パンダ イン・マイ・ライフ

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音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

山本一力 いっぽん桜

2023-10-08 | 山本一力
2002年平成14年6月から2003年平成15年2月まで、月刊文芸誌に掲載された4作品を所収した「いっぽん桜」2003年6月刊行を読んだ。

いっぽん桜
大店の口入れ屋井筒屋の頭取番頭の長兵衛。54歳。七代目の重兵衛は自分は隠居し、41歳の息子に身代を譲るので、長兵衛にも身を引いてほしいと告げる。今度の頭取番頭は40歳だ。
12歳で丁稚に入り、手代、結婚、2番番頭、そして47歳で頭取に。妻と娘がいるが、これまで仕事一筋に勤めてきた。なぜ、この俺が・・・。商売敵の千束屋からの話を雇いの誘いと思い込み、井筒屋からはその後音沙汰はない。その長兵衛に魚卸の木村屋伝兵衛から、帳面をみてくれないかと誘いがかかる。これまで通り自分のやり方を持ち込んだ長兵衛に店内から不満が出る。
7年前に家に植えた桜は、植えられたところで枯れずに毎年、花を咲かせたり、咲かせなかったり自分のリズムで生きている。井筒屋のことを「うち」といまだに言う長兵衛も自分の立ち位置に気づき始める。

萩ゆれて
土佐藩の下士、服部兵庫は22歳。妹の雪乃と母志乃の3人暮らし。父清四郎は志乃の薬代のため、出入りの商人からまいないを得るようになる。これが城主に知れて切腹を申し付けられた。父の上役も息子を使い、兵庫を木刀で打ちのめす。その傷をいやすため、海辺の湯治場にいた、兵庫は漁師の娘、りくと出会う。兵庫は武士という身分を捨て、りくと魚屋を営みを始める。志乃と雪乃も組屋敷を出て、ともにともに住み始める。兵庫の親戚は自分の保身のための冷たい視線を注ぐ。いやがらせをする上役たち、2人を温かく見守る雪乃と、りくの父と兄。りくの看病に次第に心を開く志乃。

そこに、すいかずら
日本橋の料亭「常盤屋」の一人娘秋菜が、亡き父が大枚をはたいてこしらえたに雛飾りを、店から舟で菩提寺へ運び出すシーンから始まる。父の治左衛門は5代目で、料亭の2代目だった。紀伊国屋文左衛門、紀文との出会いが、徳川5代将軍綱吉の上野寛永寺の根本中堂の造営に関わることになる。そこで設けた財で、治左衛門は一人娘のために、雛飾りを作る。そして、当時多かった火事に巻き込まれ、秋菜の両親も亡くなる。それから5年、秋菜は立ち直れずにいた。雛飾りは、治左衛門が作った頑丈な蔵にしまわれ、難を逃れていた。

芒種のあさがお
芒種は二十四節気の一つで夏至の前。田植えが始まり、梅雨めいてくる。
江戸の漁村、芝田町の酒屋、伊勢屋徳蔵とおてるは結婚して4年後に子宝に恵まれた。その女の子がおなつだ。徳蔵はあさがおが大好きだった。17歳のおなつが深川八幡宮の祭りに出かけ、江戸でも有名な深川のあさがおづくりの職人の要助の息子、亮助と出会う。しかし、亮助の母、おみよが易断に凝っていて、二十歳まで結婚を許してくれない。結婚できても、易のせいで、暮らしがややこしい。そのおみよも、おなつたちが結婚して4年目に亡くなる。子宝に恵まれないおなつ。亮助と要助の3人暮らしが始まる。
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