町田駅から太い道や細い道、あるいは急な坂道の試練の末、国際版画美術館にたどり着く。広大な敷地(公園)の中に大きめな建物がある。といっても予想よりは小さいかな。
版画と言っても、様々な分野があり、浮世絵は重刷りだし、リトグラフもそうだろう。また、ある意味、錦絵と版刷りとどちらが,芸術性が高いかなど比べてもしょうがないだろう。
版画は何枚か制作されるのだから、作品の貴重価値からいえば劣ることはあるだろうが、そのかわり芸術の大衆化という意味では貢献は大きい。江戸の版元も広重や写楽のような人気作者の場合何枚刷り上げればいいのか悩んだのではないだろうか。現在でも、新しく美術館を作る場合、作品数を集めないといけないので、ピカソやシャガールのような量産型の画家作品を買い込んだり、リトグラフで壁面を埋めることが多い。
今回(~4月7日)は、『浮世絵と百人一首』という企画で、三作の百人一首物を展示している。
時代の順に、北斎の師である勝川春章の『錦百人一首あつま織』(版画32作)。1775年。49才の時の作。書は書家猨山周之(さやまちかゆき・略字=猿)による美字である。
次に、葛飾北斎による『百人一首うばがゑとき』(錦絵27作揃)。1835‐1836年。北斎75才である。さらに、国芳、広重、三代豊国による『小倉擬百人一首』(錦絵100枚揃のうち42作)。1845‐1848年。国芳47才。広重48才、三代豊国59才。
ここに画像を出したのは、『錦百人一首あつま織』から、
難波江の芦のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき 皇家門院別当(女性)
世の中は常にもがもな 渚こぐあまの小舟の綱手かなしも 鎌倉右大臣(源実朝)
最初の歌は、いかにも選者の定家好みで、熱い恋心を技巧的に押し隠した心象風景を描いている。立ち姿の中に、どこにいけばよいのか居ても立ってもいられない心中の大波を表している。二首目は、天下人であるべき作者がどうしようもない破滅の道を目の前にした絶望感を渚に浮かぶ小舟の一人船長の視点で表現している。描かれた右大臣は現実から目をそらすように首を回して虚空を見つめている。
ところで、競技かるた的に一首目を見ると、
上の句は「なにわえの」だが、「な」から始まるのは8首もある。さらに「なにしおわは」「なにわかた」というのがあるので、二文字目で3首、三文字目で2首、四文字目で確定ということになる。それぞれ下の句があるのだが、下の句の「みをつくしてやこひわたるへき」の正解に対して「みをつくしてもあはむとそおもふ」というのがあって、難易度が高い。
二首目は、
上の句が「よのなかは」だが「よのなかよ」がある。下の句は「あまのおふね」であるが「あまりてなとか」がある。
実際は、上→下という記憶も初心者には重要だが、上級者は下→上という記憶の方が重要になる。
版画と言っても、様々な分野があり、浮世絵は重刷りだし、リトグラフもそうだろう。また、ある意味、錦絵と版刷りとどちらが,芸術性が高いかなど比べてもしょうがないだろう。
版画は何枚か制作されるのだから、作品の貴重価値からいえば劣ることはあるだろうが、そのかわり芸術の大衆化という意味では貢献は大きい。江戸の版元も広重や写楽のような人気作者の場合何枚刷り上げればいいのか悩んだのではないだろうか。現在でも、新しく美術館を作る場合、作品数を集めないといけないので、ピカソやシャガールのような量産型の画家作品を買い込んだり、リトグラフで壁面を埋めることが多い。
今回(~4月7日)は、『浮世絵と百人一首』という企画で、三作の百人一首物を展示している。
時代の順に、北斎の師である勝川春章の『錦百人一首あつま織』(版画32作)。1775年。49才の時の作。書は書家猨山周之(さやまちかゆき・略字=猿)による美字である。
次に、葛飾北斎による『百人一首うばがゑとき』(錦絵27作揃)。1835‐1836年。北斎75才である。さらに、国芳、広重、三代豊国による『小倉擬百人一首』(錦絵100枚揃のうち42作)。1845‐1848年。国芳47才。広重48才、三代豊国59才。
ここに画像を出したのは、『錦百人一首あつま織』から、
難波江の芦のかりねのひとよゆゑ みをつくしてや恋ひわたるべき 皇家門院別当(女性)
世の中は常にもがもな 渚こぐあまの小舟の綱手かなしも 鎌倉右大臣(源実朝)
最初の歌は、いかにも選者の定家好みで、熱い恋心を技巧的に押し隠した心象風景を描いている。立ち姿の中に、どこにいけばよいのか居ても立ってもいられない心中の大波を表している。二首目は、天下人であるべき作者がどうしようもない破滅の道を目の前にした絶望感を渚に浮かぶ小舟の一人船長の視点で表現している。描かれた右大臣は現実から目をそらすように首を回して虚空を見つめている。
ところで、競技かるた的に一首目を見ると、
上の句は「なにわえの」だが、「な」から始まるのは8首もある。さらに「なにしおわは」「なにわかた」というのがあるので、二文字目で3首、三文字目で2首、四文字目で確定ということになる。それぞれ下の句があるのだが、下の句の「みをつくしてやこひわたるへき」の正解に対して「みをつくしてもあはむとそおもふ」というのがあって、難易度が高い。
二首目は、
上の句が「よのなかは」だが「よのなかよ」がある。下の句は「あまのおふね」であるが「あまりてなとか」がある。
実際は、上→下という記憶も初心者には重要だが、上級者は下→上という記憶の方が重要になる。