春画の穴(春画―ル著)

2022-12-22 00:00:16 | 書評
新潮社の書評誌『波』に連載されていた『春画の穴』が終了し、今後、書籍として発刊されることになる。著者の「春画―ル」氏だが、本名ではないだろう。苗字が「はるが」で名前が「いちる」ということもないだろう。文章を読むと、女性のような感じがするが、それも定かではない。

で、『波』誌ではモノクロではあるも大量の春画が掲載されているが、製本されるときも春画が掲載されるのだろうか。

とはいえ、本を読んで、ムラムラして、ATMで現金を出してから風俗店に向かうということは、あまり考えにくい。どちらかというと、春画に関して、題材や、画風、読者層やまたそれらに対する規制などについて、冷めた視線で筆を進めている。

もともと春画は日本では平安時代に既にあったと言われる。主な目的は2つ。一つは花嫁道具。浮世絵は12枚ずつ箱に収められていて、いわゆる48手というのも浮世絵をおさめる箱が4つということ。もう一つの役目は「お守り」。武士が鎧の下に入れたり、寺社がお守りとして天井に貼ったりしていた。意味はよくわからない。

その後、江戸時代になって「お守り」の必要がなくなった。幕府は発禁にするが実際には大量に出回りはじめる。普通の浮世絵よりも春画の方が沢山出版されていたという話もある。

一応、鑑賞のルールなどがあり、秘所は大きく露骨に表現し、女性は美しく、男性は見にくく書かれるのが普通だ。ストーリー性の大きなものも人気になる。とはいえ、もともと浮世絵とは現世ではなく浮世のことを描くのだから、虚実などどうでもいいわけだ。