五輪と中学校将棋部

2022-08-31 00:00:33 | 市民A
五輪と中学校将棋部との関係なんかないだろうと思うだろうが、最近、公立の中学校や小学校の将棋部で講師をしていて感じていることがある。

実際には公立学校の内部には深い闇がありそうな感じがあるのだが、そういうことは探らないことにしているので、客観的な事象の話をしてみる。

まず、こどもたちの将棋のことだが、藤井効果で大盛況かというと微妙な問題がある。藤井聡太四段が登場して29連勝したのは2017年のことで5年前のこと。現在の中学1年生にとっては小学2年生のころ。おそらく親がめざめてこどもに将棋を教えたのは3年生頃ではないだろうか。実感としては3年で始めるのは遅すぎるわけだ。強い子は男児では年長から小1、女児でも小1か小2が限界という感じだ。

つまり、今の中学生は「ブームに乗れなかった」世代で、小学生では大盛況という断絶を感じている。

そして五輪の話だが、東京五輪の後、中学校の部活で運動系の部活に生徒が大挙押し寄せてしまったわけだ。結果、文科系の部が壊滅してしまい、文科系で生き残ったのが「吹奏楽」と「百人一首」と「美術」、マンガの影響なのは明白だ。それとかろうじて「将棋部」。実際には吹奏楽も百人一首も美術も将棋も「体力が勝負」になるが、そこまで考える生徒は少ない。

科学部とか天体観測とか読書とか歴史研究とか英会話とかないのか確認したら、五輪のせいで運動部に生徒が流れ、頭脳を使う部は全部部員不足で潰れたそうだ。将棋部もつぶれそうだが、そうなると前述の小学校の大量の将棋キッズの行き先がなくなるわけだ。

ところが、運動系の部活と言っても特に変わったものはなく、野球、サッカー、テニスといった普通のスポーツなのだが、部員が増えてもグラウンドが広くなったり用具が増えたりするわけではなく、練習もたいしてできず、練習の順番が来るのを漫然と待っている子が多い。もちろん多くの学校の先生にとって、部活は懲役刑のようなものなので、部がつぶれようが弱体化しようが感傷的になる人はほぼいない。

といっても、運動系の部活に入っても試合どころか練習にも出られない子の救済策というか、半年に一回の転部可能期間がもうすぐやってくるので、紹介動画など作り始めている。
小学生の親には「将棋のチャンピオンになって、年収1億円を稼ぎ続けよう」という趣旨でいいのだが、中学生はリアルなので、もう少し合理的な理由が必要で、「部活で頭が良くなる唯一の部」という挑戦的なフレーズを考えている。

皆のあらばしり(乗代雄介著)

2022-08-29 00:00:47 | 書評
栃木県の男子高校生が、所属する歴史研究会の個人研究で皆川城を探索中に、「ある男」に出会う。正体不明なのだが、江戸時代の地方史に詳しく、近くにある旧家(竹沢屋敷)に強い興味を持っていた。



旧家は江戸時代末期には造り酒屋として潤っていたが、明治維新後、富を失っていた。一方、地方名士として、朱子学をはじめとする国学を行っていて、地方としては多めの書物を所有していて、いまでも若干は保存されている。

「ある男」は男子高校生をある意味マインドコントロールのように操り、彼の後輩の女子高生とともに、古文書の中から「皆のあらばしり」という一冊を探そうとしていた。その本の著者は小津久足という豪商が地方出張するたびに書いていた紀行文の一つだが、あるとしたら真書なのか偽書なのかということになる。

なお小津家は伊勢を本店とする豪商で江戸では紙問屋をしていた。中央区に小津記念館もあり(小説には書かれていないが貴重な資料も展示されている)、一族には映画監督の小津安二郎もいる。

「ある男」は時々会うときには次の調査課題を依頼し、高校生たちは江戸時代末期の天狗党の乱とその後の日本の混乱に当時の一家が関係していたことに辿り着く。

ミステリアスな筋立てで、二人の会話が続いていく。登場人物は、「男」と「男子高校生」が中心で、端役として「女子高校生」と幕末の先祖の「曾孫」がいて、一体、誰かが嘘をついているのかという疑惑も底流に流れている。

読後、各種書評を読むと、歴史の部分は専門的で難しいかもしれないが「心理ゲーム」として読めばいいということになっているそうだが、個人的には、歴史の部分には口を挟みたくなるようなことが多々あって、「心理ゲーム」の部分よりも歴史研究の方がワクワクしてくる。というのも「おおた家」の先祖も幕末頃に海産問屋から、地主(庄屋)に変わったものの、何か深い事件が関係しているという伝承(といって具体的なことは何代前から伝えていないしよくわからない)がある。

さらに旧家には国学に関する書物が大量にあったのだが、不信心な父がいつの間に処分してしまったので調査方法も見つからない。

そんなことで、世間の普通の人の読み方とはまるで違ってリアル感をもって読んだわけだ。

故障タイマー

2022-08-28 00:00:55 | 市民A
医療用X線撮影機のメンテナンス検査の際にあらかじめ故障するようにタイマーを付けて、修理費をだまし取るという事件が明るみになった。それもノーベル賞科学者も輩出した島津製作所の子会社だ。

新品でも保証期間終了後、すぐに故障するメーカーは有名で、実際に私も3回もそういうことになったのだが、都市伝説だろうと無理に信じていた。

今回の件は、まだ島津側で調査中ということだが5年前の2017年に熊本の病院で起きていた。9月にメンテナンスをした時に約1か月後に故障(撮影できなくなる)するようにタイマーを仕掛けたそうだ。そして11月に工事費200万円強が支払われている。

5年前の事件が、なぜ今頃明るみになったのかといえば、普通は内部告発だろうか。

1ヶ月後に電気を遮断するようなタイマーとはどういうものなのか。そして回収したのだろうが、個人犯罪なのだろうか。あるいは集団犯罪。仮に内部告発なら集団犯罪なのだろう。個人犯罪だったら発覚しないだろう。

もはや、先進国ではないな。(いや、事件は5年前なので、そのころから二流国になっていたのだろう)

振飛車相手が苦手でも

2022-08-27 00:00:48 | しょうぎ
順位戦A級2回戦、藤井五冠は菅井八段の先手中飛車にてこずり、いつもとは逆に終盤の妙手で敗れた。終盤はともかく、対中飛車(あるいは振飛車一般)に苦しめられているのではないだろうか。久保九段ともいつも混迷してしまっているように思える。

とはいえ、振飛車党はプロの世界ではかなりの少数派。少数派なのでタイトルマッチまで残ることは至難の業。つまり、振飛車に弱くてもタイトルには関係ないと割り切っているのかもしれない。もっとも、居飛車党がいまさら転向しても立ち向かえるわけでもないだろう。

ところでA級順位戦の勝敗表をながめていて気付いたのだが、「八段」が五人となっている。タイトルを重ねると自然に九段になるのだが、覇権交代時期なのだろう。もっと驚くのがB1組。八段は一人しかいない。九段と七段が6人ずつだ。


さて、8月13日出題作の解答。







9二の銀を馬に変えると手強いことになる。


今週の問題。



解ったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

乱(1985年 映画)

2022-08-26 00:00:20 | 映画・演劇・Video
黒澤明監督、仲代達矢主演の戦国時代劇というか、本作はシェークスピアの四大悲劇の中の『リア王』をかなり忠実に引き継いでいる。

戦国時代の一国の雄である一文字英虎が齢70となり、三人の息子の中で長男に家督を相続。三男はこれに異を唱え、追放される。「リア王」では兄弟ではなく三姉妹で男女逆転となっているが、本作では、一見して最も悪役は長男の妻ということになっている。長男が次男に謀殺されたことに気付き、次男の正妻の座に座り次男を脅迫して父親と三男を破綻させようとする。かなりの悪だ。北条政子のような感じだ。

ところが、彼女の思惑通り一文字家の父親も三人の兄弟もすべて討死にしたあと、彼女の父親は一文字秀虎に攻められ、討ち死にした上、城は一文字家に奪われていたことが明かされる。そして、主要登場人物のほとんどが、亡くなってしまったわけだ。

黒澤明がシェークスピアの完璧な真似をしようとしていたら名作とは言えないが、戦国時代の血なまぐさい時代の流れを組み込んだことで独自の世界が保たれている。

特筆すべきは合戦シーン。大戦闘シーンが3回はある。鉄砲や弓矢が絶え間なく飛び交い、城は焼け炎の中を役者が逃げ回る。死体役のすぐ横を米国から輸入した西部劇用の馬が走り回る。撮影中の事故で死者が出なかったのが不思議だ。

もっとも米国映画でカーチェイスが3回あったら、多すぎるような気がするが、観客が飽きないように日本各地の異なる地形がロケに使われたようだ。そのため製作費26億に対し、収益が16億と大赤字となった。

主演の仲代達矢は、30年以上後に『海辺のリア』というやるせない映画で主演を演じている。ことし90歳だというのに元気溌溂だが、彼の人生譜は、映画が10本は作れそうなドラマ性を秘めている。もっとも名優を演じることぐらい難しい役はないそうで適役は思いつかない。

藤田嗣治展に行く

2022-08-25 00:00:22 | 美術館・博物館・工芸品
近隣のデパート(東急たまぷらーざ)で開催中の藤田嗣治展に行った。展覧会というより販売会というのだろうか。最終日の終了1時間前。間際に行く人間というのは、何か訳アリのことが多いだろうか。慌てて購入するという場合があるかもしれない。あるいは強盗。店員の視線を背中に感じながら会場を一周。販売品ということでリトグラフが中心で数十万円というのが多い。リトグラフの場合、鉛筆で「45/100」と書かれていると、100枚製作した中の45枚目ということ。たくさんあれば、その分1枚が安くなるが、株のように2倍あったら半額ということではない。



実は背中から声をかけられても、買えない理由があるのだが、書くのは控えておく。



1960年代の作品が多いようだ。藤田嗣治の絵画は人物を線で隈取して線の中は白っぽい肌色(つまり白人)で塗るわけで、リトグラフになると、肌のてかりが抑えられて落ち着いた作品に見える。ただ、彼の描いた人物は、男女あるいは年齢にかかわらず癖のある顔つきに見える。ソファーに座って壁のフジタを見て心休むということにはならない。

本人が筆で描いた作品(肉筆とでもいうのか)も数点出展されていたが一千万円以上していて、これは買えない理由がはっきりしている。

朝日新聞、変調かな?

2022-08-24 00:00:39 | 市民A
旧統一教会の報道で、NHKが消極的なのはいつものことだが、さらに朝日新聞はNHKの陰に隠れるかのように評論家的になっているとの指摘があるようだが、もう一つ不思議なことがある。それは連載小説のこと。

きょうでまだ第六話なのだが新連載は『人よ花よ』。作家は今村翔吾氏。若手の歴史小説家である。

第五話までのところ、本作の主人公は幼名を「多聞丸」というのだが、成人して「楠木正行」となることが明らかにされている。つまり「楠木正成」の子である。親子ともに後醍醐天皇の忠臣として、鎌倉幕府の最後や南北朝時代の代表的武将として戦いに次ぐ戦いの中を生きて、戦場で討ち死にしている。戦前の大日本帝国では叙勲もされ、銅像も立ち、小学校の教科書にも登場。

今後の小説の展開は読めないが、まさか足利尊氏に通じていたスパイで、討ち死にしたのは替え玉だったというような展開にはならないはず。楠木親子については歴史的にも不明なことが多く、何を書いても真偽不明ということだろうが、フィクションを並べるのも限界はあるだろう。

つまり朝日新聞は天皇親政に向かって方向転換したのだろうか。

戦前、日本が戦争に直行した原因の一つが報道の偏向。特に朝日新聞が右転したことで新聞社総崩れとなって、大本営発表が唯一の真実となってしまった。

もっとも、今さら朝日が再び右転したところで単に現行の読者が新聞を取らなくなるか毎日に変えるかということだろう。

もしかすると、実際には今の与党にも野党にも我慢できなくなり、新聞社が天皇を担いで政権交代に加担しようというのかもしれない。

鉄砲百合と決めつけてはいけなかった

2022-08-23 00:00:53 | 市民A
駐車場に突然現れた植物が開花したらユリであった話を先日書いたのだが、日本のユリの種類の中で一目「鉄砲百合」と判定してしまったのだが、『高砂百合』ではないかという指摘があったので、今度は高砂百合かと思っていたら、どうもそう簡単ではない。

ということで、少し調べてみると意外なことが見えてきた。

問題を整理する前に、「鉄砲百合」の原産だが、日本といわれるが、もっと狭く考えれば「沖縄」だそうだ。そこから江戸時代に日本の南部に拡がっていった。

一方、「高砂百合」は台湾が原産。なおタカサゴとは沖縄の人が台湾の人を呼ぶ名称のようだ。

そして違いだが、高砂百合は成長が早く、種子から1年で花をつけるそうだ。

開花時期は鉄砲百合は6月で高砂百合は8月。

そして最大の違いは葉。高砂百合は細い。鉄砲百合も葉は広くないが高砂百合は細葉だ。

さらに違いは花弁の色。鉄砲百合は純白だが、高砂百合は花弁の外側には紫色のラインが見える。



それで、マイ駐車場の百合は、細い葉であり、つぼみの状態では紫のラインが見える。時期も8月だし、高砂百合でピタリ。ただ、開花の少し前に花弁の紫のラインは消えてしまう。咲いてしまえば純白になる。



それでは交雑種ではないかと思うのだが、実は「シンテッポウユリ」というものがあるそうだ。日本で鉄砲百合の白い花と高砂百合の生命力の強い長所をかけあわせて作られたそうだ。実際には開花時期がずれているため、生花店での需要に合わせたということらしい。墓地で使われるということで旧盆の8月にも対応できる。

ところが、人工的に作り出された二種の交配種(つまり、シンテッポウユリ)とは異なり、自然界の中での交配による雑種が圧倒的に増加しているそうだ。それも、鉄砲百合と高砂百合だけではなく新種の「シンテッポウユリ」も含めた3種混合型になっているそうだ。つまり特徴の発現も多様だそうだ。それと、居住している神奈川県には大量に自生しているそうだ。

ところで、調べいるうちにわかってきたが、世界最大の鉄砲百合の消費国は米国だそうだ。その需要に対応する生産は米国と日本だそうだ。

実は、鉄砲百合が海外に出たのは、江戸時代にシーボルトが持ち出したと言われる。ロンドン経由でバミューダに辿り着き、大量に球根が栽培された。ところが19世紀の終わりに島をウイルスが襲い、球根作りが壊滅。そこで登場したのが日本だそうだ。しかし、運命のいたずらで世界大戦によって日本から米国への輸出が途絶え、かわりに米国内での生産が増え、現在は両国が栽培している。

ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎著)

2022-08-22 00:00:51 | 書評
時節柄ふさわしくないというかふさわしいというか、首相暗殺小説だ。著者はケネディ暗殺事件を参考にしたと語っているが、要するに狙撃したオズワルドが、さらにジャック・ルビーという男に射殺され、真相が闇の中に消えた事件だ。捜査資料の公開は2039年とされたが、さらに一部は延ばされている。



本作では、一小市民である青柳雅春という青年が、犯人に仕立てられる。

犯行は手製の銃ではなく、ラジコンで操作されたヘリコプターに爆薬を積み込み、仙台市で行われたオープンカーでのパレード中にオープンカーの頭上で爆発させる。ドローンのようなものだ。

そして、あらかじめ脚本があったかのように彼が手筈よく容疑者として公開され、逃亡劇が始まる。

もっとも、完全封鎖された仙台市から逃走するのは難しい。真犯人(グループと思われる)の事前計画は成功しそうになるが、辛うじて決めきれない。ついに窮地を脱するわけだ。

その過程で、友人や見知らぬ市民など何人もが巻き添えで亡くなる。計画のピースになっていたソックリ男も殺されて海に浮かぶ。

小説はそれで終わるのだが、復讐劇を書いてほしい。10年の潜伏期間中に真犯人を探し出し、ダミーの容疑者を作り上げ、手を汚さずに復讐するような筋立てがいい。

真犯人ではないことを訴えるための、犯行のようにみせかけるものの、実は真犯人かも。

ところで、先日の暗殺の容疑者だが、鑑定留置中ということで4か月間沈黙を強いられている。その間に、世間の風はどこに向かって吹くのだろうか。

落款のことなど

2022-08-21 00:00:30 | 美術館・博物館・工芸品
藤井聡太五冠の扇子が二本、手に入ったが既に人手に渡った。というか、渡した。残っているのは画像だけ。



『専心』と『飛翔』。まず、右から左へ読むことになっている。戦争で大敗北してから左から右に読むように変わった。進駐軍の思惑だったのだろうが、なぜ逆にしたのか、事情はよくわからない。そもそも、日本語の本は、上から下に読んだ後、左側の行に移る。縦書きの場合は右から左で、横書きの場合は左から右。勝共連合と関係があるのだろうか。

似たような話でも、救急車の正面には『救急』という文字が左右逆転で書かれているが、それは、似て非なる現象だ。

次に、文字の巧拙だが、『専心』が50点で、『飛翔』は70点というところか。おそらくプロデビューしたころから練習を重ねているように思える。もう少し上手くなるのだろう。歴代の名人でも、上手い人と下手な人の両極端に分かれる。運筆に当たって脳の使い方が各自違うのだろう。

ところで、右側と左側に朱印が押されている。色紙に準じているのだろう。その解説。



まず、右側。引首印といって、好きな言葉を入れる。勝負師だからといって「無敵」とか威張って書いたらいけない。本扇子では『無極』と書かれている。意味は二種類あって、果てしなく遠いという意味と、宇宙には果てがないという意味。AIを打ち負かすような人だから解読は不能。

次に左側。いきなり名前だが、今までの棋士は、タイトルを獲得したらそのタイトル名を名前の上に書く。「竜王 藤井聡太」とか。おそらく既に五つのタイトルを持っていて書ききれないのとさらに増えた場合のこともあり名前だけにしたのだろう。

そして名前の下にあるのが氏名印。実印のような書体だ。そもそも実印が丸くなければならないというルールがあるわけでもないが、本物の実印ではないだろう。そもそも持っているのだろうか。

そして、右側の引首印だが白地に文字が赤の『陽刻』となっているが左側の氏名印は赤地に白文字の『陰刻』となっている。



さらに氏名印の下に雅号印と言われる印を入れる人もいる。俳句の先生や日本画の先生などだ。将棋棋士の場合、いままでに聞いたことはないが、いたかもしれない。よくニックネームを付けられることが多く、「魔王」とか「稲妻」とか「薪割」とか品のないのが多い。藤井五冠の場合、まだ定着していないが「神」あるいは「鬼」と呼ばれているが雅号にはまったくふさわしくないだろう。そもそも雅号は自分で名乗るものだ。

そして、風流を極めるなら、遊印というのがあって、さらに自分好みの印を四つ目として押せばいいらしい。出身地とか好きな食べ物とか愛犬の名前とかから一文字入れるとか。

まあ、自分で扇子を作るつもりはまったくないが、ホールインワンでも出したら・・記念扇子とか。『穴直』とか。防空壕にミサイルが直撃したような感じだ。

「飛翔」(同業者は困惑か)

2022-08-20 00:00:25 | しょうぎ
藤井聡太五冠の揮毫の扇子だが、先週に続き今週は「飛翔」。文字が大きい。



同業の棋士は「あんなに強いのにさらに飛翔しようというのか。困った・・・」ということかもしれない。ただ、彼の活躍によって新たなタイトル戦やゲスト出演などの余禄が将棋連盟にもたらされているのだから、ビジネスが拡大している間には不満は出ないのだろう。何しろ飛翔という言葉は、飛ぶという意味の漢字が二文字重なっているのだから、ただごとではないだろう。

この飛翔という扇子、数本かそろえたのだが、文字通りあちこちの愛棋家の元に飛翔していってしまった。

落款については稿を改めることにする。


さて、8月6日出題作の解答。







初手は角を捨てているようで、実際には飛車を捨てる手。3手目は飛車の利き筋を狭めるような逆理論。さらに玉が遠ざかる金捨てという具合に進む。


今週の問題。




解ったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

白鶴亮翅(多和田葉子著 小説)

2022-08-19 00:00:06 | 書評
朝日新聞の連載小説。連載小説というのは始まるときには、どういう種類の小説なのかよくわからない。作家の得意分野だろうとは思うが、いつも同じような小説を書くわけでもないだろう。犯罪小説とか不倫小説とか内部告発、ドキュメンタリー。夏目漱石はそういう点で、愉快系もあれば心理小説も書いている。中島敦のような堅物でも失楽園(渡辺淳一氏)のような不倫活劇を書いたりしている。

実は、久しぶりに連載小説を読んだ。旅行とか行くときに新聞の宅配を止めても、WEB版で読めるので気が軽いわけだ。

ただ、読むのが辛いタイプの作品だった。場所がドイツで、東欧の知人たちの話を読むというのが、なんとも難しい。さらに連載中にウクライナ戦争は地獄化し、小説のメーンテーマが「ゲルマン×スラブの戦い」と読めなくもない展開になっていく。

小説のタイトルの『白鶴亮翅』というのは、太極拳の一つの型で、動きが鶴のようで背後からの敵を跳ね飛ばすように見えるらしい。

著者の分身のようなドイツ在住の女性が主人公なのだが、複雑な民族関係に巻き込まれていき、結局は太極拳の先生と親しくなっていくようなあらすじではあるが、主題を読み間違えているのかもしれない。

ナミヤ雑貨店の奇蹟(2017年 映画)

2022-08-18 00:00:30 | 映画・演劇・Video
本映画は2012年に東野圭吾原作の同名小説の映画化。

ほぼ、原作通りである。いわゆるタイムワープ物で、ナミヤ雑貨店の表側と裏側で32年の時間差がある。現代(2017年)に生きる三人の不良青年がアジトとしようと侵入した放置されたままのナミヤ雑貨店は西田敏行演じる老人が雑貨店と併せて行っていた人生相談所でもある。

悩み事を書いてシャッターのすき間から中に入れると、翌朝には、表の牛乳箱に人生訓が入っているという仕組みで多くの人の人生を左右する重大案件の相談がやってくる。

たまたま、相談があった時に出くわしたのが、三人の少年。未来人が過去の人に助言するのは、一見簡単だが不幸な結末を招くと自責の念に襲われる。

そして、本作の中では、さまざまな人の相談が次々に投じられ、一見、それらは全く無関係の相談のように思えるのだが、ストーリーが進みだすと、すべてが関連していることが見えてくる。多くの人たちの人生の中に入りこんでしまう過去の雑貨店主と現代の青年たち。


というような方向で映画としては西田敏行が主役のように見えてしまうが、それは彼がいかにも主役のように演じるからで、途中で亡くなってしまい、32年後の三十三回忌の時に1日だけ復活する。映画とはまったく関係ないが年配になって役者を続けると、多くは亡くなるシーンを撮られることになる。


単に映画の中のこととはいえ、人生では全くの偶然というのがよくある。友人と駅で待ち合わせているとたまたま中学の時の同級生の異性とでくわして、面倒なので3人でお茶を飲んだりして、しばらくしてその二人が交際に発展し、結婚してこどもが生まれたりすると、あの時の偶然がなければ・・・というようなこともある。

何気なく言ったアドバイスをいつまでも覚えている人もいるし、人間界は色々だ。


ところで、映画でのタイムワープとかタイムマシンというのは苦手だ。なぜかリアルになり切れない。時間の逆走は宇宙のブラックホールの中では起こり得る現象らしいが、三次元+時間の一方通行という三次元半の世界にいる自分には理解しにくい。

もっとも地球の歴史の逆走であれば、もうすぐ北国の王様がスイッチを入れると人間だけではなく多くの高等生物が死に絶えることになり、地球上にはモグラとゴキブリだけが生き残るというリアリズムが近づいているらしい。

日傘、新調

2022-08-17 00:00:10 | 市民A
今年の暑さは格別で、しばらく前から日傘を使っていた。ゴルフ用の日傘の中で小ぶりなサイズ(70センチサイズ)。毎月何回か、街中を歩く機会があり、外が銀色で中が黒の傘でかなり効果はあるのだが、少し古びてきて、内側の黒い布が何ヶ所かで透けてきていた。



さらに、元々がゴルフ用なので、持ち手がストレートになっていて鍵付きの傘立てでは役に立たない。しかも畳めないので、長いまま室内でも持って歩くことになる。傘立てに入れないのは盗まれないためだが、そうなると、長い傘を手放さないで持ち歩くということは、その建物に泥棒がいると疑っていることになり、少し気まずい。

ということで、新調しようと探すも、どこも売り切れで、生産が間に合わないようで、発注後1ヶ月で、折りたたみ日傘が到着。Montbell製。



傘の直径は同じぐらいだが、軸が短い。折り畳み傘の特徴だ。とはいえ、積極的に日傘を使おうと思っているわけではない。できれば外出したくない。水分とって体力の消耗を防ぎ続けているのだが、そういうときに限って出歩くことが多くなる。

広島沖で客船火災

2022-08-16 00:00:27 | 市民A
8月15日朝7時頃に広島を出航した19トンの客船『黒潮Ⅶ』が出航後5分ほどで停電し、発電機から出火と考えられ、延焼する中、海上保安部に救助を要請し。乗員乗客16名は海上に脱出し、近くにいたプレジャーボートに救助された。客船は消火しきれずに沈没した。

当日は釣り船として使われる予定だったそうで、多くの客は普段から落水時の対策は理解していたと思われる。

太平洋の海水温度は30度にもなっているそうで、瀬戸内海でも25度くらいはあったのだろう。知床の遊覧船とはまったく異なる。いずれ報道されるかもしれないが、船名が『黒潮』となっていて、瀬戸内海ではなく外洋仕様の中古だったのかもしれない。そうであれば「KAZUⅠ」とは逆パターン。老齢船だったのかもそれない。

19トンなので、救命いかだ(ライフラクト)はなかったのだろう。救命胴衣(ライフジャケット)は定員の24名分揃っていたということ。


このブログの愛読者の方は、ライフジャケットなど使ったことがないという人がほとんどだろうが、以前、海運会社にいたこともあるので、仮に使うことになった場合の注意点を書いておくので、その節には思い出していただければと思う。

まず、常備されているライフジャケットは、ほぼ固定式のもの。簡単にいうと発砲スチロールの板が胸の前と後ろに付いている。前の方が厚いので、海中では胸が浮き上がって鼻や口が上を向いて気道確保しやすいような体勢になる。背泳ぎと立ち泳ぎの中間のような位置になる。

最初の注意だが、しっかりと体に固定してから海に飛び込むのだが、基本は足から入る。ライフジャケットの多くは被ってから胸の前で紐をしめるので、飛び込んだ時にジャケットが水面に浮かんだまま体だけが抜けて海底に落ちてしまうと大変なことになる。腕で何かを抱えるように体に密着することでライフジャケットが脱げることを防ぐ。

さらに、海面に落ちるとその勢いで、一旦は海中に沈んで、その後、海面に浮上する。その時間は長ければ10~20秒なので、水を飲まないように息を止めておくことが重要。30秒ぐらい息を止めることは可能だろう。

さらに、本質的にはライフジャケットは浮かんで助けを待つものだが、場合によっては少しは泳がなければならないこともある。今回も船火事なので、船からなるべく離れなければならない。またエンジントラブルの場合は燃料が海面に浮かんでしまうかもしれない。着火したらよく見る映画のようになる。さらに船が沈む場合横に倒れたり縦に立ち上がったり、沈没の水流に飲まれたり、スクリューが浮き上がって回っているかもしれない。

前述したように、斜め上を向いた角度で海面に浮いているので、泳ぐのも容易ではない。仰向け平泳ぎのように足を裏返しにしたカエルのように使って危険から逃げるのが得策だ。

また、浮力を多くするにはもしあればペットボトルの空き瓶があればシャツの中にいれておけば、人間の浮力を増大させられる。

簡単に言うとライフジャケットを抱きしめて20秒以上息をとめておき、着水後は危険地帯から逃げるということになる。


なお、知床遊覧船の事故のあと、膨張式救命いかだ(ライフラクト)が切り札になるような説が多かったが、折りたたまれている気室の素材は、ゴムかナイロン。膨張させるのは液化炭酸ガスということになる。岩場で広げると(あるいはボートが岩場に流れ着くと)、パンクする率が上がる。