲郎、2003年平成15年に改版第8刷だ。

前半は、病弱な私と乳母のような叔母さんとの暮らし。下町の行事や暮らしがまざまざと語られる。近所のお国ちゃん、就学して近所のお蕙ちゃんとの友情、先生やクラスでの確執。後半は11や12歳になり、兄との確執。「大和魂」「孝行」の授業、老僧との出会い、16歳の時の叔母さんの死、17歳の夏休みのことなど、思春期の反抗を綴る。

自我をきちんと持ち、自分を持っていた一人の少年がいる。それは人の成長の中で、時代を超えて共感されるものなのだろう。

銀の匙は、冒頭に今の作者が、昔からお気に入りの小箱の思い出を語るなかで出てくる。

岩波書店、1913年大正2年設立。2003年平成15年の創業90周年企画「読者が選んだ私の好きな岩波文庫100」で第3位。1位は漱石の「こころ」、2位も「坊ちゃん」だった。
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レイモンド・チャンドラーの世界(5) The Little Sister

2019-09-15 | レイモンド・チャンドラー
レイモンド チャンドラーの長編7作の5作目、「リトル・シスター(かわいい女)The Little Sister(1949)」の村上春樹訳を読んだ。2010年12月刊行。

村上によると、チャンドラーは、この作品が唯一積極的に嫌いだと言っていたらしい。なぜなら「悪い気分の元に書かれた作品だ」と言うのだ。このころチャンドラーは、映画のパラマウントの撮影所に属し、シナリオライターとして、周りの評価も高く、忙しかったらしい。そのため本業の小説創作が、切れ切れになったことによる。

カリフォルニアのフィリップ・マーロウの事務所に、小柄で身ぎれい、ふちなし眼鏡にノーメイクの娘オーファメイ・クエストが現れる。カンザスで母親と2人で暮しているが、カリフォルニアで働いているはずの28歳の兄オリン・クエストが音信不通になった。探して欲しいという。
兄の住まいはベイシティ―のアイダホ・ストリート449番地。しかし、そこに訪ねたがいなかった。

マーロウは手始めに449番地のアパートを訪ねる。鋭いナイフと拳銃を手にした怪しげな小男。その飲んだくれの管理人が電話して助けを求めた医師ドク・ヴィンス。オリンが借りていた214号室にはかつらをかぶった屈強な男。ジョージ・w・ヒックスがいた。

マーロウが帰り際に管理人室に入ると、管理人のクローゼンが殺されていた。首の後ろにアイスピックが突き刺さっていた。
匿名の電話がかかり、ホテルの332号まで来てくれという。貸金庫に預けたいものがある。取りに来てほしいと。午後、マーロウが部屋に入ると金髪の女がおり、拳銃で頭を強打される。その部屋には、ヒックスがアイスピックで殺されていた。部屋の中は物色されていたが、マーロウは、死体から写真の受取証を手に入れる。マーロウは、ホテルの保安係フラックから、逃げた金髪の女の車のナンバーを聞き取る。金髪女は、メイヴィス・ウェルドという女優で、同じアパートには、ドロレス・ゴンザレスという女優が住んでいた。
翌朝、手に入れた写真には、食事を楽しむ男女が写っていた。女はメイヴィス・ウェルドだった。

行方不明のオリン。オリンの宿の管理人クローゼンとオリンの部屋にいたヒックスは二人ともアイスピックで殺された。ヒックスはオリンが撮ったと思われる写真を持っていた。その写真を手に入れようとした女優のウェルド。その写真には女優のウェルドが飲食店のオーナー、スティールグレイブと昼食をともにしていた光景が写っていた。その昼食の日にギャングのモー・スタインが殺されていた。写真に写っていた飲食店のオーナー、スティールグレイブは、やくざのモイヤーだとタレこみがあり、しかもスティールグレイブは留置場に入っていたことになっている。しかし、写真では、その日、スティールグレイブは自分の店で食事をしていた。

オーファメイから電話があり、兄は医師の世話になっているという。その名は、ドクター・ヴィンセント・ラガーディだというのだ。ラガーディの家へ出向くマーロウ。多くの注射器、ラガーディがマーロウの前で、自分の親指の付け根をペーパーナイフでつつき、血を吸うシーン。これまでの情報で推論A・B、ラガーディの立場から推論Cを語るマーロウ。ラガーディは、かつていたオフィスビルから、今では浜辺の町で胡散臭い診療をしていた。仕掛けられたエジプトタバコ。意識を失うマーロウ。38歳。山場だ。そしてまた一つ、男の遺体を見つける。2階の寝室にオリン・クエストの衣類。

クリスティー・フレンチ警部補から署へ呼び出される。午後4時。直後にオーファメイからの電話。ラガーディの家へ行き、銃声を聞き、警察を呼んだと。兄の死体があったという。警察での緊張感あふれる時間。解き放たれたマーロウは、身も心もくたくただった。事務所に帰ると1本の電話。ゴンザレスからだった。ヴェルドが会いたがっていると言う。

その家へ着くと、ヴェルドが殺したスティールグレイブの死体があった。彼が弟を殺したとヴェルドが言った。マーロウはヴェルドを逃がす。そして、フレンチ警部補にここに来るように電話をかける。フレンチに逮捕され、警察で翌朝を迎えたマーロウ。地方検事のエンディコットが待ち構えていた。そこにはヴェルドと敏腕弁護士のファレルがいた。

翌朝、マーロウが事務所にいるとオーファメイから電話があった。近くの電話ボックスにいると。ヴェルドは、リーラというオーファメイの異母姉だった。オーファメイのバッグにはリーラがくれたという100ドル札が10枚。オリンと、姉リーラの関係も明らかになる。そこへゴンザレスから電話が入る。最後の衝撃的なシーンが待っている。

リトル・シスター 「妹」。
3日間の出来事を鮮やかに浮かび上がらせる。いささか難解で突然のシーンも多い。いつもの物語の整合性が問題になるが、この作品は、その傾向がいつもより強い。あまりに話しが入り組んでいる。プロットにも無理があり、ストーリと相関をたどるのに時間がかかる。いつものチャンドラーのなせる業だ。いきなり女優のアパート、いきなりオーファメイの姉のリーラの話などだ。
しかし、村上は、この作品に愛着があるという。その理由を、女性、オーファメイ・クエストにあるという。オーファメイ・クエストとマーロウのシーンを読むためだけにもこの本の価値があるというのだ。
なぜ、オーファメイが、マーロウの事務所に来たのか。昔付き合っていた彼の名前が、フィリップだったからというのもいける。マーロウとの最初の生真面目さが現れた田舎娘の小気味よい会話も素敵。そしてマーロウの調査の合間に、度々事務所を訪れる会話も軽妙。小娘に付き合わされているマーロウという図式がこの作品の魅力か。

ちょっとした細かい描写の集積、鮮やかに目の前に立ち上がる様々な情景、切れの良い会話が繰り出される楽しみ。村上曰く、「チャンドラー節を楽しめ」。そしてチャンドラーの集大成である「ロング・グッドバイ」は、この「リトル・シスター」なくしてはなかったと。チャンドラーの混乱とマーロウの疲労感。村上曰く、「くぐり抜けなければならないひとつの人生のプロセスだった」と。

村上「僕はこの本を読み返すたびにいつもわくわくする気持ちになれる。印象深いシーンや台詞もたくさんある。」という。すぐに脇道にそれて、気の利いたことを言ったり、悪ふざけをしたりするところが、逆にこの作品の魅力になっている。
訳者あとがきのチャンドラーの男性・女性論、クエスト家の兄弟姉妹年齢論も必見。
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杉村三郎シリーズ「華燭」

2019-09-08 | book
2018年3月号オール讀物に掲載された、宮部みゆきの杉村三郎シリーズ「華燭」。

杉村三郎は、荒川沿いの下町で、住み込みで探偵事務所を間借りし、町内の防犯担当役員をしている。娘の桃子も小学5年生になった。

冒頭は、2012年の町内会での新年会のシーン。大家の資産家、竹中夫人の松子から、ある式に出てほしいと頼まれる。同じ町内に住む小崎佐貴子の娘、来年中学3年生になる加奈が、五つ違いの母の妹、45歳の佐江子の娘、静香24歳の結婚式に出たいと言うのだ。竹中夫人も出席するという。静香は加奈が通う中学校の事務員をしていた。佐貴子は、両親や妹と絶縁状態にあった。

そして、結婚式当日の3月3日を迎える。結婚式午前10時、披露宴12時半開始だった。11時前に式場に3人で到着。しかしまだ、式が始まっていなかった。

加奈が語る母の実家との絶縁の理由。姉の佐貴子25歳の結婚式当日に、妹の佐江子が婚約者を連れて逃げ出した。佐貴子が結婚したのは35歳。10年の空白を恨みに思っているという。

時間待ちで休憩をしていた3人のところに、別の花嫁、菅野みずきが式場から逃げてくる。静香の結婚式は中止になった。婿の元カノが乱入してきたらしい。

姉妹の確執、静香の自立。2破談を鮮やかに紐解く杉村の推理。前回の「絶対零度」はどろどろの陰湿さを含んでいた。今回はすっきり系。杉村三郎シリーズはスッキリ系がいい。
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今年も布袋草咲く

2019-09-05 | life
暑い夏。お盆過ぎから急に涼しくなった。虫の声も夜から朝にかけて聞こえる。しかし、昨日今日と暑い。

そんな朝、布袋草が咲いた。一昨日、昨日と3本目。

冬野菜の床を作る。ポリマルチで畝を作る。
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深海の使者 吉村 昭 58

2019-09-01 | 吉村 昭
「深海の使者」は吉村昭が昭和48年(1973)に発刊したいわゆる戦争文学の一つ。

題名からわかるように太平洋戦争に突入した昭和17年、日独両国の関係強化のためその行き来の手段とし採用された潜水艦の物語。

陸地はもちろん、制空権も限られた中、日本とドイツの道は海の下しか無かった。

太平洋からインド洋、そしてアフリカの南を通り、大西洋へ。敵の襲来と海流の恐怖。病気や深海での厳しい生活の様子も。
往復に4ヶ月の行程、滞在時間も換算すると204日もかかった。ましてや国際的にも戦局は悪化の一途をたどる中の出来事である。
19年には英米軍のフランスノルマンディー上陸、米軍のサイパン上陸と日独を取り巻く状況はますます悪化してくる。

ドイツに向かった5つの潜水艦のうち、1隻が往復。ドイツからの潜水艦も2隻の内1隻が到達できた。

吉村の綿密な資料分析がそこに生きる人々の生き様を映し出す。終戦時の欧州在住の日本人の動向、終戦後の潜水艦の末路がむなしさを誘う。
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