三連敗と三十連勝

2020-10-31 00:00:43 | しょうぎ
少し前に、藤井二冠の負けが込んだ時に、「8割4分もの勝率の人にとっては、3連敗することの方が30連勝するよりも確率が低い」と言われたそうだ。3連敗が、王将戦挑戦者決定リーグでのことか9月12日から10月5日までの間の3連敗のことかよくわからないが、まず計算してみる。30連勝する確率は、(0.84の30乗)で、約0.54%。3連敗は(0.16の3乗)で、約0.41%。確かにそうだ。

しかし、この3連敗などで、実際の生涯勝率は少し下がっている。10月29日時点の生涯勝率は194勝39敗で、(0.83262)。この数字で30連勝の確率は約0.41%で3連敗の確率は0.47%。つまり3連勝の確率の方が高い。では、勝率何割が均衡点なのかを計算すると、0.8351(8割3分5厘1毛)になる。あと3.5連勝(つまり4連勝)すると再度分岐点を超えることになる。

実は、調べているうちに、各棋士の今年度の勝率をチェックしたのだが、10月29日段階で藤井二冠は第4位である(0.7741)。第三位は黒田四段(0.7777)。ただし10月30日に対局があるので負ければ4位と入れ替わりになる。第二位は服部慎一郎四段。15勝3敗の(0.8333)。

そして第一位は、まったく意外な棋士である。勝率十割。

桐山清澄九段(73)である。今年度成績は1勝0敗。昨年の竜王戦トーナメントでの残留決定戦がコロナ禍で今年の7月7日に行われ、見事に残留を決めた。出場権が残るのは竜王戦だけになったが、その一つの星を七夕の日に勝ち取るとは、なんとロマンティックな話だろうか。(対戦相手にとっては迷惑そのものだが)


さて、10月17日出題作の解答。





飛車をギリギリでつかう。

動く将棋盤は、こちら。(flash版、edgeは不可)

gif版はこちら。



今週の問題



狭いところで駒の補充が必要。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

熊野古道麦酒、新潟産を買う&飲む

2020-10-30 00:00:11 | あじ
熊野古道のことなどほとんど知らないのに、南紀方面にGO TOトラベル。古道の1%ぐらいしか歩かないので、申し訳ないので(←ウソ)、地域振興券をもらって土産店でチケット散財する中で、「熊野古道麦酒」350㎖三本セット箱入りを購入。

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帰宅後に冷やして飲むと、「どこかで飲んだことがあるような」味に感じた。缶の裏側の細かな文字を読むと、販売会社は和歌山の会社なのだが、製造者は新潟県で有名なビール会社だった。新潟産の熊野古道ビールのわけだ。どこかで飲んだことがあるような味というのは、別の第三の県の名産でもあったのかもしれない。考えてみれば、ビールの原料が有名なわけでもないし。

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さらに気が付いたのだが、店頭で買う時に缶の裏側を確認しようにも、三缶セットで箱に入っているわけだ。というか、箱に入れたのには理由があった、ということだ。敵ながら・・・。

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ついでに湯浅の町で買った、パウダー状の醤油。あまり醤油の味がしない。ラベルには、『The SOY Powder』となっていて、必ずしも醤油ということではないとも取れるが、では、一体なんだったのだろう。ビンが空になった頃にはわかるだろうか。

眼下の敵(1957年 映画)

2020-10-29 00:00:28 | 映画・演劇・Video
米国と西独の共同制作の戦争映画。第二次大戦の時に、米国の駆逐艦とドイツの潜水艦(Uボート)の一対一の対決を描いたもの。漁師とマグロの戦いにも似ている。



あるUボートは機密書類の受け取りのために目的地に急いでいたところ米軍の駆逐艦に発見される。逃げるか攻めるか。両者とも逃げたら映画にならない。Uボートは魚雷攻撃が最大の武器だが、魚雷はかわすことができる。一方、この駆逐艦には魚雷発射管がないため、潜水艦の攻撃には爆雷を海中に放り込む。この場合は爆発する深度を設定するので、深度が合わないと攻撃失敗となる。

互いの船長は策略を練りに練り、さらに相手の頭脳の裏をかこうとする。

実際には、魚雷でも爆雷でもなく、両者の体当たりという原始的な戦法で両艦とも沈み、多くの兵は救命ボートで脱出する。

奇妙なのはドイツ兵が英語を話すこと。ドイツで上映される時は米軍兵がドイツ語を話すのだろうと推測したが、その事実はないそうだ。米国中心主義だ。

米軍駆逐艦長を演じるのは、ロバート・ミッチャム。ドイツ軍潜水艦長を演じるのは、クルト・ユルゲンス。本作をはじめドイツ軍の指揮官を演じることが多い。日本軍の役を演じることが多い渡辺謙と同じ。驚くのは彼の本名。クルト・グスタフ・アンドレアス・ゴットリーブ・フランツ・ユルゲンスだそうだ。

もっと悲惨なシーンを見たい人には物足りないかもしれない。

醤油の町、湯浅

2020-10-28 00:00:46 | たび
今ではそういうこともないのだが、ずっと若かったころ、海外から日本に戻った時に「日本の匂い」を感じることがあった。土地によって匂いはあるのだろうが、日本のそれは、醤油に近い発酵臭だった。あるいは魚醤の匂いだったかもしれない。

その醤油のふるさとというのが和歌山県の湯浅ということになっている。



鎌倉時代に中国の禅僧が、和歌山の由良にある興国寺に渡来する時の手土産が金山寺味噌の製法だった。その上澄みや沈殿物を精製し醤油を得たということのようだ。その醤油を大量に作り始めたのが、湯浅の町。興国寺は山中にあるが、湯浅は海岸に近く交通の便に優れている。そして醤油の製造所が並ぶ町になった。



また、大手の醸造所だった濱口家は、大需要地の江戸をみすえて千葉県銚子で醤油の製造を始めた(ヤマサ)のだが、和歌山と銚子を往復して仕事をしていて、たまたま安政の大地震=大津波の時には和歌山にいた。高台の安全な場所に地域住民を避難させるために、田の稲に火を放って逃げ道を明示して多くの人を助けたといわれる。新暦だと1854年12月24日のはずなので、枯れた稲だったのだろう。「稲むらの火の館」という記念館もある。



現在は、醤油製造していた当時の用具が並ぶ醤油博物館や金山寺味噌、醤油販売店などが残る歴史的町並みが保存されている。売店でパウダー状の醤油を買ったのだが、特に醤油の味は感じないのだが、例の味覚異常になったのだろうか。

文豪が足を運ぶ玉津島神社

2020-10-27 00:00:17 | たび
紀三井寺にお参りした後、海辺にある玉津島神社に足を運ぶのが古くからの習いだったようだ。通例に従い、玉津島神社に。



お祀りしている神は天照大御神の妹、稚日女尊と神功皇后。のちに絶世の美女と言われた才女、衣通姫(そとおりひめ)も祀られている。本朝三美人とか和歌三神の一人とされる。美しさが衣を通しても輝いているという意味の名である。



彼女たちに参れば、自らの文才を磨けると勘違いするものが多く、在原業平、紀貫之、小野小町も訪れている。小野小町も世界三美人と言われるが。いかにも人間的な歌人である。

花の色は移りにけりないたずらにわが身世に古るながめせしまに


おそらく衣通姫の美というのはギリシア神話の女神アテネのような冷静な知的美貌だったに違いないだろう。境内には小野小町が上着をかけた塀があるのだが、もちろん当時のものではない。


そして、松尾芭蕉は春の終りに紀三井寺の桜を楽しみにやってきたのだが、すでに花は散った後で、おおいに嘆いたそうだ(芭蕉は多くの場合、名所に着く一日前に、一句をしたためているので、当日、パッと咲いた花の句を披露する予定がだいなしになったのだろう)。いささか感情的な句を詠んだ。

見上ぐれば桜しもうて紀三井寺


見上ぐれば、と詠むのだから本当は玉津島神社のある和歌の浦から紀三井寺は見えるので、山に上がらなかった疑惑も感じる。

行く春に和歌の浦にて追いついたり


紀三井寺の春は終わったのに和歌の浦では、まだ春が残っていたという意味でいいのだろうか。山の春の方が先に終わるというのは合点がいかない。違う種類の桜なのかもしれない。

そして、夏目漱石。和歌山新聞主催の講演会を終えた後、和歌の浦、玉津島神社に足を伸ばしている。小説『行人』に書かれているそうだ。

知らない方が良かった話だが、芭蕉も、漱石も、当地を訪問後、5年で他界したそうだ。私は文豪ではないので、関係なしとしておくが、なかなか記憶からは消えないものだ。必殺五年縛り。携帯の契約か?

赤い月(下)(なかにし礼著)

2020-10-26 00:00:01 | 書評
上巻を読んだ後、1週間も経ってしまった。上巻では満州の地で終戦を迎え、ソ連兵の蛮行に追われるように逃げ回ってやっとハルピンに辿り着いた森田酒造の森田母子の苦闘が描かれていた。



下巻ではさらに、日本政府から見捨てられた満州移住の日本人の悲劇が浮き彫りになる。悲劇の連続だ。ソ連は男たちを強制労働に引き立てていくし、後を引き継いだ中国は、戦犯容疑で生き残った者を間引いていく。さらにアヘン中毒者の話。特務機関員など要領のいいものだけが助かり、何かにこだわりや主義主張を持つものは、現実の前に気力も切れていく。

そして帰還船。とにかく、命以外のすべてを捨てて、祖国に戻っても国のできることはない。とにかく戦争は大失敗だったわけだ。

その50年後の後日譚。時が進んだだけで、生き残った者たちの記憶は消えることはない。なかにし礼の原点とも言える重質な長編だった。

『海のほとり』岡嶋和幸展

2020-10-25 00:00:19 | 美術館・博物館・工芸品
丸の内三丁目のエプソンスクエア内のギャラリー「エプサイトギャラリー」で開催中の岡嶋和幸展に立ち寄る。

前々から、そこにギャラリーがあることは知っていたのだが、タイミングが合わずというか、コロナ禍の結果、ためらっていたのだが、近くにGOTOイートする機会があったので。

岡嶋さんの題材は海なのだが、海そのものというよりも海と人間のかかわりのような撮り方も多い。

一つのパターンが日本海側の海岸。鳥取から京都方面まで車で撮影ポイントを探していたそうだ。もう一つのパターンが千葉の海。千葉県に居住されているようで、千葉の海岸は、ほとんどが人工的に利用されている。海で生活する人の生業を捉えている。

たぶん展覧会の写真をそのまま、ここに掲載するのは問題があるので、小さく縮小したが、故郷の福岡にある「猫の島」の猫も撮られている。



後で調べると、驚くことがあったのだが、福岡県には、いわゆる「猫の島」がたくさんあって観光地となっているようだ。地島、大島、小呂島、玄海島、柏島、姫島の六島もある。

そして、日本海の海岸のことを考えてみると、少し理由がわかるような気がする。

まず、新潟あたりから日本海一帯、そして九州北部といったところの海を写すということは、おおまかにいって南から北にカメラを向ける。太陽は背中側にあるから波の陰影は薄く映りやすい。太平洋だと具悪で北から南に向くので波頭の影は、こちら側にできて、海の色のコントラストが強くでる。

日本海側の海を写すのが好きというのは、穏やかな海を好み、太平洋の海が好きというのは賑やかな海面が好きということだろうか。

東北地方は東西関係なので、撮影時刻によってさまざまなのだろう。

名誉四段免状のこと

2020-10-24 00:00:45 | しょうぎ
先週、横浜市歴史博物館で開催中の「緒方拳」展に行った時に、緒形拳(1937-2008)の新国劇時代の師匠である北条秀司氏(1902-1996)のことが紹介されていた。「拳」という字を芸名に決めたのは北条氏の妻だそうだ。この北条秀司氏の舞台脚本の最高作の一つが「王将」。三部作になっていて、阪田三吉の一代記であり、緒形拳のはまり役であり、村田英雄のヒット曲にもなった。

北条氏に対し日本将棋連盟は二度にわたり段位免状を贈呈している。舞台のヒットに対し三段。歌謡曲のヒットに対し四段である。帰宅後、念のため問題図書である「将棋紳士録」で確認すると、鎌倉市の正確な住所と電話番号とともに「四段」の欄にその名前が記載されている。

展覧会には、その四段免状が出展されていたのだが、残念ながら撮影禁止だし筆記具も持っていなかったため、文面を復元できないのだが、明らかに通常の免状と異なっている。通常の免状は段位によって異なるのだが、基本的には「長く将棋の勉強をして強くなったので、〇段を允許する」という内容なのだが、最後のところが「名誉四段を」というようになっている。普通に考えれば、「長く勉強をしたわけではないですが、将棋の市民権向上に役立ったので、お礼に名誉〇段を差し上げます」という文面のはず。特に政治家に持っていくことが多い。

一方で、ゆるキャラで有名な「くまモン」も平成26年に初段免状をもらっている。その免状部分の画像を見ると、一般免状と同じだ。「つとに将棋に丹念して研鑽怠らず進歩顕著なるを認め、ここに初段を允許す」。



知り合いに名誉〇段を送られた人がいないので、現代でも名誉免状と一般免状が別個に存在するのか調べるのは難しい(両方持っている人はレアだろうし)。


さて、10月3日出題作の解答。





大駒ビュンビュン。

動く将棋盤は、こちら。(flash版、edgeは不可)

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今週の問題



駒を動かすことが必要。いわゆる飛車角ダブルプレー。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

和歌山といえば、みかんと梅干と柿の葉すし

2020-10-23 00:00:00 | 市民A
和歌山の北部を紀北といい、南部を紀南という。実は、みかんは北側で梅干は南側。そしてもう一つ有名なのが「柿の葉すし」。

全国的に柿の葉寿司は「奈良・和歌山」「石川」「鳥取」の三ヶ所で食されているそうだが、元祖は「奈良・和歌山」のようだ。紀ノ川沿いの山奥に人々は住んでいるのだが、海産物を川沿いに運ぶのに、柿の葉を使ったようだ。道の駅で見つけて、通常のサバではなく、「ウナギ」であることから即パク。



思えば、今年初めてのウナギである。

そして、ミカン地区を一気に通り過ぎ、みなべ市へ。みなべは漢字だと南部と書く。ここの公立高校が南部高校。この高校で品種改良された梅の木でとれるのが南高梅というそうだ。



ホテルでの夜の食事だが、3月に行った能登半島のホテルとは大違いで寂しい。それでも陶板焼きのようなものが多い。「紀州梅真鯛と太刀魚のしゃぶしゃぶ鍋うどん付き」や「鶏の梅すき焼き」。なんでも梅干を投入してしまう。



「さんま焼き目寿司」も食べたのは初めて。量は少ない。

南紀(紀三井寺)

2020-10-22 00:00:48 | たび
先週末、和歌山へ旅行に行った。単独で行くよりも、旅費、宿泊費、ガイド料金のすべてをパックにした方が、還元額が多いので、某旅行社のパック旅行に参加。まあ、個人旅行の方がいいのだが、実質50%バックの魅力は大きい。

まず、南紀ということばと紀南という言葉がある。南紀とは紀伊の国の南ではなく、南にある紀伊の国という意味で、おおむね和歌山県を指し、紀南とは和歌山県の南を指すので南紀の紀南というと和歌山の南という意味になる。

前回、和歌山に行った時は、関空、和歌山城、友ヶ島といったところから大阪へ北上したが、今回は新大阪からバスで南下。和歌山市にある紀三井寺へ。今年は開創1250年。50年に一度の秘仏御本尊御開帳ということ。大行事である。50年に一度と言うことは、和尚様方も経験はないし、コロナによって前例主義も使えない。



まず、山の途中にある本堂まで一直線の石階段がある。三百段以上だ。しかも小雨。手すりをつかみたいが、感染リスクもあるのですぐにつかめるように手を手すりに近付けた状態で登る。心臓に優しくない。マスクなので酸素不足でもある。来月になるとエレベーターが動き出すそうで、ここで心臓が止まると、「一ヶ月後に来れば悲劇は起きなかったのに・・」と言われそうなので、肺の底にある最後の酸素を使う。



そして、境内に辿り着く。木造の本堂の奥に今回公開された「本尊・十一面観世音菩薩立像」と「千手観世音菩薩立像」が並ぶ。両仏像とも開山した時の為光上人の手彫だそうだ。



そして、新型の「大千手十一面観音像」総漆金箔張木造立像としては日本最大である。あまりに新しい。



珍しく84円切手が貼られた塚がある。『文塚』といって全国の郵便局で、差出人も郵送先も不明のため行き先不明になった手紙類を集めて供養するための塚だそうだ。



さらに幸福観音という仏像が立っている。「(第二次大戦で)敗戦後、中国大陸からの脱出行はドイツのユダヤ人虐殺にも比すべき惨状をきわめた。国家に軍に見捨てられた非戦闘員や婦女子幼童の多くは。飢餓死疫に倒れ・・・・荒野に屍をさらした。・・・」



偶然にも読んでいる途中の、「赤い月(なかにし礼著)」にも同様の惨状が書かれている。裏を返せば、日本国、日本軍が行ってきた蛮行に対する返礼ともいえるわけだったのだろう。こういう碑は全国にあるのだろうか。

なお、寺院の敷地内には、飲めば現世の罪がすべて消えるという魔法の湧き水があるのだが、きょう罪が消えても、明日の罪までは消えないため罪深い人にとっては効果は限定的だろう。

赤い月(上)(なかにし礼著 小説)

2020-10-21 00:00:52 | 書評
なかにし礼氏と言えば歌謡曲の作詞家が表看板だろう。初期作品は「石狩挽歌」「時には娼婦のように」、レコード大賞曲3曲「天使の誘惑」「今日でお別れ」「北酒場」をはじめ無数の詞を書いている。一方で、直木賞作家でもある。彼の執筆の源は、少年時代のある経験にあるのだろうが、それは敗戦直後に母親とともに満州から死に物狂いで日本に帰還した経験だ。



元々、父親が小樽から満州に渡り、荒野の中に酒造工場をつくって財をなしていたのだが、たまたま父親が商用で出張中に、ソ連軍が攻撃を開始、まもなく日本が降伏し、ソ連人、中国人が一斉に敵に回り、逃げ惑う日本人を襲う構図になる。さらに一家が住んでいたのは牡丹江という場所で、遠回りでも大都市であるハルピンに辿り着かなければならない。

もっとも著者は生き残ったから作詞家になったのだから、同邦人の遺体ゴロゴロを乗り越えて帰還したのは確かなのだが、次々に想像を絶することが起きるわけで、見栄も義理も財産もすべて捨てなければ前に進めない。上下巻の半分しか読んでないので著者の意図を誤解している可能性はあるが、「知恵」と「根性」と「幸運」がサバイバルに必要なのだろう。

実は、前半の部分を読んだあと、紀州方面のトラベルにGOTOしたのだが、引揚中に起きたことについて考えさせられることもあったが、下巻を読んでからにしよう。

今夜、ロマンス劇場で(2018年 映画)

2020-10-20 00:00:04 | 映画・演劇・Video
この映画、綾瀬はるかのための映画といって過言じゃない。もはや世界に一本しかない白黒フィルムの中の王女がスクリーンから抜け出してくる。そのフィルムを何回も見続けていた映画助監督(坂口健太郎)の前に現れた白黒仕様の姫は、きままにカラー版の世界を探索しはじめるのだが、予定調和的に姫と助監督の距離は近づいていくのだが、手をつなぐことすらできない秘密があったわけだ。


映画としては、巧妙な作りとなっていて、高齢になった助監督が病院で最後の時を刻んでいる時に、当時書いていた未完のシナリオを仕上げることになる。ストーリーはスクリーンから飛び出した姫のこと。

過去の別の映画で使われたシーンのオマージュが次々に登場するのだが、真似をするわけではなく、映画好きを試すようになっている。古い映画館が閉鎖されるシーンがあるのだが、高校の時にこっそり通っていたいくつかの映画館、半分くらいは残存している。個人的には、席がガラガラの方が好きなのだが。

ナニカアル(桐野夏生著 小説)

2020-10-19 00:00:00 | 書評
凄いところに題材を見出して書かれた小説。奇書といってもいい。虚実入り混じっているのだろうか。作家、林芙美子の評伝のようで、どこまでが真実なのか。

林芙美子が早世したあと、夫で画家の手塚緑敏が遺稿類を整理している時に発見したという手記について、林芙美子のめいで、緑樹に後妻だった女性が芙美子ゆかりの文学者に相談するところから、すべてが始まる。


漂泊の作家だった林芙美子が、毎日新聞の国際ジャーナリストである斉藤某と不倫を重ね、ついには妊娠、出産ということになり、生まれてきた子を養子ということにしたという内容なのだが、戦争中の南方(シンガポール、インドネシア)慰問中に、斉藤某と密会する場面は、斉藤のことを米軍スパイと疑っている憲兵たちとのやりとりが緊迫した場面を作っている。

単なる不倫小説ではなく、日本の開戦から敗戦までの内地、外地の状況が克明に記録されている。

桐野夏生はミステリーが基本分野なのだが、幅広い作風で、ぼちぼちと読んでいきたい作家である。

本作はフィクションなのか、実話なのか。容易に判別できない構造になっている。

新宿区にある林芙美子記念館は林芙美子の自宅を新宿区が買い取って記念館にしたもので、近いうちに訪問して本作の真偽について館員の方に確認してみようかと思う。

俳優緒形拳とその時代

2020-10-18 00:00:19 | 美術館・博物館・工芸品
横浜市歴史博物館で開催中(~12/6)の『俳優緒形拳とその時代』。なぜ、ここで今なのかは定かではないが、晩年は横浜の窓から海の見える家に住んでいたことと、今年10月が13回忌だったからだろうか。


本展だが、資料がたくさんある。パネルや記念品など。何しろ元々は新国劇(劇団名)で活躍を始め、事実上のメジャーデビューが1965年NHK大河の太閤記。主演の豊臣秀吉を演じた。今思っても、どうしてそういう運びになったのかわからない。さらに翌年の大河「源義経」で助演の弁慶を演じる。2年連続でNHKに出続けたわけだ。

特徴のある顔付きなので、秀吉や弁慶の顔もああいう四角形だったのかと勘違いした人も多いだろう。


映画やテレビドラマで活躍を続け、新国劇から足を洗った結果、劇団は衰退し解散ということになった。もっとも劇場で時代劇を見るという習慣自体が廃れたということかもしれない。

無数の映画の中には海外受賞作もあるが、興行的にはサッパリだったようだが「女衒 ZEGEN」という映画があった。「女衒」というのは女性の性的人身売買のブローカー。今や「人類の敵」ということだろう。ところが、米国で奴隷売買が禁止されたずっと後でも日本では女衒が職業として存在していて、特に日露戦争後、中国・東南アジアへの日本人の進出に合わせて海外遊郭が増加し、日本から女性が遊郭で働くことになり、元々、その気がなかった村岡という男が、業界に足を突っ込み大富豪になってしまうわけだ。

緒形拳は、その村岡を怪演する。日本が帝国主義に走るのに協力して女衒仕事で金を儲けるというのを肯定的に演じるので、「緒方ってそういう男だったのか」と思われたらしいが、戦前の映画じゃないのだから、そういう非人道的な男を演じることが逆説になっているというべきで、他の映画でも同じような構造が多い。

ところが緒方拳や三國連太郎といったパワフルな男優だが、現在の日本では欠員中というべきだろうか。パワフル女優が多すぎるような気もするので、変名の上、男装出演で倍稼いだらどうだろう。綾瀬春夫とか宮沢利一とか・・


なお、横浜市歴史博物館と神奈川県立博物館を間違える人が多いそうで、間違えないようにHPに注意が書かれている。まったく違う場所で、修正するには市営地下鉄で30分位かかる。間違える人は確信的に間違えているので、途方に暮れてからHPを見ることになるのだろう。さらに横浜開港資料館と開港記念会館というのも間違える人は多数(私もかつて間違えた)だが、こちらは徒歩5分の距離である。

駒落ちを嫌がる理由に新説

2020-10-17 00:00:20 | しょうぎ
王座戦は永瀬王座が防衛し、タイトル戦ドミノは4連続タイトル移動で終了した。次は竜王戦。両対局者はドミノ終了のことなど知らぬ顔で臨むのだろう。

さて、将棋を教えていると、小学生や幼稚園児と対局することになる。覚えたての子と指すときは、駒落ちで指したいが、駒を落とされる方は、メンツをつぶされるように思う子もいる。なので、とりあえず6枚落ちとか言わないで飛車角落ちにしましょうか、と言ってあげる。

どうしても駒落ちは嫌だという子には平手で指すが、くれぐれも負けないように指すので負けないのだが、ある時、「駒落ちは嫌」という子に理由を聞いたところ、思ってもいないことを考えていたようだ。

「(上手に)飛車角がないと、飛車角をとれないから嫌だ」ということだそうだ。平手で指してみたが、絶対に飛車角を取られないように気をつけた。


さて、10月3日出題作の解答。




角の威力で詰める。

動く将棋盤は、こちら。(flash版、edgeは不可)

gif版はこちら。



今週の問題。


駒を動かすことが必要。いわゆる飛車角バッテリーの簡易型かな。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。